『白炎』は須田優子(1925 - 1957)の没後に編まれた唯一の句集で、本書はその復刻版(限定400部)。序:荻原水郷子、跋:吉田未灰、あとがき:須田寛伯、解説:水野真由美、復刻版あとがき:林桂。
作者は「山彦」(復刊後「やまびこ」、吉田未灰主宰)、「暖流」(瀧春一)に参加。享年28歳。
医師にさらす胸は恋など忘れいし
不治を宣告されて
奇蹟祈れば遠くまたたく冬銀河
自衛兵どれも童顔汗まみれ
木犀や人に会わない道選ぶ
冬蜂が陽に濡れ渡る窓の枠
雪踏む足音母に似いしが遠ざかる
月の木蓮白い炎(ほ)となる逢わざれば
平凡に生くべし朝顔の蔓自在
木犀や胸の一隅呼吸(いき)とどかず
ガソリンの香と来歳晩の運搬夫
核雨梅雨紙のカブトの子供らに
日々心臓肥大し、脊骨曲がる
ネルを着て曲がりゆく身を愛ほしむ
夜霧の試歩我よりちびし母従え
月観にゆく細き軀(み)通るだけ開けて
全身腫気
秋白き陽に腫(むく)みたる脛確かむ
※本書は版元より寄贈を受けました。記して感謝します。
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