『ラストシーン』は嵯峨根鈴子(1949 - )の第3句集(第1句集『コンと鳴く』、第2句集『ファウルボール』は「らんの会」からの刊行だったため、市販される句集はこれが初めて)。
跋文:関悦史、もてきまり。
嵯峨根鈴子は「火星」入退会を経て、同人誌「らん」同人。
全員のたどりつきたる春の罠
姿見へ真つ直ぐ入る春の猫
龍天に上る背中のファスナーを
梅雨入まで間のあるカーブミラーの歪み
身のうちの繭が欲しがる心太
まくはうり名古屋に充電いたしたる
てぶくろのわめく形やまた嵌める
サーカスの地べたのつづき葱を焼く
つつしんで狐が語るわたしの言語
水母浮くとちゆう騒がし金環蝕
みな帰りたる噴水に話がある
ふしあはせの馬刀貝だけを突くらしい
玉葱のふらついてゐるセンターライン
脱皮せぬと決めたる蛇の自爆かな
蜘蛛はクモの仕事に励むラストシーン
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