ガルシア=マルケスが4月19日に亡くなったので何か読もうと図書館に行ったが、インタビューの『グアバの香り』以外は、読んだことのあるものが2,3冊あるだけだった。
代表作とされることの多い『百年の孤独』よりも『族長の秋』の方が上ではないかとかねがね思っていたのだが、このインタビューを読むと作者自身の評価もそうなっていた。
水上勉『若狭幻想』福武文庫・1986年
《「私の生まれた福井県本郷村字岡田部落の家にまつわる思い出を折々の風向山河、行事人物にかさねて、勝手に書きつらねてみたものである」(はしがき)。巨木のほら穴にひそむ動物たちの気味悪さ、釈迦浜の海底をくぐると善光寺に通ずるという古老の話など、彫琢された文章で描く幻想あふれる短篇集。》
収録作品=おんどろどん/じんごろ石/むささび/がま蛙/風呂もらいの夜/女郎蜘蛛/うしろ山/魚売りのおとめさん/しゃかしゃか/阿弥陀の前/雁の話/爺取ろ婆取ろ/釈迦浜/桑子/まいまいこんこ
後藤明生『しんとく問答』講談社・1995年
《大阪の日常を幻想空間に異化する最新連作。》(「BOOK」データベースより)
収録作品=マーラーの夜/「芋粥」問答/十七枚の写真/大坂城ワッソ/四天王寺ワッソ/俊徳道/贋俊徳道名所図絵/しんとく問答
後藤明生と『しんとく問答』 - 大阪府立図書館
半村良『うわさ帖』集英社文庫・1986年
《“見て見ぬふり”“社長の兄貴”“マンションの蚊”……何かワケありのこの見出しだけで、どんなことが書いてあるのか読みたくなる辛口の面白エッセイ集。酔いも甘いもかみわけた著者の周辺と日常を、ちょっとしたエピソードを題材に味つけし、人生の機微を写しとった大人の読み物。 解説・青木雨彦》
コンスタンチン・ヴァーギノフ『山羊の歌』河出書房新社・2014年
《1920年代初頭のペトログラード。嘗ての帝都ペテルブルクはもうない。主人公テプチョールキンと彼を取り巻く友人たちはその見る影も無くなった町で最後の人文主義者=ルネサンス人という孤島となって、自らの居場所を探し続けた…幻のロシアの異才、90年の時をへて本邦初登場。破滅へ急ぐ詩人の彷徨をペテルブルクの妖しい煌きとともに描く、錯乱のロマネスク、驚異の傑作。》(「BOOK」データベースより)
水上瀧太郎『大阪の宿』講談社文芸文庫・2003年
《保険会社に勤務する著者は実業家として活躍する一方 三田派の中心メンバーとして文筆活動を続けた。大阪勤務時代に材を取った本書は、江戸っ子会社員を主人公に下宿先の旅館酔月の女将、下働きの女たち、新聞記者、芸者お葉……等々の人間模様を織り込み潔癖性で正義感の強い東京山の手育ちの主人公が見聞する大阪の世相、風俗、気質等を巧みに描いた傑作長篇小説。》
富岡多恵子『逆髪』講談社文芸文庫・2008年
《かつて姉妹漫才で鳴らした鈴子・鈴江。今はカンペキ主婦に身をやつす姉と、独身の物書きとして芸界の周辺に生きる妹。正反対のようで同じ血縁という強烈な磁力に搦めとられて彷徨う2人の日常の背後に、狂女逆髪と盲法師の姉弟が織りなす謡曲「蝉丸」の悽愴な光景を幻視、富岡節ともいうべき強靭な語りの文体で活写。『冥途の家族』『芻狗』等、家族や性をテーマに書き続けてきた著者の到達点とされる傑作。》
国枝史郎『犯罪列車』未知谷・2013年
《『東海の謎』に続く長篇探偵小説第一弾にして最終作。一度として作品年譜にも載らず、埋もれていた“幻の作品”。熱海行きの「花嫁列車」から始まるトラベル・ミステリー。現存する銀座資生堂パーラー、上海ヤマトホテルなど様々な名所もさりげなく織り込まれ、鉄道、自動車、船、飛行機など当時最新の交通機関や、昭和初期東京の都市文化へのこだわりも…。時刻表や電話を使った秀逸なトリック、麻酔剤、犯人の変装、警視庁に叩きつけられる挑戦状、少年たちの活躍―。国枝の長篇作品には珍しく、破綻のない、最後まで先の読めない正統派都市型探偵小説の充分楽しめる傑作。》(「BOOK」データベースより)
金関恕・森岡秀人・森下章司・山尾幸久・吉井秀夫『古墳のはじまりを考える』學生社・2005年
《古墳はいつ・なぜ造られたか?邪馬台国・卑弥呼と古墳、古墳の出現と三角縁神獣鏡、朝鮮半島の古墳と日本の古墳、年代測定と編年、西アジア・エジプトの墳墓と日本の古墳など古墳の出現から古代の日本を解く。》(「BOOK」データベースより)
斎藤栄『黒部ルート殺人旅行』徳間文庫・1981年
《黒部アルペンルートのスキー行で娘・真貴子の目前で突然姿を消した大日本住宅の開発技術部長・西崎良二はやがて立山連峰の新雪の下で爆死体として発見された。
真貴子の依頼をうけた香山検事たちの論理的かつ執拗な究明捜査は、テジタル時計の巧妙なアリバイや〈東海2号〉車中のスナップ写真の謎ときに成功する。黒部ルートは西崎の墓場であると同時に、青春の秘密を埋めた場所でもあったのだ!》
結城昌治『泥棒 ショート・ショート全集』集英社文庫・1980年
《酒もタバコものまず、ケチに徹して貯め込んだ伯父夫婦の現金を狙う「綿密な計画」や、加害者が150万円サギにあう「被害者」など、笑いの中に人生の孤独や悲哀を描く傑作ショート・ショート。古典落語に精通した著者が20年間書きためた39編を収録。 解説・虫明亜呂無》
収録作品=極楽往生/おまわりなんか知るもんかい/公園にて/かなしい二人/孤独な老人/発見/彼の中の他人/逆行性治療/別の男/藁を食べたい/親のかたき/ひげが生えた赤ん坊/殺人の方法/涙でつづるパパへの手紙/孤島にて/奇病/絶対反対/秩父銘仙/遺産/夜ふけの会話/泥棒(綿密な計画/初夢の百分の一/余罪/仲間/専門家/秋深き/被害者/爆発)/再会/ふたりの世界をバラ色に/苦情処理/厄介な病気/敬礼/彼女のひそかな幸福/ある試み/男と女/結婚の時効
吉行淳之介『裸の匂い』集英社文庫・1977年
《銀座の一流クラブに勤める村井ユミは、内縁の夫と母親と共同で、稀有の肉体を武器に男から金を絞りとる計画を進め、流行作家の川森、電気商の金子らを巧妙な罠に嵌めたが、思わぬことから計画は狂いだした。色と欲とが絡んだ脳し合いを軽妙なタッチで描く異色作。
解説・小川 徹》
柴田練三郎『曲者時代』集英社文庫・1979年
《八代将軍吉宗が逝って後、政治は弛緩し物価は騰貴し、狡猾な大商人は肥え、庶民は飢えた。桃園天皇の異母兄・禁門影人は“世直し”を図るべく、平賀源内、上田秋成、公儀庭番・鬼堂天馬ら曲者たちを同志に集めた。そして将軍家側衆・田沼意次を援助し、幕府の権勢をその手中に握らせるが……。時代小説に不動の位置を占める著者が、多彩な人物を配し雄大な構想で描く大ロマン。解説・尾崎秀樹》
青澤唯夫『名指揮者との対話』春秋社・2004年(ミュージック・ペンクラブ賞)
《20世紀に活躍した巨匠やいまも活躍する指揮者たちがどんなことを考えていたか。天才肌、職人気質、学究派…。多士済々のコンダクターシップ。指揮芸術の名手たちが胸の内を明かし、彼らの理念や生き方、思想を伝える。》(「MARC」データベースより)
周達生『昭和なつかし博物学―「そういえばあったね!」を探検する』平凡社新書・2005年
《ついこの間の昭和の時代。でも日本人と動植物の日常関係は、いまよりずっと濃密だった。ウグイスの糞は美顔術に利用され、貝の卵嚢は遊び道具の「ウミホオズキ」になり、縁日その他でも、実にさまざまなものがみられたのだ。「そういえばあったね!」はいまどこに?懐かしさと発見にみちたご近所中心探検行。》(「BOOK」データベースより)
海野弘『久生十蘭―『魔都』『十字街』解読』右文書院・2008年
《モダニズム、モダン都市の作家である久生十蘭の作品の中で、伝奇と歴史が交錯する想像力への予感を秘める都市小説「魔都」「十字街」をたどりつつ、東京・パリの「1930年代」を旅する。》(「MARC」データベースより)
小松和彦『「伝説」はなぜ生まれたか』 角川学芸出版・2013年
《能登半島・旧柳田村「猿鬼伝説」、高知県・旧物部村「いざなぎ流の祭文」、戸隠・箱根「九頭龍伝説」。神話学、文化人類学を背景に日本の伝説・説話を読みなおし、日本文化の核心を浮き彫りにする。》(「BOOK」データベースより)
深沢七郎『たったそれだけの人生』集英社・1978年
対談者=中上健次・武田百合子・丹羽文雄・松永伍一・若月俊一・石原慎太郎
古井由吉『木犀の日―古井由吉自選短篇集』講談社文芸文庫・1998年
《〈都会とは恐ろしいところだ〉。5年間地方で暮らし、都会に戻った私は毎朝のラッシュに呆然とする。奇妙に保たれた〈秩序〉、神秘を鎮めた〈個と群れ〉の対比、生の深層を描出する「先導獣の話」のほか、表題作「木犀の日」、「椋鳥」「陽気な夜まわり」「夜はいま」「眉雨」「秋の日」「風邪の日」「髭の子」「背中ばかりが暮れ残る」の10篇。内向の世代の旗頭・古井由吉の傑作自選短篇集。》
マヌエル・プイグ『ブエノスアイレス事件』白水Uブックス・1984年
《サディスティックなかたちでしか女性と交渉が持てない美術評論家と、マゾ的な状況のなかでしかオルガスムスを得られない女流彫刻家との不毛の愛の物語。快調なストーリーの展開とともに、映画のショット、内的告白等々、多様なテキストで成り立っている作品構成にも興味深いものがある。映画監督ウォン・カーウァイが『ブエノスアイレス』を撮るきっかけを得た本としても興味深い。》
安岡章太郎『なまけものの思想』角川文庫・1973年
《自ら“劣等生”を名乗り“なまけもの”を自認する著者が、ユニークな視点とエスプリあふれる軽妙な筆で、現代の世相を鮮かに截断し批評する。文学仲間との交友、少年時代や戦中戦後の回想、東京の町の印象、女性・恋愛・結婚についての所感……。固定観念にとらわれぬ柔軟な精神と、作家の感性とユーモアがうんだ絶好のエッセイ集。》
安岡章太郎『思想オンチの思想』角川文庫・1974年
《“思想”とは何だろう? いわゆる左翼思想やイデオロギーだけが、思想なのだろうか。これは、作家のシャープな眼とユニークな発想によって書かれた、日本人による日本人論でもある。他に、著者の滞米生活での見聞や、文学に関する感想などが語られる。エッセイストとしても定評ある著者が、その面目を存分に示した好エッセイ集。》
安岡章太郎『やせがまんの思想』角川文庫・1973年
《機械化され、電化され、管理された社会,そこに生きているわれわれ現代人もまた、“奴隷”の境遇に身を置かれているといえないだろうか…。ベストセラー『なまけものの思想』『へそまがの思想』の著者が、その定評ある筆さばきに、ユーモアと風刺を織りこみながら、読者の胸を笑いとおかしさでくすぐる軽妙なエッセイ集。》
星新一『ごたごた気流』講談社文庫・1980年
《星新一の一見優しそうなまなざしの中には、はっとするほど鋭く、残酷な視線が隠されている。氏の強烈な刺すような視線を浴びると、今まで平凡なものに見えていた現実の中にふしぎな超現実が、平穏な生の裏に不吉な黒い死が、楽しい平和の背後に恐しい破壊と殺人がまるで二重像のように浮かび上がってくる。―――――――解説より》
収録作品=なんでもない/見物の人/すなおな性格/命の恩人/重なった情景/追跡/条件/追究する男/まわれ右/品種改良/門のある家/ごたごた気流
角川文庫版
西村京太郎『パリ発殺人列車』カッパ・ノベルス・1990年
《フランス・グルノーブルでの世界警察官会議に、十津川警部と亀井刑事が招待され、若手の白井刑事も参加。各国の警官と親善を果たした帰途、パリ行きTGV(フランス新幹線)の一等車内で殺人事件が……。
会議を後援した富豪、大越専一郎(日仏親善協会会長)の秘書松野ユキが、アメリカの刑事の盗まれた拳銃で射殺されたのだ。真の標的は、何者かに脅迫されていた大越だった!? 硝煙反応は誰からも発見されなかったが、日本人カップル宇垣亘と島崎やよいに嫌疑が……。さらに事件を追う白井刑事もセーヌ河畔で刺殺された!
パリ―東京を結ぶ初の国際版トラベル・ミステリー!》
《去年('89年)の十月、招待されて、フランスのグルノーブルで聞かれたミステリー・フェスティバルに出席した。特別列車にも乗ったし、TGVにも乗った。面白かったのは、アメリカの作家はフランクで誰彼となく話しかけ、イギリスの作家は誇り高くマイペースを守る――と、それぞれの国民性を如実に表わしていることだった。多分、刑事もそうだるうと考えて書いたのが、この作品である。
書きながら、Tシャツにジーンズのアメリカ作家は、今どうしているだろう? きちんとネクタイに背広のイギリス人はどうしているだろう? 議論好きのフランス人は?――と、考えていた。 「著者のことば」》
《世界を設にかける十津川警部
九州大学文学部講師・翻訳家
ジャン=クリスチャン・ブーヴィエ
西村京太郎氏は、かつて「名探偵」シリーズで、メグレやポアロ、E・クイーンを東京に呼び寄せたが、いまや、フランスヘ旅立つのは十津川警部である。十津川警部の旅立ちは、西村氏がフランスの推理小説ファンに知られている証拠で、事実、氏は'89年のグルノーブル国際推理小説大会に招かれている。
この大会に同行した私は、この作品中に、滞仏中の多くのエピソードが散見できて嬉しかった。西村氏の小説の魅力は犯人捜しだけでなく、エスプリと人間味溢れる細部の描写にあると、私は思う。
JRの捜査には慣れている十津川警部だが、はたして、日本推理文学の使者として、世界を股にかけることになるのだろうか? 読者、翻訳者として、私はそうなることを願っている。》
赤川次郎『三毛猫ホームズの幽霊騒動』カッパ・ノベルス・1988年
《警視庁捜査一課の片山義太郎と妹・晴美、石津刑事と三毛猫ホームズたちが、久しぶりに自宅で夕食をとっていると、TV局に勤める義太郎の中学時代の友達が訪れた。ポルターガイストの起こる屋敷で、“有名タレントと一晩を過ごす企画があり、それに公平な第三者として、出演を要請された。もちろん晴美とホームズは大乗り気! 片山は、事件んい巻き込まれる予感におびえたが……案の定、問題のお屋敷で殺人事件が……!? はたしてポルターガイストの仕業か!? ホームズの椎埋が冴える!
超人気シリーズ待望の書下ろし第16弾!》
《もともと、このシリーズは、多少「超自然的」な面を持っている。三毛描が探偵役をつとめる、ということ自体、現実離れした設定なのだから。
ここではもう一つ、「ポルターガイスト」の霊が登場人物(?)の一人として、ホームズ、片山たちと共演するが、その点以外は、あくまでいつもながらの「三毛描ホームズ」ミステリー。殺人と、霊に惚れられた片山義太郎の奮闘ぶりを、お楽しみいただきたい。
「著者のことば」》
《超人気作家の赤川次郎は、新聞、週刊誌、月刊誌などの連載で、毎月六〇〇枚以上の原稿を書いている。
そのうえ、ヨーロッパ旅行直前の忙しいときにに、本書を書き下ろしたのだから、その忙しさは、殺人的だった。
にもかかわらず、赤川作品のいずれも秀作であるところに人気の秘密がある。》
広瀬仁紀『乗取り屋』カッパ・ノベルス・1984年
《紅蓮の炎に包まれ、阿鼻叫喚の地獄と化したホテル・ニュー赤坂を背に、杜長の榊原文麿は無表情に空を見つめた。――酒乱の父のために、赤貧の少年時代を送った榊原は、東京のメリヤス問屋へ奉公に出た。徹底した倹約と貪欲な金儲けによって、榊原はわずか十八歳にして「榊原商店」を設立!「殺られる前に殺れ!」――大平洋戦争のどさくさで荒稼ぎした資金をもとに、老舗・伊丹屋百貨店を手始めに、次々と有力企業の経営権を狙う。そしてついに、「ホテル・ニュー赤坂」の経営権を掌中に! “釆取り屋”と異名をとる男の栄光と挫折、非情な男たちの闘いを描いた、書下ろし長編企業ピカレスクの大作!》
《モデル小説ではないが、読者が作中の人物に、実在の人物を想像されるのは、一向にかまわない。
戦後が、すでに歴史となって三十年以上の歳月が過ぎた。
多くの事態も人もかわったが、その時々を斬り抜けて不死鳥のように生き続けた人もいる。
小説中の榊原文麿、沢野賢吉も、同様の人間たちといっていい。
だが、現在にいたるまでのプロセスで、二人の軌跡が何故、かわったものになったのか、それが作品の主題で
ある
「著者のことぱ」》
《信頼できる投手、広瀬仁紀
評論家 佐高 信
プロ野球で、確実に勝ち星の計算できるピッチャーというのがいる。こうしたピッチャーは、監督や選手たちにとってはもちろん、ファンにとっても大変ありがたい。安心してゲームを愉しんでいられるからだ。
広瀬仁紀は、経済小説界において、まさに安心できるピッチャーである。
その作品は絶対に崩れることがなく、確実に読者を愉しませる。
曾祖父が南部藩士で、最後の逆賊の汚名を受けたという広瀬の中には、脈々として反骨の血が流れ、そのためか、プロ野球は大の巨人嫌い。たとえば、江夏を謙虚にしたようなピッチャーだ、とも言える。》
高木彬光『炎の女』角川文庫・1976年
《律子は、いま胸の中で、感情が爆発しかけていた。――わたしは、にくいあの女からこの人を奪い取ってやった。あの女を殺してやりたい。でも、逃げのびるには、わずかな確率しかない……。
ベッドで囁かれた律子とあの女の夫直樹の会話には、はげしい復讐心がやどっていた。あの女のために屈辱的な青春を強いられた律子、わがままな妻との間にひびがはいっている夫のどす黒い妄想は、ついに殺意にかわった! 完全犯罪を企むただれた関係の女と男、新たな事件を未然に阻止しようとする検事霧島三郎。最高のサスペンスとトリック、著者会心の本格長編推理。》
渡部直己『日本小説技術史』新潮社・2012年
《『八犬伝』や『金色夜叉』の作品構成を支えた「偸ち聞き」の技術とは?『たけくらべ』の美登利の心変わりにおける「突然」と「偶然」の相違とは?『破戒』の「告白」は、作中の「描写」といかなる技術関係を結んだか?『道草』の夫婦の気持の齟齬は、どのような文章技術によって描かれたか?『あらくれ』のお島を「あらくれ」娘に作り上げた創作技術のポイントは?『第七官界徂徨』のしぐさ描写で見えてくる「新感覚」の技術世界とは?名作の創作技術を著者ならではの緻密な豪腕で論じ、小説の読み方の根幹を築いた代表作。》(「BOOK」データベースより)
渡部直己『日本小説技術史』|書評/対談|新潮社
書評:日本小説技術史 [著]渡部直己 - いとうせいこう(作家・クリエーター) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
長野まゆみ『ユーモレスク』ちくま文庫・2007年
《真哉は、隣家から聞こえてくるユーモレスクが好きだった。6年前に行方不明になった弟。それ以来、隣家は「近くて遠い」場所だった。しかし、物語は、再びゆっくりと動き始める。隣家のすみれさんの死。その弟・文彦との再会。彼の教え子で高校生の和の煩悶。弟はなぜ?…姉・周子の目を通して語られる、切なさいっぱいの物語。文庫化に当たり、書き下し短篇「アラクネ」を収録。》(「BOOK」データベースより)
小川洋子『沈黙博物館』ちくま文庫・2004年
《耳縮小手術専用メス、シロイワバイソンの毛皮、切り取られた乳首…「私が求めたのは、その肉体が間違いなく存在しておったという証拠を、最も生々しく、最も忠実に記憶する品なのだ」―老婆に雇われ村を訪れた若い博物館技師が死者たちの形見を盗み集める。形見たちが語る物語とは?村で頻発する殺人事件の犯人は?記憶の奥深くに語りかける忘れられない物語。》(「BOOK」データベースより)
谷正人『イラン音楽―声の文化と即興』青土社・2007(田邉尚雄賞)
《イラン伝統音楽の「即興」概念を考える上で、「個人の創造性」という視点はどこまで妥当なのか。ウォルター・オングの「声の文化」的精神と「文字の文化」的精神という対比項を援用しながら、演奏者にとってそもそも「自由」や「個性を発揮」というようなあり方が、近代西洋的な意味合いで―「義務的要素」と対置されるような字義通りの概念として―存在しているのかどうかを再検討し、イラン音楽における「作者」「作品」の概念までを問い直す。》(「BOOK」データベースより)
永六輔・大竹省二『赤坂檜町テキサスハウス』朝日新聞社・2006年
《まだ焼け跡が残る時代、東京・檜町にテキサスハウスと呼ばれるアパートがあった。そこには写真家の大竹省二はじめ女優の草笛光子、ジャズ歌手の笈田敏夫など戦後の芸能史を飾った錚々たる顔ぶれが住んでいた。当時、放送界で仕事を始めたばかりでこのアパートに出入りしていたのが永六輔。いま、大竹省二の写真とともに、熱気に満ちた「夢多き時代」を振り返る。》
G・ガルシア=マルケス、P・A・メンドーサ『グアバの香り―ガルシア=マルケスとの対話』岩波書店・2013年
《ノーベル賞作家にして稀代の語り部ガルシア=マルケスが、長年の親友である作家・ジャーナリストのメンドーサを相手に膝を交えて語り尽くす、自らの生い立ちや文学への目覚め、若い頃の習作時代、いかにして『百年の孤独』は生まれたか、そして成功後の名声がもたらしたもの、…。作家と作品をより深く知る上で必読のエピソードが満載の、一九八二年、幻の名対談。》(「BOOK」データベースより)
SUNDAY LIBRARY:古屋 美登里・評『グアバの香り ガルシア=マルケスとの対話』- 毎日新聞
ミヒャエル・エンデ『エンデ全集17 闇の考古学』岩波書店・2002年
《ピカソやキリコの同時代にひときわ予言的テーマを追った幻想画家エトガー・エンデ.その息子,作家のミヒャエルが父の作品世界を発掘し,家族が与えあった影響とファンタジーの秘密を探るインタビュー.素描多数収録.》(闇の考古学―― 画家エトガー・エンデを語る ―― )
Edgar Ende
マイケル・オンダーチェ『ディビザデロ通り』新潮社・2009年
《血のつながらない姉妹と、親を殺された少年。一人の父親のもと、きょうだいのように育った彼らを、ひとつの恋が引き裂く。散り散りになった人生は、境界線上でかすかに触れあいながら、時の狭間へと消えていく。和解できない家族。成就しない愛。叶うことのない思いが、異なる時代のいくつもの物語を、一本の糸でつないでいく―。ブッカー賞作家が綴る、密やかな愛の物語。》(「BOOK」データベースより)
+++『ディビザデロ通り』 マイケル・オンダーチェ 文:大場正明 +++
森正人『昭和旅行誌―雑誌『旅』を読む』中央公論新社・2010年
《大正末に創刊して以来、昭和期全体にわたって旅行のたのしみから規範までを伝えつづけた雑誌『旅』。限りない懐かしさを感じるのはもちろんだが、それだけではなく、読めば読むほど、時代ごとの日本人の旅行観の変遷が見えてくる。戦前戦後を生き抜いた雑誌の隅々から、執筆者、読者、編集者たちの苦楽が立ちのぼってくる。》(「BOOK」データベースより)
ジョン・フリーリ『イスタンブール―三つの顔を持つ帝都』NTT出版・2005年
《本書は、ビザンティウム、ビザンティン帝国の首都コンスタンティノープル、およびオスマン帝国の首都イスタンブールと、三つの名前をもつ帝都の歴史入門書である。ただし二つの世界帝国の通史ではなく、ある一都市の「伝記」、すなわち古代から今日までそこで営まれてきた人々の生活の物語である。また史跡ガイドもかねていて、この都市の生きた歴史の文脈、とりわけそれぞれの史跡が各時代の政治、宗教、文化、芸術、社会において果たしていた役割に重点をおいている。》(「BOOK」データベースより)
梅棹忠夫『文明の生態史観 ほか』中公クラシックス・2002年
《戦後日本人が提示した、最も独創的で最も重要な世界史理論。》(「BOOK」データベースより)
和合亮一『詩ノ黙礼』新潮社・2011年
《2011年春。福島で暮らしつづける、詩人の祈り。》(「BOOK」データベースより)
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Thelonious Monk, in Medley, Live Concert, Varsaw, Poland, 1966.
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