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2014年3月
ジャプラン
『アダムとイヴの羽音』は加藤知子（1955 - ）の第1句集。
著者によるあとがき以外、序文、跋文等はなし。
加藤知子は「海程」「拓」会員。実母の介護中から俳句を始めたという。
曼珠沙華紛れて母のひとり居る
父の日や腹出す台湾引き揚げ者
死にゆくものの片目に目ヤニ新樹光
ぬらぬらと立冬猫は朝帰り
廃屋の芯に茗荷の花明り
海峡の白菜割って十二階
天も地もおぼろにつるみいる上海
手の甲の透けきて滝の落差かな
森浅く伐られアップルパイの匂い
蛇穴を出でて片足ハイヒール
被爆野はふつうに薄暑赤子泣く
壺がみな人の顔する新樹光
切り結ぶ音を沈める水中花
捨て猫に名月の餌やるひとりふたり
クリスタルな秋霖時計店の慇懃
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
東日本大震災後に「プロジェクト傳」によるいわき市復興支援ツアーが組まれ、そこの俳人たちからの呼びかけで、私も四ッ谷龍、鴇田智哉、宮本佳世乃、相子智恵さんらとともに何回か参加したのだが、この度、そちらで全国俳句大会が催されることになった。当日句の選者には四ッ谷さんも入っている。
第1回は2016年7月18日（月・祝）らしい。詳細はこちら。
2015年12月
ジャプラン
『水の蝶』は高岡修（1948 - ）の第6句集。
2句組97頁。
アンモナイト死は同心にしてけぶる
爆心に来てひるがおが顔を脱ぐ
蝶わたりゆきあおあおと野を孵す
犬と来て虚無に噛みつく秋の影
きりきりと天牛が噛む空の髪
水墜ちて瀧燦然と立ちあがる
天涯に空蝉の眼の吹き溜る
天地(あめつち)を宥(ゆる)さず廻る独楽ひとつ
寝返ればシーツに絡む冬銀河
蔦のからむ夕空も切り花鋏
波がしら幾億の蝶翔びたたせ
その樹液熱きか内部被曝の木
失踪もまたみずみずし雪解音
タチアオイ雲の火刑を見て飽かず
筆立てに一絶壁を挿して秋
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
2015年12月
私家版
『大晩課』は武田肇の第8句集。
3句組140頁。
人はねむり家はめざめて夜半のはる
六月の少年は足から素描され
蟻のくびれに重力生ず、曲り角
焦げ臭し千年紀二つ蟻二匹
騎士同士なぜ寄添はぬ蝉しぐれ
はつしほや月は内燃機關である
オルガンコラール蝗に風を送られて
在る物と無い物等し木の實落つ
星飛んで家の眞中に道一つ
首のない人の數だけ月のぼる
二時半を二分過ぎたる蕎麥の花
月までの距離を見てゐる月見哉
家中が月の石なり書に淫す
シャンデリア歸るところは冬の月
食人も菜食もゐて冬ぬくし
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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