花守や馬の瞳に映る椅子 佐々木秀昭
言葉ありき象が食卓にゐても良い
またひとつ椿に咲いてくれました 笹田かなえ
花冷えの庭にきている後鳥羽院
はまなすが食べてしまいし異国船 伊藤利恵
回廊に脂の溜る蓮如の忌 谷口慎也
花氷死して手あしの開き方
母さんは曲がりくねった雨になる 鍬塚聰子
マヌカンはみな笑いかけ 雁帰る しいば るみ
ジャコメッティに削られてゐる春の夢 西 苓子
抽選で軍艦当たる宵の春 羽村美和子
皮蛋(ピータン)という中国語が歩いてくる 吉田健治
迷宮に入りたるのちの雁擬き 植原安治
北斎の動体視力卯波来る 小倉斑女
以下は川柳。
奈落ではわたしの下駄が姦しい 情野千里
合歓の花回転木馬にもまつ毛 和泉幸次郎
谷口慎也による連載「俳句初学」は6回目で今回は「「読み」ということ」で、いわゆる難解句について。
《……ましてや価値観の異常に多様化した現在、自分のそれを固定化して俳句を読めるはずもないわけです。あくまでその価値観に固執しようとすれば、この豊かな表現の世界を自ら閉じてしまう愚行を犯してしまうことになります。ではそうならない為にはどうするか。(中略)……少なくともその作品がどういう方法論を基にして書かれているのか、先ずはそれを確認してから、その作品に沿った鑑賞をしてみることが大切ではないかと思うのです。》
これは「俳句界」の7月号が難解俳句特集で、私も似た方向のことを書いたばかりだった。
最近のコメント