古い本だとたまに表紙に乳首などが描かれていることがある(今回のだと『不連続殺人事件』とか)。
こういうのはmixiには上げられない。
こちらが気がつかないくらい小さく描かれていても、芸術的価値もあらばこそ、たちまち運営が見つけ出して強制的に削除してしまうからである。よく見分けるものだ。
mixiは携帯からログインすると必ずエロマンガ広告を見せられるのだが、このへん整合性はどうなっているのか。
葛西善蔵『贋物・父の葬式』講談社文芸文庫・2012年
《私小説作家にして破綻者の著者。彼の死とともに、純文学の終わりとまで言われた。
その作品群は哀愁と飄逸が漂い、また、著者の苛烈な生き方が漂う。
※本書は、文泉堂書店『葛西善蔵全集』第1~3巻(1974年10月刊)を底本としました。》
収録作品=贋物/呪われた手/遁走/火傷/春/浮浪/冷笑/姉を訪ねて/本来の面目/父の出郷/朝詣り/不良児/疵/歳晩/おせい/父の葬式/迷信/遺産
小谷野敦『現代文学論争』筑摩選書・2010年
《かつて「論争」がジャーナリズムの華だった時代があった。なかでも文学論争は、その衣の下に政治論争を隠し持っていて、刺激的だった。本書は、臼井吉見『近代文学論争』の後を受け、主として一九七〇年以降の論争を取り上げ、それらがどう戦われ、文壇にいかなる影響を与えたかを詳説。新聞・雑誌が、もはや論争を扱わなくなった現在の状況に一石を投じる。》
多木浩二/今福龍太編『映像の歴史哲学』みすず書房・2013年
《〈歴史を問い、歴史を批判し、出来事の歴史を乗り越えたところにある深層の「歴史」の断面を、ほとんど神話化された歴史の形象を、その日常への不意の顕れを、ひたすら凝視すること。表象やイメージとして出現する「歴史」の揺らぐ実相を相手にした多木浩二の思想的実践は、その意味で、日々を生きる人間の個人的感情や記憶と、それらが実を結ぶためにはたらいている歴史的過程への深い考察とをともに一つの帆にはらんで進む、世界という荒れ狂う海への冒険航海の試みだったといえるだろう〉
(今福龍太「後記」より)
札幌大学での「映像文化論」講義を編集して、本書は成った。ここには著者の活動の軌跡と思考のすべてが鮮やかに凝縮されている。
子供時代に生まれて初めて見たリーフェンシュタールの映画『オリンピア』にはじまり、自身が関わった写真雑誌『プロヴォーク』を中心に、中平卓馬や東松照明と共に生きてきた時代のこと、マリネッティはじめ未来派の問題性、バルトやフーコーとの出会い、そして著者の思考の核にもなったヴァルター・ベンヤミンについて。20世紀という現在を歴史的現在として捉えようとする歴史哲学の試み。》
高橋ショウ『闇の王』ジグザグノベルズ・2007年
《不滅の肉体。時の権力者達が求めたその身体をめぐって、高校生の鷹山零は、最愛の母・麗奈たちともに血と硝煙がこびりついた裏の世界で命懸けの戦いをくりひろげる…。凄絶なガンアクション・ストーリーここに登場!!》
ミハイル・バフチン『小説の言葉』平凡社ライブラリー・1996年
《小説というジャンルに脱中心化の思考を見出し、他者との対話的論争によって、人間が、歴史が、そして文化が創造され、深化される過程を論じた最高傑作。解説=伊東一郎》
坂口安吾『不連続殺人事件』角川文庫・1974年(探偵作家クラブ賞)
《終戦後間もない、ある夏、詩人歌川ー馬の招待で、山奥の豪邸に集まった、さまざまな男と女たち。
作家、文学者、詩人、画家、劇作家、女優など、いずれ劣らぬ変人・奇人ぞろい。邸内に異常な愛と憎しみが交錯するうちに血は血を呼んで、世にも恐るべき、八つの殺人が生まれた。
〈不連続殺人〉――その裏に秘められた、悪魔の意図は何か?
鬼才安吾が読者に挑む、不滅のトリック! すべての推理作家が絶賛する、日本推理小説史上最高の傑作。第二回探偵作家クラブ賞受賞。(ATG映画化)》
坂口安吾『復員殺人事件』角川文庫・1977年
《昭和22年9月のある日、小田原の成金倉田家の玄関に、ヨレヨレの白衣姿で現われた、異様な傷痍軍人。
片手・片足、両眼はつぶれ、片アゴを砲弾にもぎ取られて口のきけない男は、外地から復員した次男安彦と思われたが、その翌晩、倉田家の家族を突如見舞った惨劇。
射殺1人、催眠薬を飲まされた者3人、加えて、復員兵の男もまた、絞殺死体で発見された。
5年前にさかのぽる、長男親子の轢死事件との関係は? 復員兵の次男は、果してホンモノか? そして、新約聖書マルコ伝中の一句「樹のごときもの歩く」が暗示する、謎とは何か?…… 鬼才安吾の中絶作品に高木彬光が挑戦して続編を書きつぎ、「樹のごときもの歩く」の題名で見事完成させた、幻の傑作推理、ここに復活!》
山田正紀『赤い矢の女(上)東京・能登篇』トクマノベルズ・1988年
《初めて結ばれた夜、恋人の石動良雄はコンビニ・ストアから忽然と姿を消した! 唯一の出入口には美代子が待っていたというのに……。本間美代子はポプリの店で香りの専門家を志す22歳の学生だった。二週間あまりして良雄から回送された一通の封書。そこには、三十五年前に能登の海上で自殺を遂げた石動辰雄なる人物の新聞記事と死体鑑定のコピーが――。そして日ソ協力団体から届いた恋人の訃報! 良雄もまた能登の海で命を絶った。北陸へ旅立つ傷心の美代子に、追憶さえ許さぬ苛酷で怖ろしい運命が待ち受けていた……。》
《一人の平凡な女学生が、突然に青春を奪われ巨大な事件に巻き込まれた。本書のヒロイン・美代子の足跡を辿るように北陸各地を取材して回った。謎に満ちた苛酷な運命の中で美代子がどんな成長を遂げるのか。今、そのミステリアスな物語は、このほど軽井沢に拵らえた仕事場から快調に打ち出され始めた。》
山田正紀『赤い矢の女(下)モスクワ・レニングラード篇』トクマノベルズ・1988年
《恋人・良雄の変死の謎を握る男・片桐を迫う美代子は、日ソ協力団体の会長・勝俣氏から片桐は日ソ貿易の影に暗躍する犯罪者ときかされ、ソ連行を承諾した。モスクワ・シュレメチェボ空港で出迎えたイワノフは、あなたはとてつもなく危険なことに足を踏み込もうとしている、東京へ帰れと脅迫してきた。異国の言葉もわからぬ土地で一人の日本人を探し出すことに重い絶望と行き場のない恐怖を抱きながら、美代子はモスクワ――レニングラードをむすぶ〔赤い矢号〕の乗客となった……。いよいよ迫りくる最後の真実とは!?》
《この小説の取材のため、ひとりでレニンングラードからモスクワの夜汽車に乗ったことがひどく印象的だった。独立心のつよい一人の女が、死んだ恋人への思慕と謎に憑かれながら、異国を彷徨よう。そんなヒロインを描き出すためにも、ぜひ、ひとりでロシアヘ行ってみたかった。それも二月の、厳寒のロシアヘ。》
小林久三『零の戒厳令』角川文庫・1983年
《心臓外科では世界のトップレベルを誇る、東西医大助教授・柿沢は、屈強な男たちによって拉致された。
地下室に監禁された後、目隠しされ、車や船を乗りつぎ福岡と思われる病院に連行される――ここで、大人の男の手術を命令された。手術室には大変な緊張感が漂い、10人をこえる医師が柿沢の指示にしたがって動いた。だが、患者は死んだ。死が確定したとき、手術室にたちこめた狼狽と衝撃は、あまりにも異常だった――患者の顔を思いうかべた柿沢は、思わず声をあげた。写真やテレビでよく見かけるR国首相に酷似しているのだ……。
著者会心の国際サスペンス・ミステリーの傑作長編。》
フローベール『ボヴァリー夫人』新潮文庫・1965年
《田舎医者ボヴァリーの美しい妻エマが、凡庸な夫との単調な生活に死ぬほど退屈し、生れつきの恋を恋する空想癖から、情熱にかられて虚栄と不倫を重ね、ついに身を滅ぼすにいたる悲劇。厳正な客観描写をもって分析表現しリアリズム文学の旗印となった名作である。本書が風俗壊乱のかどで起訴され、法廷に立った作者が「ボヴァリー夫人は私だ」と言ったのは、あまりにも有名である。》
T・E・ロレンス『砂漠の反乱―アラビアのロレンス自伝』角川文庫・1966年
《第一次大戦の頃、
独立運動の熱風吹くアラビアに投じられたイギリス人ロレンス中尉。
やがて彼は、対トルコゲリラ戦のなかで、遊牧民族の無冠の王となっていく。
砂漠の民に賭けたひとりの男の、
壮大な革命と栄光の叙事詩。》
佐野洋『同名異人の四人が死んだ』講談社文庫・1978年
《流行作家、名原信一郎の中篇小説「囁く達磨」に登場する作中人物と同名の男が変死した。最初は単なる偶然の一致と思われた事件も、同名の変死者が4人にもおよび、犯罪性をおびてくる。名原の小説を真似した殺人鬼の理由なき犯行か?4人の変死者と名原をつなぐ接点が見い出せないままに、事件は謎を深める……》
バンジャマン・ペレ『サン=ジェルマン大通り一二五番地で』風濤社・2013年
《ブルトンと並ぶシュルレアリスムの理念の体現者
本邦初! 待望の翻訳、ペレ短篇集──
シュルレアリスムの自動記述の大いなる成果──天衣無縫・奇想天外・支離滅裂、ぶっとんだストーリー! 意味など、辻褄など存在しない。ただ、ペレによって書かれたテクストがあるのみだ! 読めばよむほど中毒になる、極上の乾いたユーモア11篇。
「私はペレをあまりに近くから語る、30年間いつの日も私の人生を美しくしてくれた光を語るかのように」(アンドレ・ブルトン『黒いユーモア選集』より)》
収録作品=サン=ジェルマン大通り一二五番地で/死者か生者か/幽霊たちの楽園にて/興味あふれる人生/一ドルの不幸/ピュルシェリは車がほしい/死刑囚最後の夜/むかしむかしあるところにひとりのブーランジェールがいました…/旅館「空飛ぶお尻」亭/取っ組み合って/第九番の病
眉村卓『自殺卵』出版芸術社・2013年
《作家生活50周年を迎えた著者が描く、8つの異世界譚!
「われわれの贈り物で、死んで下さい。人間はもう充分生き過ぎました。」……
年金生活者で独り暮らしの主人公の自宅に、そんな異様な手紙が届けられた。
世界中で、差出人不明の卵型の自殺器と手紙がばらまかれる。
徐々に人口が減り始め、〈死〉が日常になる…終末SFの傑作「自殺卵」
ほか書き下ろし「退院前」、「とりこ」の2作を収録した全8編!》
収録作品=豪邸の住人/アシュラ/月光よ/自殺卵/ペケ投げ/佐藤一郎と時間/退院後/とりこ
ジョルジュ・ペレック『物の時代 小さなバイク』文遊社・2013年(ルノドー賞)
《パリ、1960年代--。物への欲望に取り憑かれた若いカップルの幸福への憧憬と失望を描いた長篇第一作『物の時代』。奇才ジョルジュ・ペレックによる最初の長篇である本作は、ルノドー賞を受賞した。1966年に発表した、徴兵拒否をファルスとして描いた第二作『営庭の奥にあるクロムメッキのハンドルの小さなバイクって何?』を併録。
書容設計 羽良多平吉 》
豊田有恒『禁断のメルヘン』角川文庫・1974年
《俺は21世紀の警官。社会に悪影響をおよぽす“メルヘン”を取締るのが役目だ。科学的思考が国民に義務づけられているこの世の中に、非科学的な悪書を密造するやつがいる。徹底的に弾圧すべきだ!
潜水具もなしに亀に乗り、深海の竜宮城で知的生物に歓待される「浦島太郎」。ナンセンスだ! こんな非科学性は、まさに発禁に値する。男女のさわやかなセックスを描いた本こそ良書なのだ。ビバ!!セックス……。
痛烈に現代風俗を風刺する著者一流のユーモア。ユニークな傑作短編集。》
収録作品=月の神話/異次元の犬/地震よ、さらば/ハイファイ・パトロール/アイウエオのア/クーデカー/ザ・クラフトマン/ザ・サラリーマン/ビバ・ハイジャック/ザ・ガレージマン/さよなら、ベートーベン氏/探す/あゝにっぽん第二帝国/恐竜狩り/月世界ガイド/家元時代/禁断のメルヘン
西村京太郎『消えた巨人軍』徳間文庫・1985年
《巨人ファンの諸氏諸嬢、こういう事件が現実に起り得ないといえるだろうか? 東京から大阪への移動の車中、巨人軍の全員が誘拐された。長島監督はじめ、王、柴田、高田……全員が忽然と消え去ったのだ。
犯人の要求は五億円。屈強な男たちの集団を易々と誘拐した犯人の奸智に立ち向うのは、ご存知私立探偵左文字進。――つねにジャーナリスティックな素材を扱って話題を呼ぶ西村誘拐ミステリーの代表作である。》
鈴木國文『時代が病むということ―無意識の構造と美術』日本評論社・2006年
《20世紀における抽象絵画など多様な『美』、20世紀初頭にフロイトが創始した無意識の理論――2つの探求の不思議な同時性に着目する。》
コナン・ドイル『マラコット海淵』ハヤカワSFシリーズ・1962年
《――われわれはわれとわが目を疑った……見よ、潜水函の窓ごしに、この世のものならぬ、青白い燦光を発してひかるその海底には、古代フェニキアのそれとよく似た壮大な建築物の遺跡が、まるで夢のように、はるかな彼方までつづいていたのだ。いちめんにへばりついた貝類や海草類のあいだから精緻をきわめた彫刻がのぞき、美しいカーヴを描く円柱のつらなりの奥には、謎めいた不思議な薄暗の世界を抱き、ひっそりと静まりかえっている……。
「一万年まえの古代都市だ、これこそ、大西洋の底ふかく沈んだと伝えられるアトランティス大陸の首都の遺跡にちがいない!」
マラコット博士は、興奮に息をはずませて叫んだ。
深海の謎をさぐるべく、潜水函に乗りくんで降下したマラコット博士以下の深海探測隊は、途中、怪物ざりがにの襲撃をうけて、鋼索を断ち切られ、底なしの大海淵に転落した。そして発見したこの古代都市なのだが……すでに潜水函内の空気は汚濁し、三人の生命はいま時とともに絶えようとしていた……。
☆
近代推理小説の確立者ドイルが、その博学と空想力のすべてを注ぎこんで書いたSFクラシック。『ロスト・ワールド』と共にドイルの二大SF名作のひとつである。》
松本清張『馬を売る女』文春文庫・1981年
《大都会の盲点・高速道路の非常駐車帯で殺されたのは競馬情報をサイドビジネスとするOLだった。彼女は秘書という立場を利用して馬主の社長のもとに集る情報を巧みに商売にしていたのだった。女の金を狙う男の完全犯罪は成功したかに見えたが……。現代風俗を描く表題作他「式場の微笑」「駆ける男」「山峡の湯村」解説・大手眞丕》
馬を売る女 - Wikipedia
アンドリュウ・ガーヴ『遠い砂』ハヤカワ文庫・1980年
《漂流するヨットの錨に引きずられて死んでいた双生児の姉は、財産めあての詐欺師としか思えなかった。事故に見せかけて富豪の夫を殺し、自らも死んでしまったのだ。青年外交官ジェームズは愕然とした――とすれば、自分が結婚した、容姿も性格もそっくり同じ妹のキャロルもまた、醜い欲望を秘めた女山師でないと誰がいえるのか? ジェームズの胸に新妻への疑惑が湧き起ってきた。姉夫妻はなぜ死んだのか? 事件と妻キャロルとの関係は? サスペンス派の驍将ガーヴが荒涼たる砂洲と渦巻く潮流を舞台に展開する第一級のサスペンス・ドラマ!》
岡田温司『半透明の美学』岩波書店・2010年
《半透明――透明でも不透明でもなく,白でも黒でもなく,なんとも曖昧な妖しい世界.しかし,そのどっちつかずの両義性にこそ,従来の窮屈な芸術観を乗りこえる豊かな可能性が潜んでいるとしたら? アリストテレス,聖書,ダンテ,ドゥルーズらの言葉と数々の芸術作品との交差点から,知られざる「半透明の美学」が姿を現す.》
森村誠一『腐蝕の構造』角川文庫・1974年(日本推理作家協会賞)
《“ラーメンから原子力まで”を旗じるしに、利権をあさり醜く太っていく巨大商社。そこには、政治資金と利権のコネを求め、互いに接近をはかる政治家と財界人の“癒着”がある。
“生か死か”の危機にも通ずるウラン濃縮化の新しい実験に成功した少壮の科学者が行方不明! 企業のうすぎたない利益の追及の裏には、狙った獲物を必ず“悪の底”に引きずりこむ甘い罠が……。
弱肉強食の非情な世界を描いた著者会心の傑作長編推理。推理作家協会賞受賞作。》
腐蝕の構造 - Wikipedia
フレデリック・フォーサイス『帝王』角川文庫・1984年
《灼熱の太陽が照りつけるモーリシャスの沖、そいつは緑色の海水の壁を破って飛びだした。500kgを超える伝説のブルーマルリン、“帝王”がフックにかかったのだ! 渾身の力を込めて巻きとられるリール、必死の逃走を試みる巨魚…8時間に及ぶ凄絶なファイトの果てに、“帝王”を釣った男に訪れた劇的な運命の転換とは――?
冒険、復讐、コンゲーム…短編の名手としても定評ある著者が“男の世界”を描き、小説の醍醐味を満喫させる、魅力の傑作集。表題作ほか7編収録。》
収録作品=よく喋る死体/アイルランドに蛇はいない/厄日/免責特権/完全なる死/悪魔の囁き/ダブリンの銃声/帝王
城山三郎『小説日本銀行』角川文庫・1971年
《エリート集団、日本銀行の中でも出世コースの秘書室の津上は、インフレの中でバカと言われながら父の遺産を定期預金する。厳しい不況で一家は貧困のどん底に…。保身と出世のことしか考えない日銀マンの虚々実々の中で、先輩の失脚を見ながら、金融政策を真剣に考える“義通”な津上は、懸賞論文に応募し、あえて困難な道を選んだ。》
小林信彦『合言葉はオヨヨ』角川文庫・1974年
《(罠だな)、ジャパンテレビ・プロデューサー細井忠邦は感じた。
テレビロケの帰りに立ち寄った香港の、一ホテル。彼以外だれもはいれるはずがない部屋のドアに内側から掛けられたチェーンロックをこわすと、室内のバスルームには、スリップ一つの若い女が、血の海の中にうずくまるようにして死んでいた。
事件の意外な発展の中に明かされる香港やくざ〈三元会〉の麻薬取引き、それを操るオヨヨ大統領の策謀。
香港、マカオ、南支那海から神戸、横浜へ…、二隻の密輸船を追って、細井、悪のり癖の推理作家安田、殺し屋きのうのジョー、「毛沢東語録」信奉者楊警部補らの旅は始まった……。
日本のさい果て網走での、大統領との華麗な対決を描くラストまで、息もつかせぬ面白さで展開される大冒険ロマン! 〈オヨヨ大統領シリーズ〉第6作。》
天藤真『大誘拐』角川文庫・1980年(日本推理作家協会賞)
《「身代金は百億円だ。念をおすと1の後に0が十個つく。そして事件の進行は、すべてテレビで生中継せよ!」
スゴい要求が犯人から出された。普通の人間では、とても被害者にはなれない。それもそのはずだ。さらわれたのは、持ち山だけで全大阪府の二倍以上もある、紀州在住の超大富豪のおばあさん。
このウルトラ誘拐事件に一番あわてたのは中継担当のローカルテレビ局だ。全国中継の番組は開局以来初めてと、局内あげての大はりきりぶり。
犯罪史上前代未聞のユニークさを誇るこの事件は、一歩一歩と成功へ近づいていくが……。第32回日本推理作家協会賞受賞の傑作長編推理。》
畑正憲『ムツ・ゴーロの怪事件』角川文庫・1975年
《州又原野に陰栖する超能力の持ち主、ムツ・ゴーロなる大人物を探して、かの有名な怪盗蘭麻の一人娘蘭麻が突如、荒野に現われた――下町と女を愛した大文豪永井南風の褌が記念館から盗まれ、同時に莫大な印税も消え去ったという。次々と起こる難問題、怪事件を秘術を用いて解決するうちに、いつしか蘭麻のお腹の中には……!? ムツゴロウの抱腹絶倒、痛快なSF傑作長編。》
北杜夫『奇病連盟』新潮文庫・1974年
《歩き始めると4歩目ごとに、ピョコリピョコリとのびあがる奇癖の主・ピョコリ氏こと山高武平。 37歳にもなって独身、うるさく古風な母親と二人暮しのさえないサラリーマンの彼が「奇病連盟」にスカウトされた。次々と彼を襲う奇妙きてれつな体験と遅すぎるロマンスを、著者独特のユーモアいっぱいに描く。読者はモタモタした武平を笑う、と同時に、なぜか共感と愛着をも禁じえない。》
星新一『殿さまの日』新潮文庫・1983年
《ああ、殿さまなんかにはなりたくない。誤解によって義賊になった。泣く子も黙る隠密様のお通りだい。どんなかたきの首でも調達します。お犬さまが吠えればお金が儲かる。医は仁術、毒とハサミは使いよう。
時は江戸、そして世界に類なき封建制度。定められた階級の中で生きた殿さまから庶民までの、命を賭けた生活の知恵の数々――新鮮な眼で綴る、異色時代小説12編を収録。》
収録作品=殿さまの日/ねずみ小僧次郎吉/江戸から来た男/薬草の栽培法/元禄お犬さわぎ/ああ吉良家の忠臣/かたきの首/厄よけ吉兵衛/島からの三人/道中すごろく/藩医三代記/紙の城
小林信彦『悪魔の下回り』新潮文庫・1984年
《失業、妻の駆け落ち、サラ金と最悪の札を引いた中年男が、マイナー悪魔と若返りの契約をむすんだが……。歌謡界、文壇における「賞」のイヴェント化とそれを取り巻く人々のすさまじい駆け引き。作品=生産が、受賞=流通に追い越されたために起るスキャンダルの数々。現代の腐敗の構造を巧妙な仕掛けを駆使して浮き彫りにし、二重底、三重底の諷刺で笑いとばすシュールな変身譚。》
ダナ・アーノルド『美術史』岩波書店・2006年
《巨匠の傑作や様式中心の考え方を批判し,美術を社会や文化,人間との関わりの中で捉えかえす現代の美術史学は,何をテーマとし,どんな議論を行なっているのか.イースター島の巨像からモネの絵画,前衛芸術,さらにはビデオゲームのキャラクターまで,多様な視覚的素材を用いながら,美術について考えるさまざまな視点や方法を解説.》
福家崇洋『日本ファシズム論争―大戦前夜の思想家たち』河出ブックス・2012年
《1920年代、その後の歴史を変える思想「ファシズム」が日本に伝えられた。この思想を、当時の思想家たちはどう受け入れ、また変容させてきたのか。大戦前夜に起きた、彼らの闘争を追う。》
ゲルノート・ベーメ『感覚学としての美学』勁草書房・2005年
《美学を再び感覚的認識の理論へと回帰させる力強い思索。私たちは、判断ではなく、現在の経験をどのように捉えたらよいのか。
本書は、20世紀後半の身体の再発見、感性の復権、芸術概念の拡大等の動向に影響を受け、美学をその本来の語源に遡った「感覚的認識の理論」として再興しようとするものである。伝統的美学の芸術作品への跼蹐を批判し、デザイン、自然等へ拡張する認識の課題を正面から扱う。》
おかゆまさき『撲殺天使ドクロちゃん』電撃文庫・2003年
《ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ~♪
謎の擬音と共に、草壁桜くん(中学二年)の家に突然やってきた一人の天使。その娘の名前は、撲殺天使ドクロちゃん!?
いつのまにか桜くんちに居候しはじめたドクロちゃんは、桜くんを(いろんな意味で)誘惑しはじめて……!!
「電撃hp」誌上では、予想外の大人気! 編集部も困惑した話題の作品、ついに文庫デビュー!》
高橋弥七郎『灼眼のシャナ』電撃文庫・2002年
《新学期が始まったばかりの高校生・坂井悠二は、いつものように“日常”を生活していた。だが、彼はある日突然、“非日常”に襲われる。人の存在を灯に変え、その灯を吸い取る謎の男、フリアグネに襲われたのだ。
悠二の“日常”生活は壊れた。しかし同時に、彼の前に一人の少女が現れた。少女はフリアグネから悠二を護るため、悠二のそばで生活を始める。悠二は感謝を込めて御礼を言うが、少女はこう呟く。「おまえは、もう『存在していない』のよ」自分はすでに死んでいる!? 存在亡き者、悠二が考え、思うこととは…!?奇才・高橋弥七郎が贈る、奇妙な学園ストーリー。》
柄谷行人・蓮實重彦『柄谷行人蓮實重彦全対話』講談社文芸文庫・2013年
《予定調和なき言葉の世界へ
今なお世界へ向けて発信しつづける批評家・思想家が、1977年から約20年にわたって繰りひろげ、時に物議を醸したすべての対話を収録した、一時代の記録。文学、批評、映画、現代思想から言語、物語、歴史まで、ふたりの知性が縦横無尽に語り合う。
匿名性に守られたネット社会とは対極をなす、“諸刃の剣”の言論空間がここにある。
1977年から約20年にわたって行われた日本を代表する知性による全対話であり、今なお世界に発信し続ける二人の原点。完全保存版。
※本書は、『ダイアローグ』(1979年6月、冬樹社刊)、『ダイアローグ3』(1987年1月、第三文明社刊)、『闘争のエチカ』(1994年2月刊、河出文庫)、『群像』(1995年1月号)を底本といたしました。》
古井由吉『漱石の漢詩を読む』岩波書店・2008年
《漱石の漢詩は,日本近代文学の比類ない独立峰であり,漱石文学の本質がここに結晶している──個々の詩を読み解きながら,この言葉の真意をあかしていく.日本語の文体創出に腐心した二人の作家による,1世紀を隔てた対話.漢詩のもつ定型の力と絵画的な象徴表現とが,今日の日本語の衰弱を鮮やかに照らし出す.》
サルヴァドール・ダリ『ダリはダリだ』未知谷・2011年
《エキセントリックなトリックスター
ダリの素顔――画家以上の作家・批評家ダリ!
絵やスキャンダルに幻惑された我々はダリの内奥に迫れているのだろうか?
柔らかい時計の謎を解くならば――ダリが言う、ダリが書く言葉に傾聴せよ!
「絵画とは私の思考の氷山のうちの目に見える側面なのだ」
偏執的にトートロジックに、パラノイア的=批判的方法のマジックに取り込まれつつも見えてくる、ダリ的思考。
1927~78年の雑誌寄稿文、詩、講演、宣言文、未刊行テキストに現れる、挑発的なダリ、美術史に真摯なダリ、郷土愛のダリ。ダリ、ダリ、ダリ、全てがダリ84篇。
「見る」ダリから「読む」ダリへ、意欲的試み。
「ダリは、つぎつぎと湧き出て膨張し続ける妄想的インスピレーションを投げ出さず、それらをさらに二元論的に拡大するべく文章にした。そして初めて、インスピレーションのダリ化という独自の方法を見つけたことが判明する。画家以上に作家・批評家の資質をもって頭角を現し、次第に作家として成長し巨大化していくさまが手に取るように分かる」(「訳者解説・あとがき」より)》
E・ユンガー『ヘリオーポリス(上)』国書刊行会・1985年
《暴力と死のエロティシズムが舞い、野蛮と美学が結婚し、冷酷とキッチュが同居した文体を駆使する巨匠ユンガーの長編未来小説。架空の国ヘリオーポリスで主人公は「毒物研究所」破壊の命をうけるが…》
(函欠)
E・ユンガー『ヘリオーポリス(下)』国書刊行会・1986年
《暴力と死のエロティシズムが舞い、野蛮と美学が結婚し、冷酷とキッチュが同居した文体を駆使する巨匠ユンガーの長編未来小説。架空の国ヘリオーポリスで主人公は「毒物研究所」破壊の命をうけるが…》
(函欠)
ジョルジョ・アガンベン『スタンツェ―西洋文化における言葉とイメージ』ちくま学芸文庫・2008年
《見えない表象の変遷をたどる
西洋文化の豊饒なイメージの宝庫を自在に横切り、愛・言葉そして喪失の想像力が表象に与えた役割をたどる。21世紀を牽引する哲学者の博覧強記。
たとえば「メランコリー」。フロイトやラカンら近代の精神分析学により「対象」と「所有」の病理とされ研究対象となったこの病は、中世の修道士の無気力に発し、「狂気」「欲望」「並外れた詩人」という極端な矛盾を孕む黒胆汁の気質と考えられ、デューラーの作品に結晶する。中世の物語や恋愛詩、エンブレムや玩具、ダンディズムや精神分析、それらは言葉とイメージがつむぎ出した想像と忘却の変遷の保管庫=「スタンツェ」である。西洋文明における豊饒なイメージの宝庫を自在に横切り、欲望・感情・言葉のみならず欠乏・喪失が表象に与えてきた役割をたどる。21世紀を牽引する哲学者の博覧強記。》
矢野徹・高橋敏也『多元宇宙バトル・フィールド』ハヤカワ文庫・1990年
《何者かの意志によって異なる次元を転々と飛ばされていくテッド・アマノ。いつものように、突如、太平洋戦争のさなかの昭和19年に飛ばされたアマノは、四国の善通寺師団に設けられた特設語学研修室に参加していた。美人教師ナンシイの問いかけに持ち前の英語力で受け応えて優秀な成績をおさめ、さらに上海への密使の役目を負ったアマノだが、その最中にも何度か転移を続け、そしていくどとなく命を狙われた……戦時中の日本、中国、さらに未来と多元宇宙を戦場として闘いを繰り広げていくテッド・アマノの活躍を描く「悪夢の戦場」待望の第2弾。》
火浦功『お前が悪い!』角川文庫・1985年
《ヨウするに、安くて優秀な超々LSIが100円ライターにも入ってる時代です。
パソ・コンなんて昔の話。今はもうパーソナル・ロボット、パソ・ロボの時代なんです。
そんなコンピューター・ワールドをオート・フォーカスでポラロイドしちゃうんだからサイコー。
SF界のコンパクト・ディスク=火浦功が、パソ・ロボ・エイジをランダム・アクセスしてみました。
プログラムは16曲。「ドレにしよーかな?」的気分でセレクトできるところがグッドです。
センスがいい。シャレている。 もちろん、どの作品も面白い。だから、どこからでも、ど-ぞ。
〈解説 岬兄悟〉》
酒井健『「魂」の思想史―近代の異端者とともに』筑摩選書・2013年
《ゴッホやニーチェ、岡本太郎、
三島由紀夫など、思索者を
魅了してきた「魂」の現れに迫る
合理主義や功利主義に彩られた近代。時代の趨勢に反し、魂の声に魅き込まれた人々がいる。彼らの思索の跡は我々に何を語るのか。生の息吹に溢れる異色の思想史。
「魂」の思想史 ─近代の異端者とともに
合理主義と功利主義を基調とする近代。ゴッホ、ニーチェ、ボードレールから岡本太郎、三島由紀夫まで―、彼らは時代の趨勢に齟齬を覚えつつ、魂の声に引き寄せられ、思策と表現を行った。曖昧で無限定な概念でありながら、人々を揺り動かしてきた「魂」とはいったい何か。人間の内部と外部を通わせるその働きに、著者は現代人が見失ってしまったものを看取する。近代の異端者を通して生の息吹に触れる異色の思想史。》
親鸞『歎異抄・教行信証Ⅰ』中公クラシックス・2003年
《それまで浄土教に宿命的に負わされていた死後の宗教というイメージを脱皮して、この現世を生き抜く宗教に蘇生させた親鸞。その二つの代表的著作が、分かりやすい現代語訳で読める。》
親鸞『歎異抄・教行信証Ⅱ』中公クラシックス・2003年
《阿弥陀如来の救済力は有限なのか無限なのか。人間の根元悪は、阿弥陀如来への信によってはたしてのり越えられるのか、のり越えられないのか。この問いと格闘した親鸞、思索の結晶。》
桑島秀樹『崇高の美学』講談社選書メチエ・2008年
《カントからヒロシマまで 人間を考え直す強靭な思考
「崇高」とは何か?18世紀にアイルランド人思想家エドマンド・バークによって静態的な「美」に対置する美的カテゴリーとして規定され、カントによって哲学的に厳密な概念として確立された「崇高」という概念は、ヒロシマの惨劇に象徴される、テクノロジー社会と人間という現代の大きな問題を考え直す思考として生まれ変わる。「なんの変哲もない石ころ」への凝視から始まる、美学の新たな可能性。》
横溝正史『女王蜂』角川文庫・1973年
《類まれな絶世の美女、大道寺智子が亡き母の遺言により、月琴島から東京にいる父のもとにひきとられた18歳の誕生日以来、智子を目あてに現われる男達が次々と殺される! 開かずの間に秘められた20年前の恋と嫉妬は悲惨な結末をみた。読みごたえ充分、抜群に面白い横溝正史の傑作長篇!》
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