8月も多忙と不調で後半はほぼ何も読めず。古本市等の積読本がなかなか消化できない。気付け代わりに眉村卓(角川文庫版は装幀木村光佑)ばかり再読している。モラヴィア『1934年』(装幀ヴィエーリ・ヴァニェッティ)がちょっと鈴木清順監督『陽炎座』のような出だしで面白かった。
『美しい日本語 荷風Ⅲ 心の自由をまもる言葉』は編著者から恵贈を受けました。記して感謝します。
眉村卓『おしゃべり迷路』角川文庫・1981年
《さぁさぁ今から始まりまするのは、愉快・痛快・奇々怪々。変で不思議でケッタイな話。
イジキタナク食べる話
ウサンクサイとはどういう意味?
ロマンチックな徹夜のお話
ひとつの話が始まれば、あっちへ翔んだり、こっちへ跳ねたり、どこで終わるか予想もできない……。どう転んでも、貴重で乏しいあなたの読書時間を楽しませずにはおかない!
さあ、あなたもクマゴローこと眉村卓の、真面目で不真面目な、そして知的センス溢れるおしゃべりに耳を傾けてみましょう。》
喜多嶋隆『バトン・ガールは、もう泣かない』角川文庫・1986年
《L・Aはリトルトーキョーに育った日系の女の子、石崎真夏・16歳。バトン・チームの花形として鳴らした技は、その名も必殺“稲妻スピン”。太平洋第七艦隊へ入隊させられた恋人ヘンリーを追って、はるばる来ました横浜へ、さかまく波をのりこえて。
だが、転校先の港の見える丘高校のバトン部には、謎の美少女・里沙とその一団が真夏の行平を拒まんとしていた。さらには都会派少年岡本君、超軟弱少年スブタ君、サンダース軍曹、ツッパリ暴走族、海尉飯店の王さんなどが入り乱れて登場、街は大混戦の観を呈するのだった。
個人選手権をめざして、ロス仕込みのバトンがうなる。横浜を見舞う熱い台風、真夏の本当の夏がいま始まる。抱腹と落涙、そして感動の青春コメディー小説、書下しで堂々登場。》
舟崎克彦『ぽっぺん先生の日曜日』角川文庫・1979年
《“ぽっぺん先生”というちょっとかわったあだ名の生物学の助教授は、三十八歳、独身。トレードマークは、黒いべっこう縁の時代おくれのまるいメガネ。桃色ペリカン、電話ウサギ、サルクイワシなど奇妙な動物たちが登場する「なぞなぞのほん」に入りこんでしまって、なぞ解きをしなければ無事に本から出られない。――先生がでくわした、あるおかしな日曜日のできごとをユーモアとナンセンスで描く、好評「ぽっぺん先生」シリーズ第一作。》
藤原新也『なにも願わない手を合わせる』文春文庫・2006年
《肉親が他界するたびに四国巡りをする。そんな著者が壮絶な兄の最期に立ち会い、波立つ心を抱えて訪れた三度目の四国への旅は……。薬王寺の境内に立つ地蔵菩薩に兄の顔が重なり、三十六番札所の青龍寺で祈る幼女の姿に「無心」の境地をみる。愛する者の死をどう受け入れるか、いかに祈るのか。足取りを記した四国巡礼地図付き。》
藤原新也『渋谷』文春文庫・2010年
《「おねがいわたしをさがして」。郷里・福岡で少女の写真展を開くためにモデルを募集した著者は、一枚の応募用紙に目をとめた。自分の存在を肯定できずに、揺らぐ十代の少女たち。その母親たちとのいびつな愛と憎しみ、そして救い……。写真家ならではの視点から描出した「渋谷」に象徴される現代の母娘、戦慄の縮図。》
永井荷風/持田叙子・髙柳克弘編著『美しい日本語 荷風Ⅲ 心の自由をまもる言葉』慶應義塾大学出版会・2020年
《永井荷風の生誕140年、没後60年を記念して、荷風研究の第一人者で作家・持田叙子、気鋭の俳人・髙柳克弘が、荷風の美しい日本語を詩・散文、俳句から選りすぐり、堪能できる全三巻のアンソロジー。
Ⅰ 季節をいとおしむ言葉 季節文学としての荷風。
Ⅱ 人生に口づけする言葉 楽しさを発見する達人荷風。
Ⅲ 心の自由をまもる言葉 いのちを稀有に自由に生きた荷風。》
小関智弘『町工場巡礼の旅』中公文庫・2009年
《働くことと生きることが同義語の人たち―職人として働き続け五十一年。等身大の目線でものづくりの現場を見続けた“粋な旋盤工”小関智弘の現役職人時代最後のルポ。百分の一ミリの誤差も見逃さない、他人のできない仕事に挑み、厳しい状況を生き抜く町工場の知恵と哲学の凄味とは。 〈解説〉森まゆみ》
藤原新也『藤原悪魔』文春文庫・2000年
《マユゲ犬の伝説、アイルランド・シチュー、サイババの足、猫の島探訪、国際オヤジ狩り元年、バモイドオキ神の降臨、ある野良猫の短い生涯について……。バリ島、アイルランド、八重山諸島、房総、震災後の神戸などを歩きまわりつつ、末法の世のただ中で藤原新也の目が捉えた四十二の“時代の風景”を記録した写真文集。》
木村正太郎『出羽の民家採訪』中央書院・1973年
《今回、木村氏がまとめられた「出羽の民家採訪」は、著者の脚と眼と頭を使った責重な研究物で、山形県の民家の発達を、あるいは文献の上から明らかにせられ、または地理的な視野から研究を進められたものであるが、原型に復原されて、その発展の跡をたどられたところに、特色があるように思われる。志のある方がたに愛読されるであろうことを、切に希望する次第である。(序文より) 山形大学名誉教授 長井政太郎》
赤江瀑『光堂』徳間文庫・1996年
《二十数年ぶりの新宿。五藤涼介は、そこで三千社文彦監督の幻の傑作と言われる映画『火雨』の上映会に出くわす。涼介は、かつてふとした出会いから三千社のアパートに引越した。一台のオート三輪で。車は東京の街なかを走っているのに、深い森の奥の径を、奥へ奥へと分け入って行くように見えた。異様な蔦や葛におおわれ、奇怪な巨木が蔓草がしげる――そう。あのオート三輪が、僕を妖怪の棲む森へ運んで行った。》
収録作品=美酒の満月/逢魔が時の犀/燁燁庭の幻術/青毛/雛の夜あらし/夜市/光堂/艶かしい坂/青き鬼恋うる山
J・M・シング『アラン島』みすず書房・2005年
《「僕はアランモアにいる。暖炉にくべた泥炭の火にあたりながら、僕の部屋の階下にあるちっぽけなパブからたちのぼってくるゲール語のざわめきに、耳を澄ませているところだ」
19世紀末、文学の道を志しながらも、パリでさえない日々を送っていたJ.M.シング。友人イエィツにすすめられ、アイルランド辺境のアラン諸島に渡ったシング青年は、おじいたちから島にのこる数々の伝承を聞き、酒場や民家の炉端で島人とのつきあいを深め、またあるときは荒海に乗り出した島カヌー(カラッハ)で漕ぎ手たちと生死をともにする。
苛酷な自然の中で独自の文化を育み、たくましく生きる島人たち。その暮らしぶりを誠実に記録した紀行文学の傑作を、気鋭のアイルランド文学者によるみずみずしい新訳でお届けする。》
J・M・G・ル・クレジオ『オニチャ』新潮社・1993年
《海を渡り、まだ見ぬ父の住むアフリカのオニチャに降り立った十二歳の少年世界の果て、すべてを呑み込む地で彼がみたものは―。記憶のなかの甘美な宇宙に息を吹き込んだ自伝的長編。》(「BOOK」データベースより)
粟津則雄『音楽の魔』音楽之友社・1976年
《「ヨーロッパと日本」とか、「伝統」とかいう主題が、執拗にくりかえされていることに、今度読み返してみてあらためて気がついた。音楽のよろこびと楽しみを追ってゆくうちに、絶えずこのような主題にぶつかることが、私の文章に或る苦さを与え、時としてひどく痩せさせてしまっているようにも思われたが、これは、私にとっての避けることの出来ぬ道であった。》(「あとがき」より)
小松左京『地球になった男』新潮文庫・1971年
《タイム・パラドックス、破壊精神、パロディ、未来主義、ブラック・ユーモア、あらゆる手法を駆使してくりひろげられるSFの世界、自選作品13編を収める。もしも何でもなりたいと思うものになれたら?『地球になった男』、もしも、洞窟を通って江戸時代の村と行き来ができたら?『御先祖様万歳』、もしも、ミサイル戦争が勃発したら?『コップ一杯の戦争』、もしも……。》
収録作品=地には平和を/コップ一杯の戦争/紙か髪か/日本売ります/痩せがまんの系譜/ご先祖様万歳/オルガ/ぬすまれた味/兇暴な口/地球になった男/蜘蛛の糸/沼/昔の女
山田正紀『延暦十三年のフランケンシュタイン』徳間書店・1988年
《われらはふたりで一人、一人でふたり。われらは民の苦難を救い、また仏道をきわめることもできる。一人が空であれば、もう一人は海、すなわちわれは空海! 独自の手法で神秘の人物像に肉迫する、歴史ゴシックロマン。》(「BOOK」データベースより)
シラー『フィエスコの叛乱』岩波文庫・1953年
《イタリアの独立都市ゼノアにおける共和政治の危機をめぐって、政治の陰謀と叛乱。新旧勢力の対立を描き出したも野心作。》
永田和宏『タンパク質の一生―生命活動の舞台裏』岩波新書・2008年
《細胞という極小宇宙で繰り広げられる生命活動の主役はタンパク質である。それぞれに個性的なタンパク質には、その誕生から死まで、私たちヒトの一生にも似た波乱に富んだ興味深いドラマがある。数々の遺伝病やプリオン病・アルツハイマー病など、タンパク質の異常が引き起こす病気の問題も含め、最先端の科学の現場からレポートする。》
都筑道夫『南部殺し唄』光文社文庫・1990年
《御無沙汰いたしました。滝沢紅子でございます。わたしと友人の春江さん、岩手県の遠野を旅していま盛岡にいるんです。父の用事も兼ねて、物見遊山にやって来たのに、座敷わらしが出るっていう旧家の土蔵で、お婆さんが消えてしまったり、殺人事件が起こったりで、もう大変! でも犯人は私たちが探り当てなくっちゃ…。》
マレイ・ラインスター『メド・シップ 惑星封鎖命令!』ハヤカワ文庫・1985年
《大宇宙へと進出した人類は、今や銀河のすみずみまでその地歩を固め、無数の植民地を築きあげている。だが、思わぬ脅威がその前に立ちはだかった――異様な疾病が、人々の生命を脅かす事態が多発したのである! これに対処すべく星間医療局が設立され、医師がメド・シップに乗りくんで巡回医療の途につくこととなった……そのひとりカルフーンは惑星ランクで怖るべき死病に感染し、そのうえ近隣惑星から隔離される惑星デリーに不時着する羽目におちいってしまった! しかも船外では、船を乗っ取らんと暴徒が刻一刻と迫ってくるが……名作シリーズ好評第二弾!》
福山哲郎・斎藤環『フェイクの時代に隠されていること』太田出版・2018年
《国会において堂々と嘘をつく人がいて、批判されシラを切り、後にそれが嘘だと明らかになってもまた別の嘘をつく、「否認」が際限なくまかりとおったこの四年間とは、まさに歴史上ありえない「フェイクの時代」の日々であった。はたしてその裏で社会では一体何が起こっていたのか。いつしか貧困と差別が固定化し、分断と格差が際限なく広がる世界ができあがっていたのである。そして、にも関わらず、安倍政権の支持率は30%と高い。それは一体なぜなのか。政界一の論客である立憲民主党幹事長・福山哲郎と、この国に暮らす人の精神の変動を診察し続ける精神科医・斎藤環が、未曾有の四年間、この国で本当に起こっていたことのすべてを解き明かす。》
アーサー・C・クラーク『宇宙島へ行く少年』ハヤカワ文庫・1986年
《司会のエルマー・シュミッツが、スポットライトをあびながら叫んだ。「それでは、優勝者をご紹介しましょう。ロイ・マルカムです!」興奮で体がしびれた。え、なぜかって? ぼくの名前だったからさ! それに、このワールド航空主催の航空クイズ番組に優勝したものは、世界中のどこへでも、ただで旅行させてもらえることになっていたからだ。もちろん、はじめから行き先は決めてあった。ぼくの行きたいところはただひとつ――地上500マイルに浮かぶ島、宇宙ステーションだった! 大宇宙にあこがれる少年の夢と冒険を、巨匠クラークが生き生きと描きだした傑作宇宙SF!》
生島治郎『ぎゃんぶるハンター』講談社文庫・1989年
《人生は、ギャンブルだ――三十歳を契機に出版社を辞めた男・辺見真人。ある日、ひょんなことから大金を拾い、美女までが濡れ手で泡のごとくころがりこんだ。自分の博才とツキを信じ、本場マカオのカジノへ……。異様な雰囲気の中で、カジノ始まって以来のバカラの大勝負に挑んだ男のスリルとその成果は!?》
開高健『パニック・裸の王様』新潮文庫・1960年(芥川賞)
《とつじょ大繁殖して野に街にあふれでたネズミの大群がまき起す大恐慌を描く『パニック』。打算と偽善と虚栄に満ちた社会でほとんど圧殺されかかっている幼い生命の救出を描く芥川賞受賞作『裸の王様』。ほかに『巨人と玩具』『流亡記』。工業社会において人間の自律性をすべて咬み砕きつつ進む巨大なメカニズムが内蔵する物理的エネルギーのものすごさを、恐れと驚嘆と感動とで語る。》
収録作品=パニック/巨人と玩具/裸の王様/流亡記
石原慎太郎『太陽の季節』新潮文庫・1957年(芥川賞)
《肉体の肯定と既成価値への不信によって表現される青年のストイシズムを描いた『太陽の季節』の芥川賞受賞は、文壇に大きな波紋を投じ、一般には太陽族の出現を招いた。いわゆる純粋戦後派の自己主張として戦後の文学、社会史に一時期を画した小説であり、新しい情操とモラル、新しい文学の華々しい誕生であった。本書にはほかに処女作『灰色の教室』、『ヨットと少年』など4編を収める。》
収録作品=太陽の季節/灰色の教室/処刑の部屋/ヨットと少年/黒い水
石川達三『蒼氓』新潮文庫・1951年(芥川賞)
《東北出身の貧農の娘を中心に昭和初期のブラジル移住農民の惨苦な姿を捉えた作品で、第一回芥川賞を受賞した著者の出世作である。第一部「蒼氓」は神戸の移民収容所を舞台に全国各地から集まってきた貧農の移民たちの船に乗るまでの八日間の出来事を、第二部「南海航路」は渡航中の船中での四十五日間を、第三部「声無き民」は到着後入植するまでの数日間を描いている。》
アルベルト・モラヴィア『1934年』ハヤカワ文庫・1985年
《それは夏の休暇をすごすべくカプリ島に向う連絡船上でのことだった……彼女の緑色の大きな瞳には絶望があった、私のと同じ深い絶望が。彼女は私を見つめつづけた、私の疑問に答えるように。私たちは視線の対話だけで、出会った瞬間から心が通じた……。「生きるのに絶望しながら、死にたくはない、そんなことが可能だろうか」ナチズムが台頭した暗い時代、〈絶望の固定化〉を考えるイタリア人青年と、ロマンチックな心中を願望するドイツ人の若い人妻との運命的な出会いの結末は? モラヴィア文学の頂点をなす、ミステリアスな傑作恋愛小説!》
眉村卓『午後の楽隊』集英社文庫・1984年
《別に、何の変哲もないネクタイである。しかし、それを締めると人生が突然にバラ色に輝き、幸運ばかりがめぐってくるという。はて、それを買ったものかどうか……。平凡なサラリーマンの夢を描く「特権ネクタイ」ほか、未来社会や宇宙人がにぎやかに登場する笑いと不安のSFショート・ショート傑作選。 解説・影山 勲》
収録作品=知りつくした町/透明妻/図々しい客/空港を出ると…/鍵束の中に…/時間銀行/特権ネクタイ/窓の外/湖岸/伝説的社員/深夜のトラック/からくりとスケッチ/マジメ派/風鈴/駐車場/酔ったらいこう!/家庭設備診断員/むこうの機械/TS用ロボット/評価者/だいじな体/よくあること/社員証/四対三/T市民/移動機/何が?/通告/研究発表/海と月/だれも知らない味/かわいい個人用農園/飛び入り社員/泊めて下さい/やりすぎですなァ/本当の食通/特別訓練中/森山さんのパーティ
眉村卓『六枚の切符』講談社文庫・1984年
《歴史の変更に挑戦するための切符、大富豪になる方法をもたらす切符、変身願望を実現する切符、超能力訓練所行きの切符、異次元世界へ脱出するための時刻表と切符、型破りの発想で転職するための切符――を手にした男たち六人の冒険の意外な結末! 非日常世界の諸相を想像力豊かに描く、野心的連作集。》
収録作品=員数外要員/三十日の夢/変身赴任/超能力訓練記/異様な時刻表/思わぬ居候
眉村卓『ながいながい午睡』三一書房・1969年
《SFは日本でも最近ようやく注目されてきたが、そのなかでも、未来の産業社会をテーマに取り組んだ作品は数少ない。眉村卓という作家は、大学で経済学を専攻し、会社勤めという職歴もあって、こういった題材に強い関心をもっている。だから彼の描く世界は、時には産業エリートの未来像であったり、ロボットで運営される企業であったりする。国民の大多数が勤労者である日本においては、彼の作風はやがて大きく注目されるにちがいない。眉村卓はいろいろな意味で、今後、おおいに期待できる作家である。(は)》
収録作品=名優たち/われら人間家族/父と息子/ランナー/くり返し/廃墟を見ました/世界は生きているの/大当たり/誰か来て/行かないでくれ/ふくれてくる/女ごころ/応接マナー/ムダを消せ!/委託訓練/面接テスト/忠実な社員/黄色い時間/暗示忠誠法/特権/夜中の仕事/のんびりしたい/土星のドライブ/アンドロイド/仕事/旅の終わり/家庭管理士頑張る/自動車強盗/ミス新年コンテスト/物質複製機/獲物/はねられた男/落武者/安物買い/よくある話/なつかしい列車/動機/酔っちゃいなかった/役立たず/晩秋/スーパーマン/雪/終わりがはじまり/怨霊地帯/目前の事実
筒井康隆『将軍が目醒めた時』新潮文庫・1976年
《将軍として精神病院に君臨してきた蘆原老人が長い狂気の眠りから目醒めた時、世界が崩壊した――正気と狂気の渾然とした現実世界のナンセンスを突く表題作。一枚の切符を発端に、懐かしい故郷の駅に降り立った男を次々に襲う悪夢をシュールなタッチで描く『乗越駅の刑罰』。他に『万延元年のラグビー』『ヤマザキ』など、奇想天外なアイディアとブラックユーモアに満ちた全10編。》
収録作品=万延元年のラグビー/ヤマザキ/乗越駅の刑罰/騒音/新宿コンフィデンシャル/カンチョレ族の繁栄/註釈の多い年譜/家/空飛ぶ表具屋/将軍が目醒めた時
眉村卓『月光のさす場所』角川文庫・1985年
《ある日、エリート・サラリーマンの井場の前に、学校時代の落ちこぼれだった級友が経営するアイデア会社が出現した。それは正規の教育体系にもとづかない“裏学校”出身者ばかりで構成され、実に自由で活発な創意と行動力にあふれていた。井場の心は揺れ動いた……。
人間にとって理想の社会とは? 未来社会に問題を投げかける社会SF他、秀作SF全6編。》
収録作品=鳳凰傘下/月光のさす場所/暁の前/オーディション/霧に還る/剥落の冬
眉村卓『出たとこまかせON AIR』角川文庫・1979年
《さあさあ皆さん始まりだよ!
ぶっつけ本番、出たとこまかせ!
ワルのり、気まぐれ、苦しまぎれ!
突飛で変てこりんで愉快なお話!
――そばつゆ甘いかしょっぱいか?
――過去は何色? そして未来は?
――金言、格言をウラから見れば?
SF的発想と、ユニークな知識が満載されたこの一冊で、あなたは楽しみながらインテリジェンスを磨くことができる。さあこの「出たとこまかせON AIR」に、ピタリとチャンネルを合わせてみましょう。》
眉村卓『強いられた変身』角川文庫・1988年
《人間は自分が認識できる世界で思考をめぐらし行動する。しかし、突然そこに、まったく認識や理解を超えた非日常が出現したらどうなるのであろうか? 急激な価値観の変化に対応できるであろうか? 刻々と迫り来る“変身”へと貴方を導く――。
狂いはじめるさまざまな認識を見事に描く眉村SF、殊玉のオリジナル短編集7編。》
収録作品=長い夢/気楽なところ/セリョーナ/古い録感/代ってくれ/真面目(まじめ)族/オレンジの旗
おまけ
筒井康隆『将軍が目醒めた時』新潮文庫・1976年の装幀下川勝の版(本文中に上がっている版は装幀辰巳四郎)。
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