『アダムとイヴの羽音』は加藤知子(1955 - )の第1句集。
著者によるあとがき以外、序文、跋文等はなし。
加藤知子は「海程」「拓」会員。実母の介護中から俳句を始めたという。
曼珠沙華紛れて母のひとり居る
父の日や腹出す台湾引き揚げ者
死にゆくものの片目に目ヤニ新樹光
ぬらぬらと立冬猫は朝帰り
廃屋の芯に茗荷の花明り
海峡の白菜割って十二階
天も地もおぼろにつるみいる上海
手の甲の透けきて滝の落差かな
森浅く伐られアップルパイの匂い
蛇穴を出でて片足ハイヒール
被爆野はふつうに薄暑赤子泣く
壺がみな人の顔する新樹光
切り結ぶ音を沈める水中花
捨て猫に名月の餌やるひとりふたり
クリスタルな秋霖時計店の慇懃
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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