『俳コレ』刊行や紀伊国屋のフェアに合わせて、一昨年刊行の『新撰21』もひさびさの増刷が決まったらしいのだが、そこに一緒に収録されていた沖縄の豊里友行は写真家でもある。
大分前に写真集2点、『東京ベクトル』(発行:沖縄書房/発売:榕樹書林)『彫刻家 金城実の世界』(沖縄書房)を送っていただいてあったのだが、震災に取り紛れてここに上げないままになっていた。
写真家としてはもともと日本写真芸術専門学校の報道写真ゼミ出身であるらしく、東京の風景を撮った『東京ベクトル』も人々の姿が中心である。
駅の群衆や店のおばちゃん、ホームレス、祭に集まる人々なども良いが、子供たちの遊ぶ写真が特に良い。
モノクロで庶民生活が撮られているので、一見桑原甲子雄や長野重一の時代の都市写真を見ているようだが、著者は私より年下であって、そんな昔の写真のわけがない。現在の東京からも写真でもって、ある詩情を引き出すことが出来るということである。
ただ庶民の生きる場としての東京を撮るという素材選択の時点で、画面が発する詩情の方向がかなり決まってきてしまう(キャプションがそれに輪をかける)。
子供の写真が特に良いというのは、そうした撮影者側の狙いをはみ出す生気が画面に介入しやすいからだろう。
『彫刻家 金城実の世界』は沖縄戦の群像を作る彫刻家に密着した写真集で、写真家本人の制作風景と、レリーフに刻み込まれた惨憺たる現代史絵巻の写真両方から成る。
思いを訴えようとする素材のヘビーさが立ちふさがる感じの写真集で、こちらも高校生たちが集団で制作に参加しているカットで一息つくこととなった。
どちらの写真集もウェブ上でかなりの枚数が公開されているので、そちらをご覧ください。
『東京ベクトル』
『彫刻家 金城実の世界』
*****************************************************
坂本龍一 - Adelie Penguins
コメントを投稿
コメントは記事の投稿者が承認してから表示されます。
アカウント情報
(名前は必須です。メールアドレスは公開されません。)
ご紹介いただき感謝です!!
投稿情報: 豊里友行 | 2012年6 月16日 (土) 10:32