2014年
六花書林
『ゆりかごのうた』は大松達知(1970 - )の第4歌集。
2009年~2013年(38歳~42歳)の444首を収録。吾子を詠んだ歌が中心だが、抄出してみた中には入っていない。
飲みかけのロックグラスにラップして遠くまで歩くやうに眠りぬ
てのひらを焙れるやうにかざしをり枯田のやうなキーボードの上
シマウマの真似せよかしと命じればからだくねらす十三歳は
映画館ひとつもあらずパチンコ店六つあると聞き屋久島を出る
海の上にも電波の淡き濃きところありて濃きところにて妻とつながる
中鳥とまちがへたときそのままでいいですと言つた中島が怖い ※「鳥」に傍点
わが生(あ)れし以前に入会せし人の歌の上にも○をつけてゆく
〈終〉の字がせり出して来る小津映画〈冬〉の最後の点が上向き
グーグルに祖父の名前も初恋の人の名前も出て来ないんだ
支援物資のなかに棺のあることを読みてたちまち一駅過ぎつ
それ、短歌ですか?といちど訊かれたりスパゲティー屋のカウンター越しに
見慣れたる君の名前が〈故〉の下にありて夜(よ)の灯に照らされてをり
言ひ訳はあるやうでなく、先週の土曜日に行けば会へた、会へたんだ
山藤をみぎまえにひだりまへに見て関越自動車道まだ関(かん)のうち
ボンバーにあらずボマーと発音せよ 爆撃機(ボマー)、爆撃機(ボマー)とくりかへし言はす
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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U2-I Still haven`t found What I`m looking for
コメント
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