山田健太『二百三十四句』は、著者情報は載っていない。
奥付から水戸の人であること、「回想」の前書のついた《三島死す高二物理の授業中》という句から、1970年に高校二年であったらしいことがわかる程度。
句集には「東日本大震災」「香苑逝く」「右肘脱臼・骨折」の連作が含まれている。
ライオンに檻と深空と春日傘
食卓に水中花あり妻は旅
東日本大震災 八句より
配られし毛布に折目しかとあり
ワイシャツの折目に春の来てゐたり
蠅叩蠅殺すたび手になじむ
虫籠が駅の階段上りゆく
初氷赤味を帯びて松の灰
其角とは硬き名前よ桜鯛
兜太より葉書の届く夕薄暑
産土の西瓜の尻に手をまはす
官兵衛の仕上げに菊師杖を添ふ
手招きは老いの前触れ梅の花
野は曲り街は砕けてつばめ来る
塗畦や子の手の跡を塗り固め
もてなしは箸置きにあり夏座敷
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
コメント
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