2011年
ふらんす堂
野口明子は「街」を経て「麟」の創刊同人。
『青黛』はその第1句集で、序・山下知津子、栞・中嶋鬼谷。
著者の生活史的なところやそこから発する趣味嗜好は《父祖の地の東京が好き初芝居》という句からおおよそおおよそ察せられる(この句自体は必ずしも句集を代表するものではないが)。
東京から抒情をすくい取った句のほか、海外詠や、大型魚を料理している句なども多い。
都市生活詠も《入力の指にてつまむ雛あられ》《文字小さき会議資料や桜草》《経費精算オフィスの釣瓶落しかな》など、あざとさのない自然で洒脱な詠み方。
素材は探すものではなく、日々の暮らしがそのまま句というスタンスなのだろう。神経質でもなく荒々しくもなく、ほとんど実直ともいえる作り方がそのまま清新さに通じている。
雪催夜のコンビニ混み合へる
雪催浜焼の烏賊キュウと鳴く
たらば蟹捌く荒波めく刃毀れ
天道虫翔つ縄文の柱穴
誰も見てゐない満月渋谷駅
ジュサブロー人形緋縮緬冷えて
房飾ひとつづつ失せ雛道具
日傘閉づ馬を驚かさぬやうに
小骨立つ身よりも白き鱧の胆
寒桜細き枝より咲きはじむ
するすると桃剥けて鬱深まりぬ
さくらの夜ゴルゴンゾーラ薄切りに
混んでゐて静かな夏のベンチかな
押隈の青黛滲む夜の秋
柿食うて四つは浮かぶ星座の名
指細くして飾りゆく雛調度
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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