先月読んだ本から、俳句関係のとか、必要に迫られてとかいったものは除いて、物件として懐かしいとか何かがあるものの書影。
眉村卓『時のオデュセウス』ハヤカワSFシリーズ・1971年
《単なる感傷的反体制を排し、硬直化したイデオロギーを超え、体制的構造の完全な把握の上に立ってインサイドから情報化管理社会下の人間疎外を鋭く告発し人間回復を訴える文学、それがSFだ――独特の〈インサイダー文学論〉を
かかげて、精力的な創作活動をつづける眉村卓には、つねに、未来改革への“参加者”としての誇りと自負が満ちみちている。SFを社会の矛盾をつき、歪みをえぐる強力な武器として、彼はいまや自他共に許す社会派作家としての地位を確立した。だが、SFに傾けるその情熱とエネルギーは決して彼を現状に満足させない。自分をSFランドヘとひた走る貨物列車にたとえる眉村が、次にどの高みをめざし、これからどのような貨物を積みこんでいくか、われわれは大きな期待をもって見守ろう。
*
系列組織化された情報産業に反抗し、自由人の道を進もうとする孤独な作家の絶望を描く『サロンは終わった』高度産業社会の有能な走狗を養成する学校に入学した若者の苦悩と挫折の物語『産業士官候補生』時間旅行に託して自由社会と管理社会の相克を衝く表題作など、著者が本領をいかんなく発揮した最近作14篇を収録する新短篇集!》
収録作品=時のオデュセウス/かれらと私/サロンは終わった/フニフマム/さむい/隣りの子/いたちごっこ/中年/犬/風が吹きます/酔えば戦場/公子/産業士官候補生
都筑道夫『殺されたい人 この指とまれ』集英社文庫・1982年
《口紅の赤、珊瑚珠の朱色、炎の赤、印鑑の朱肉。両の乳房と下肢に残された水着の白い三角形の跡、そして逆三角形のしげみ。女たちは、いつも、テレビ両面の中や、ドレッサーの鏡の中、ライターの炎の中にいる。この小説集に登場する多彩な犯罪的美女たちこそ、まさしく都筑道夫式官能美学の暗殺教程である。
解説・山田宏一》
収録作品=見知らぬ妻/檸檬色の猫がのぞいた/珊瑚珠/赤い影絵/猫のまま死ぬ/グラスに落ちた蠅/新宿の一ドル銀貨/ネオン・インベーダー/六日間の女/不肖の弟子/殺されたい人この指とまれ
三浦哲郎『蟹屋の土産』福武文庫・1986年
《旧友との邂逅で甦える青春の苦い記憶。少年期の揺れまどう愛憎の交錯。穏かな日々にひそむ去りし日の哀歓と生の翳りを澄明な文体で描いた表題作ほか、短篇名手の世評高い著者が、人生への透徹した眼で日常を把えながら、はるか彼方の境界を見すえた佳篇9篇を収録。》
収録作品=ひとり遊び/肉体/若草/童女抄/歓楽/余命/お菊/ほおずき/せせらぎ亭/蟹屋の土産
奈波はるか『少年舞妓・千代菊がゆく!―声がわりの予兆』集英社コバルト文庫・2012年
《本当は男の子だけど、人気舞妓を続けている千代菊。ところが風邪でもないのに突然声がでなくなってしまった。これって声がわり!?変声期がきたら舞妓を辞めると覚悟はしていた。でもこんなに急だとは…。動揺する千代菊に「最後のお花(仕事)をつけたい」と申し出たのは、これまで男衆を務めてくれた、従兄の宏章だった。千代菊と宏章の、初めてのデート。だがそれを見ていた男がいて…。》(「BOOK」データベースより)
ブライアン・M・ステイブルフォード『フェンリス・デストロイヤー』サンリオSF文庫・1982年
《すさまじい嵐にもまれ、人々の探査を拒む惑星ルシファーⅤ――そこに想像を絶する巨大な宇宙戦艦が座礁していた。
それは遠い昔、ギャラセラン人たちの宇宙戦争の結果、かれらの一派が窮極の脱出装置として建造した100万以上の人員が収容できる生産型宇宙船だった。だが、ギャラセラン人たちはついに武器を放棄し群体思考による文明生活を営みはじめたため、その船は使われることがなかったのだ。ところがその船には、攻撃を加えてくる敵は異次元へ吹きとばしてしまうフェンリスの装置と呼ばれる完全無比の防御兵器を搭載していたのだ。
宇宙飛行士グレンジャーに命令が下った。彼は〈かんむり白鳥〉を駆って乗組員とともに人跡未踏の荒涼たるルシファーⅤへ向かった。ところが途中でパラントのおたずね者に〈かんむり白鳥〉をハイジャックされてしまったのだ……いよいよクライマックスを迎える宇宙飛行士グレンジャー・シリーズ第5弾!!》
高木彬光『魔弾の射手』角川文庫・1984年
《大胆不敵な犯罪予告と共に、歌劇の招待状が、名探偵神津恭介の許に届けられた。送り主は、自らを悪魔の使者と呼ぶ“魔弾の射手”。
そして、その言葉通り、舞台でカルメンを公演中の水島真理子が「魔弾の射手」のひとことを残し、失神した。客席に、その姿を見出したのだろうか。
しかも、この事件を幕開けにして、殺人事件が連続しておこっていった。
血に飢えた殺人鬼・魔弾の射手とは何者か。その恐るべき魔手は、遂に神津恭介の上にまで及んできた。
凶悪な敵の仕掛ける邪悪な罠に挑戦する神津恭介。長篇推理の傑作。》
高木彬光『成吉思汗の秘密』角川文庫・1973年
《連戦連勝の戦いのヒーローだった源義経の最後には、多くの疑問と作為がちらばってぃる。――義経の首を挙げた鎌倉勢は、蒸し暑い6月に43日もかかって凱旋しているのはなぜか。偽物を頼朝に届けるための首を腐らせる長道中ではなかったのか。アイヌ民族の“ホンカイサマ”伝説が意味するものは。衣川の戦いで義経は落ちのびた!? 源氏の白旗とジンギスカンの九旒の白旗は単に偶然の一致にすぎないか…“蒙古平原の星・ジンギスカンは源義経である”という一人二役の大トリックの謎を、病床の神津恭介はどう解く。
著者会心の傑作長編推理。》
そらしといろ『フラット』思潮社・2013年
《(じゅんかんする、
――海を閉じてまわるものの耳殻で裂かれた
えぐれた胸からしたたる光を浴びた日のこと
(「えぐれた胸からしたたる光を浴びた日のこと」)
「小鳥のぬくもり、人肌のぬくもり、茶碗のぬくもり。それもこれも、交わる人やモノや景色によりけり。気持ちよくもなれば悪くもなる。そらしといろさんは塩梅して加減して、ぬるめにする。保温する。その温度が絶妙なのだ」(長野まゆみ)。「この詩集へと詩の主体を決定づけているのは、もはや、あらかじめの性でもない、世界のアンバランスでもない、時代の空気でもない。そうではなく、もっとひそやかな、もっと底深い情動につき動かされたいきなりの他者への呼びかけ、他者の希求なのである」(野村喜和夫)。多彩なことばが泡だって、五線から弾ける不/協和音17篇。新鋭が奏でる第1詩集。著者自装。》
アダム・フランク『時間と宇宙のすべて』早川書房・2012年
《時間の概念と宇宙論の進展を、社会や歴史とのかかわりから展望する傑作科学ノンフィクション。》(「BOOK」データベースより)
辻原登『抱擁』新潮社・2009年
《この美しい少女は、たしかに今、見えるはずのない《誰か》の姿を見ている――。
二・二六事件から間もない、昭和十二年の東京・駒場。前田侯爵邸の小間使として働くことになった十八歳の「わたし」は、五歳の令嬢・緑子の異変に気づく。彼女は、見えるはずのない《誰か》の姿を見ている――。歴史の放つ熱と、虚構が作り出す謎が、濃密に融け合う世界。イギリス古典小説の味わいを合わせ持つ、至高の物語。》
木山捷平『井伏鱒二・弥次郎兵衛・ななかまど』講談社文芸文庫・1995年
《贋の権威や通俗の価値に決して近寄らず、小走りせず、あくまで自分の文学の“背骨”をひたむきに創りつづけた日本の“親爺”木山捷平の最晩年の味わい深い短篇群。敬愛してやまぬ井伏鱒二の秀逸な素描、若き太宰の風貌等、市井の人として生き通した文学者の豊かで暖かな人生世界。》
収録作品=骨さがし/枕頭台/鼠ケ関/赤い提灯/弁当/朱い実/山陰/弥次郎兵衛/釘/ななかまど/太宰治/井伏鱒二
久生十蘭『湖畔・ハムレット』講談社文芸文庫・2005年
《正体をくらますリュパン?遁走するファントマ?“小説の魔術師”十蘭の傑作7篇
女装、泥酔、放火――、模範少年はなぜ一見、脈絡のない事件を起こしたのか?少年の心理を過去現在の交錯する戦後空間に追い、母と息子の残酷極まりない愛の悲劇に至る傑作「母子像」(世界短編小説コンクール第一席)、黒田騒動に材を採り破滅に傾斜する人間像を描破した「鈴木主水」(直木賞)等、凝りに凝った小説技巧、変幻自在なストーリーテリングで「小説の魔術師」と評される十蘭の先駆性を示す代表的7篇。
江口雄輔
ジャンルにこだわらない作品傾向とそれにふさわしい多彩な文体、十蘭は安住することなくつねに文体実験を試みた。安住できなかったといったほうが正しいかもしれない。どこかにあるはずの理想郷がどうしても捕捉できないもどかしさがあり、他方、目の前の現実には満たされないもの、欠落している部分があったからだ。何が欠けているのか、それは本人にもわからない。それだけいっそう現実世界から隔絶した十全たる世界で、しかもそれにふさわしい久生十蘭の刻印がしっかり押されている世界を求めた。――<「解説」より>》
収録作品=湖畔/ハムレット/玉取物語/鈴木主水/母子像/奥の海/呂宋の壺
難波利三『通天閣夜情』徳間文庫・1989年
《大人の玩具の新製品開発に没頭する初老の男、その実験台になってやる三十過ぎた踊り子、出稼ぎに来てバーの女と失踪した父親、親元に子供を預け、パートで貯めた大金を芝居一座の花形に入れ揚げた母親。
通天閣を見上げる猥雑の街では、ネオンが溢れ、安アパートがひしめき、騒音と塵芥の渦の底で、人生の長い影を引きずる男と女が、陽だまりに群れている……。
ほろ苦くも物哀しい男と女の物語七篇。》
収録作品=通天閣夜情/浪花恋しぐれ/気になる天使/痺れる街/夜の玩具/黄昏の秘戯/通天閣の少女
豊田有恒『親魏倭王・卑弥呼』徳間文庫・1983年
《かつて叔父高卑狗によって父母を惨殺された卑弥呼も、いまや北九州の群小国家を統べる邪馬台国の女王となっていた。
卑弥呼の次なる目標は父母の国朝鮮へ渡り、鉄製武器と馬を入手することだったが、また彼の地にいるであろう叔父への復讐と幼時母に聞いた漢文明への憧憬もあった。『倭の女王・卑弥呼』につづき、海原を疾駆しながら親魏倭王として活躍するシャーマン卑弥呼。新しい視点で挑戦する古代SF。》
赤江瀑『原生花の森の司』文藝春秋・1980年
《夢魔と狂気の世界に誘う 異能作家赤江瀑が描く女の妄執
椿は、花びらを散らさずに、花のさかりに咲き誇ったまま、にわかにぽっくり首を落とす。一瞬の散華である―昔話の伝承者である老女の自殺に秘められた謎は何か。表題作など七篇の珠玉作品を収録した赤江美学の総集成》
収録作品=原生花の森の司/ハエン縣の灰/黒堂/睡り木語り/八月の蟹/地下上申の森/バンガローは霙
山田稔『残光のなかで―山田稔作品選』講談社文芸文庫・2004年
《ゾラを偲ぶ旅で出会った老文学者の孤独な姿を描いた「残光のなかで」、パリの街とそこで勁くつましく暮らす人々をやさしく見つめる「メルシー」「シネマ支配人」等、フランス滞在に材を求めた作品群に、記憶のあわいの中でゆらめく生の光景を追った「糺の森」「リサ伯母さん」等、8篇を収録。ユーモアとペーソスの滲む澄明な文体で、ひそやかで端正な世界を創り出した山田稔の精選作品集。》
収録作品=残光のなかで/オンフルールにて/メルシー/シネマ支配人/岬の輝き/糺の森/女ともだち/リサ伯母さん
フローベール『聖アントワヌの誘惑』岩波文庫・1940年
《紀元4世紀頃,テバイス山上にて隠者アントワヌが一夜の間に,精神的生理的抑圧によってさまざまの幻影を見,それに誘惑されながら十字架の許を離れずに,ついに生命の原理を見出して歓喜するという一種の夢幻劇的小説.幻覚の発生様式,当時の風俗習慣等,完璧に近い美しさと厳密さを有し,作者が30年の歳月をかけて成った傑作.》
武田泰淳『士魂商才』岩波現代文庫・2000年
《「資本家=悪」という図式では,実業家はおろか,人間自体も描けはしない.強靭な魂や鋭い頭のはたらき,そうした士魂商才をもって,金融・貿易・化学工業等の分野で台頭してきた人物に光をあて,経済を動かすダイナミズムと経済に動かされる人間の様態を描いた経済小説の嚆矢.表題作のほか5篇に,丸山眞男氏の批評を併録.奥村宏解説 》
収録作品=士魂商才/成金から財閥まで/妖美人/甘い商売/鶴のドン・キホーテ/歯車
駒田信二・菊村到・尾崎秀樹編『独白の翳り―現代小説ベスト10 1973年版』角川文庫・1977年
《小説誌の誌面を、満天の星のごとく華やかに彩る現代作家たち。巨匠は独自の風格を持つ、円熟の境地を示し、中堅作家は卓抜な構成力と鋭い技巧の冴えを見せ、新人は気魄に満ちた野心作に挑戦する。
本書は、毎年発表される膨大な現代小説の中から、年度別に最もすぐれた、多彩な作品を十編ずつ精選・収録し、小説を読む感動と楽しさを満喫させるシリーズである。》
収録作品=「罪食い」赤江瀑/「老坂」川崎長太郎/「小国民邂逅」河野典生/「養豚の実際」筒井康隆/「春の惑い」三浦哲郎/「ふりむけば砂漠」虫明亜呂無/「長距離ランナーの孤独」佐藤愛子/「ワラビとツチノコ」田辺聖子/「幻想の数寄屋橋」中山あい子/「トマト・ゲーム」皆川博子
福島正実『SFの夜』ハヤカワSFシリーズ・1966年
《1929年(昭和4年)2月、樺太に生まれる。日大英文科を経て、明大仏文科に学ぶ。1956年、早川書房へ入社。1960年日本初のSF専門誌『SFマガジン』の創刊とともに同誌の編集長となり、現在に至る。以後、編集者として雑誌、単行本の発刊に力をそそぐかたから、自から『盗まれた街』『鋼鉄都市』『夏への扉』『幼年期の終り』など名作の翻訳を始めとして、SF評論、海外SFの紹介、科学時評、そして創作に健筆をふるった。SFに対するその尽きることのない愛着、なにものにも屈せぬファイト、意欲旺盛なエネルギーは、日本SF界発展の原動力となった。“SFの鬼”として広く親しまれ、美酒を愛する著者は、同時に星と空に限りない憧憬を抱くというロマンチストでもある。
*
死んだはずの友人や恋人たちが、現実の世界に生きている話『ちがう』白人の世界と黒人の世界とが、ある時点を境にして逆の立場になる『J・J・J』少年SFファン団体がSF出版社を襲撃する『SFの夜』など19篇の最新力作のほか、著者独自の見解に基づくSFコメントを収録した、日本SF界のリード・オフマン福島正実の傑作短篇集!》
収録作品=ちがう/薄闇/帰郷/過去をして過去を/涼しい風の吹く夜には/ゴースト・プラネット/J・J・J/転位/アイ/今は昔/ベム/ロボット・ワイフ/エアポケット/愛は惜しみなく/予知/遭難/波間/微笑/SFの夜
エドナ・オブライエン『愛の歓び』集英社文庫・1977年
《結婚し、子供を産み、誕生日にはプレゼント、時には友達を招いてのパーティ。典型的な中産階級の変化のない毎日に、熱く燃え上がることもなく朽ち果ててゆくケイトとバーバの夢と希望。“女になること”“女であること”の意味をさぐりつづけた「カントリー・ガール」「みどりの瞳」につづく話題の『恋する娘たち』三部作の完結篇。》
矢野徹『孤島ひとりぼっち』角川文庫・1981年
《猛烈な嵐の中、順たちの乗り組んだ船は難破、漂流の果てにある無人島にたどり着いた。が、待てど暮らせど救助隊は来ない。その間に、仲間は一人死に二人死に、ついに順はひとりぼっちになってしまった。
そんなとき順は、難破船の中の木箱に、組み立て前のロボットが置かれていることを知った。“フライデー”と名付けて、順は夢中になって組み立てを開始したが……。
無人島で暮らす、少年とロボットの感動的で不思議な友情物語。表題作ほか10編収録。》
収録作品=春の雪/サイボーグ少年/トロンの反乱/海底の墓場/孤島ひとりぼっち/金色ボタンの宇宙船/火星5号応答せよ!/CTA102番星人/忍者に野球をならった男/宇宙密航少年/幽霊ロボット
豊田有恒『長髪族の乱』角川文庫・1974年
《良風美俗に反するという理由で、長髪に拒否反応を示す警察やその尻馬にのった矯正会のおばさん連。外観だけで人間の価値を決めてしまうナンセンスな風潮に、若者たちが反乱した! 今夜も厳しい検問がしかれ長髪族狩りが続いているが、やつらの思いどおりにさせるものか……。
とぎすまされた鋭い感覚で鮮やかに現代を斬る、著者会心の傑作作品集。》
収録作品=長髪族の乱/ああ日本自衛隊/昭和元禄誉旅路/特別ニュース/ポルーション一九九〇/すれちがい東京/選挙エクスパート/ゲバルト国立公園/おれの城下町/レミングの群/公害レース/ぜいたくな悩み/野蛮国/ミッドナイト・リブ/プロダクション時代/ご当地ニュース/戒厳令バンザイ/戦争はなかった
山川方夫『親しい友人たち』講談社文庫・1972年
《〈青春〉のさなかの〈愛〉、そこにひそむ残酷さ、哀しさ、虚しさをリリシズム溢れる文章で描きあげ、不慮の事故に夭折した山川方夫の代表作品集。――二十三歳のとき書かれた青春の神話にも似た「昼の花火」、米ライフ誌に掲載された「お守り」等、ショート・ショート23編。》
収録作品=待っている女/恐怖の正体/博士の目/赤い手帖/蒐集/ジャンの新盆/夏の葬列/はやい秋/非情な男/菊/メリイ・クリスマス/愛の終り/十三年/お守り/ロンリー・マン/箱の中のあなた/予感/暑くない夏/トンボの死/社内旅行/カナリヤと少女/新年の挨拶/昼の花火
加納一朗『人工生命体ドンドン』ソノラマ文庫・1980年
《ひろみの父、北川南天博士はピントの狂った大発明家だが、その父親、つまりひろみの祖父も南天博士を上回る大物らしい。是馬・荒馬の兄弟がひろみに招待されて海辺の研究所を訪れた時、その人、北川十天博士は史上初の人工生命を創造してノーベル賞をもらうのだと気炎を上げていた。雷雨の夜、アメリカの生化学者ブランコンシュタインも立ち会って実験は開始された。落雷で巨大な電圧がかかった実験室はメチャメチャとなったが、奇跡的に無事だった培養液の中には白い泡のようなものが動いている。実験は成功したのだ。だが、是馬たちは喜べなかった。途方もない速度で成長するその人工生命体には、何か不吉な感じがある。――
爆笑《是馬・荒馬》シリーズ第7弾!》
星新一『悪魔のいる天国』新潮文庫・1975年
《ふとした気まぐれや思いつきによって、人間を残酷な運命へ突きおとす“悪魔”の存在を、卓抜なアイディアと透明な文体を駆使して描き出すショート・ショート36編を収録する。人間に代って言葉を交わすロボットインコの話『肩の上の秘書』未来社会で想像力にあふれた人間を待ち受ける恐怖を描く『ピーターパンの島』など、日常社会、SFの世界、夢の空間にくりひろげられるファンタジア。》
収録作品=合理主義者/調査/デラックスな金庫/天国/無重力犯罪/ロケットと狐/誘拐/情熱/お地蔵さまのくれた熊/黄金のオウム/シンデレラ/こん/ピーターパンの島/夢の未来へ/肩の上の秘書/殺人者さま/ゆきとどいた生活/夢の都市/愛の通信/脱出孔/もたらされた文明/エル氏の最後/サーカスの旅/かわいいポーリー/契約者/となりの家庭/もとで/追い越し/診断/告白/交差点/薄暗い星で/帰路/殉職/相続/帰郷
内田樹・名越康文・西靖『辺境ラジオ』140B・2012年
《MBSラジオにて、深夜に不定期放送中の隠れた名番組を書籍化! 未放送部分&「あとがきトーク」も収録。》
筒井康隆『巨船ベラス・レトラス』文藝春秋・2007年
《売れさえすれば作者を潰したっていいというのか。人間を使い捨てにする企業の論理か。そんな若いやつの小説、受賞した時だけその受賞した本が売れるだけのことじゃねえか。今の状況がなんでも正しいというんなら、なんでもうすぐ世界が滅びるってことを認めて、それを書かないんだ。それが現在の文学者のやるべきことじゃないのかい。現代日本文学の状況を鋭く衝く戦慄の問題作。》(「BOOK」データベースより)
フアン・ホセ・サエール『孤児』水声社・2013年
《舞台は16世紀の大航海時代、見果てぬインディアスを夢見て船に乗り込んだ「私」が上陸したのは食人インディアンたちが住む土地だった。「私」は独り捕らえられ、太古から息づく生活を営む彼らと共に過ごしながら、存在を揺るがす体験をすることになる…。無から生まれ、親もなく、名前もない、この世の孤児となった語り手を通して、現実と夢幻の狭間で揺れる存在の儚さを、ボルヘス以後のアルゼンチン文学を代表する作家が描き出す破格の物語。》(「BOOK」データベースより)
ロバート・A・ハインライン『自由未来』ハヤカワ文庫・1983年
《その夜のファーナム家は、のどかで平和な夜を過していた。ファーナム夫妻、息子、娘、娘の友人、そしてハウスボーイまでが楽しい夜の語らいに、トランプに興じていた……ラジオが突然、第三次世界大戦勃発を報じるまでは! 地下の堅牢なシェルターに全員が避難した一瞬後、シェルターは荒波にもまれる船のように揺れ動き、温度は急上昇した。水爆が爆発したのだ! だが、ファーナム家の人々はかろうじて生き残った。やがてシェルターからでたとき、彼らが目にしたのは、死の灰にまみれた廃墟ではなく、思いもかけぬ世界だった……巨匠ハインラインが描く怖るべき世界!》
ポール・プロイス『破局のシンメトリー』ハヤカワ文庫・1986年
《日米合同でハワイに建造された世界最大の粒子加速器で、新たなクォークが発見された。素粒子理論を塗りかえるこの業績に物理学界は湧きたち、所長のエドヴィックは全世界の賞賛を一身に俗びていた。だが研究所員の一人ピーター・スレイターは、新粒子にひそむ怖るべき可能性と、華々しい成功の裏で進行する醜悪な陰謀の影を感じとった。やがて、研究所構内で原因不明の爆発事故が起こり、それをきっかけにスレイターは、見えざる敵に対して敢然と立ち向かっていくが……!? 新鋭が最新の物理学理論を駆使して壮大なスケールで描きあげた、戦慄の近未来SFサスペンス巨篇!》
カート・ヴォネガット『スラップスティック』ハヤカワ文庫・1983年
《ある日突然どういうわけか地球の重力が強くなり、そこへ緑死病なる奇病まで現われて、世界は無秩序、大混乱! アメリカ合衆国もいまや群雄割拠の観を呈し、ミシガン国王やオクラホマ公爵が勝手放題にふるまっている。そしてジャングルと化したマンハッタンでは、史上最後の合衆国大統領がひとり手記を書きつづっていた――
愚かしくもけなげな人間たちが演ずるスラップスティックの顛末を……涙と笑いに満ちた傑作長篇。》
東浩紀『サイバースペースはなぜそう呼ばれるか+ 東浩紀アーカイブス2』河出文庫・2011年
《これまでの情報社会論を大幅に書き換えた「サイバースペースはなぜそう呼ばれるか」を中心に、九〇年代に東浩紀が切り開いた情報論の核となる論考をはじめ、斎藤環、村上隆、法月綸太郎との対談を収録。ポストモダン社会の思想的可能性は、すべてここに詰まっている!文庫版オリジナル構成。》(「BOOK」データベースより)
眉村卓『たそがれ・あやしげ』出版芸術社・2013年
《なんてことない日常にひそむ、異界へのわき道……。
くたびれた男たちが紛れ込んだ21の奇妙な世界。
全編単行本未収録!
本にするにあたって順序を変え、それぞれに前文「TMいわく」を書き加えた。内容に関連するつもりが、エッセイと言われても仕方がない文章になっている。余計なことを、と顔をしかめる人もいるかも……。
これはいわゆる「すれっからしのSF誌読み」向きの作品集ではない。
また、若さで可能性に挑戦しようという人には、物足りないであろう。
だからといってこうしたものを面白がってくれる人がいなくなったわけではない、と、私は思う。私自身が年寄りになってこういうものにもちゃんと存在理由があると信じるようになったせいもあるが。 ――(まえがきより)》
収録作品=絵のお礼/腹立ち/和佐明の場合/五十崎/多佳子/新旧通訳/中華料理店で/息子からの手紙?/有元氏の話/あんたの一生って……/未練の幻/昔の団地で/十五年後/「それ」/「F駅で」/帰還/電車乗り/同期生/未来アイランド/F教授の話/やり直しの機会
高橋たか子『怒りの子』講談社文芸文庫・2004年(読売文学賞)
《自分を掴もうとして空転を重ねる美央子。そんな美央子を姉のように見詰める、超然とした初子。美央子と同じアパートに住み、常に彼女にまつわりつく、虚言癖を持つますみ。3人の女性の緊迫した心理の劇は、美央子の松男への強引な思い入れを契機に、破局へと突き進む。昭和50年代後半の京都の町家を舞台に、周密な言葉運びと夢の持つ暗示力で、人間の内面の混濁の諸相を描破した、読売文学賞受賞作。》
田宮虎彦『足摺岬―田宮虎彦作品集』講談社文芸文庫・1999年
《死を決意した学生の「私」が四国で巡り合った老巡礼との邂逅、その無償の好意で救われる表題作「足摺岬」、新聞配達少年との心の通い合いと突然の死を伝える「絵本」、敗北する小藩の命運を書く「落城」、初期秀作「霧の中」他。人間の孤独な心に寄りそった、優しい視線の作品世界。》
収録作品=霧の中/落城/足摺岬/絵本/菊坂/父という観念/童話
中上健次『スパニッシュ・キャラバンを捜して』新潮社・1986年
《地球を舞台にしたパフォーマンス。人間を解読する熱い視線》(「BOOK」データベースより)
ジョルジョ・デ・キリコ『エブドメロス』思潮社・1994年
《20世紀芸術に一大衝撃を与えたキリコの絵画の独特な幻想と感覚と同質の魔力が、この接続詞なき詩的散文に脈打っている。光と闇が溶けあう謎と郷愁の空間。キリコの芸術解明上重要な位置を占める出口なき迷路をもつ幻想小説。》(「MARC」データベースより)
880夜『エブドメロス』ジョルジュ・デ・キリコ|松岡正剛の千夜千冊
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