「香天」(編集発行:岡田耕治)2014年5,6月号から。春雪の匂いの残る鞄かな 岡田耕治自らに触れて揺れたる糸桜ポリバケツまっすぐ往けば春の海 久堀博美春灯ピアノの上のプラモデル 藤川美佐子
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「円錐」(編集委員:澤好摩・橋本七尾子・山田耕司・今泉康弘)第61号(2014 Summer)から。 特集は「困った一句とは(2)」。 男波弘志句集『瀉瓶』評を山田耕司が、榮猿丸句集『点滅』評を後藤秀治が書いている。他に樽見博『戦争俳句と俳人たち』評を今泉康弘。山田評は容赦なく核心をつき、今泉評は細かい誤りを正しつつ今後に期待を寄せている。天の川流れる祖母の義眼かな 今泉康弘生けるものみな枯蓮となる日かな年の酒むかしは皆が生きてゐて 澤 好摩老木の木靈醒ますか春の雨うぐひすを出してそれきり布かばん 山田耕司観覧車春へと人を吐きつづく*****************************************************Laurie Anderson - Sharkey's Day
「陸」(発行:中村和弘)2014年5月号から。遠州の弘法麦も青みたり 中村和弘春興は魚籠に乾ける鱗かな陽に風に寒天チリリと干し上がる 太秦女良夫蟹凍ててなほうごめくを炙りけり 山本一糸大寒の電話の中に猫の声 稲村茂樹闇汁沸々内閣各位召上がれ 淺見玲子春泥の寄りそふごとく割れてをり 大石雄鬼白魚のなだれとなりて桶満たす 松本道宏ヘルメットに脳味噌書かれスキー場 小林政女かざはなやひとをわすれて海となる 佐々木貴子*****************************************************David Byrne.- Once In A Lifetime mp4.mp4
2014年マルコボ.コム 鈴木牛後(1961 - )の第2句集。第1回「大人のための句集を作ろう!コンテスト」最優秀作として刊行された『根雪と記す』に続くもの。 本文33ページでCDよりやや大きい判型に57句を収録。 著者は北海道で酪農を営む。しぐるるや死して牛の眼なほ大きトラクターのタイヤの大き溝を蛇裸ひとつこの地に捨つるため稼ぐ初霜の餌場に牛の歯を拾ふ凍星やよく振つて打つペニシリン氷点下三二度の人の音残雪の果てのひとつを踏みつぶす雲海へ王のごとくに放尿すトラクター降り秋天の深きこと夏の牛群れゐて風を呼びにけり働いてゐて炎帝に跨がるる斃獣と呼ばれしものを露に置く震へる機械震へてのぼる秋の蜘蛛深雪晴乳のかすかな暖色に鳥帰るわがにんげんのうすつぺら※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。*****************************************************Dead Can Dance Live at the Heineken Hall, Amsterdam June 24, 2013
2014年実業公報社 筑紫磐井『我が時代 ―二〇〇四~二〇一三―〈第一部・第二部〉』は、『野干』『婆伽梵』『筑紫磐井集』に続く句集。本文131ページ、3句組み。 東日本大震災に際しての行動記録、散文等も収録。さういふものに私はなりたくないオクラホマの歴史はありやさほどなし犬を飼ふ 飼ふたびに死ぬ 犬を飼ふ氷りつくやうなジョークを得意とすゾクとする季語がみごとに決まりしときスポンサーのご好意によりまだ野球夢見たる顔の妻あり情はなしゐたかなあ不思議な顔の子が隣虚子がしみじみ好きな少女に逢ふはかなしコロラドの川コロラドの月の中サムシングが足りぬと言はれさう思ふ あたりまへのことを詠むチューリップトルコの花で赤白黄人体の一部のやうなものが浮く戦前の、オリムピツクが湧いてゐる吾(あ)と無※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。*****************************************************David Byrne & St. Vincent - Who (Official Video)
2014年沖積舎 安井浩司『宇宙開』は、『汝と我』から始まる一連の「句篇」(『汝と我』『四大にあらず』『句篇』『山毛欅林と創造』『空なる芭蕉』)の最終巻という位置づけの句集。 本文243ページの5句組みなので、収録句は今回も1,000句以上。 標題「宇宙開」は、「切れ」を「開け」につなげた志賀康の評論『山羊の虹』による。坐り空海そばに体操する蟹よ十字軍と交叉してかの乳母車往く荒野腹中の子の指示のまま恋の少年羊の生皮被(き)る罰を世界終末予言日過ぎても夏の雲天人の食にみな消え山ぶどう千日草病(やまい)はひとを癒すらん砂底へ突かるひらめの基督やかのチリへ津波を返さん熊野崖沖へロープを引きゆく死刑執行魚野に交みおり人面の蛇二匹春のくれ柱頭人(びと)を忘れずに山人を揺すれば原体猿(ましら)出て師と少年宇宙の火事を仰ぎつつ海蛇も昆布も貽(い)貝も浴槽に※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。*****************************************************Karlheinz Stockhausen: Michaels Reise um die Erde (Donnerstag aus Licht, II)
季語の徹底的な再検討を続ける前田霧人の個人誌「新歳時記通信」の第8号が届いたのだが、今回は「風」に関する季語の総集編のような内容で、A5判で195ページに及ぶという、個人誌としては信じがたい大冊。 いつ通読できるやらわからないので、とりあえず拝受したということだけ上げておく。 内容についてはいつもの通り、ホームページにそっくり全部pdfファイルで掲載されているので、興味がある向きはそちらを参照していただきたい。
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歌誌「井泉」(編集発行・竹村紀年子)第57号(2014年5月)から。 招待作品に太秦女良夫(うずまさ・めらお)の俳句15句「飛花落花」。 リレー評論「現在の批評はどこにあるか」、今号は関悦史、さとうますみ。 特集は《春日井建没後10年「春日井建の1冊」》。碧眼の転入生や花水木 太秦女良夫(招待作品)今日の運勢「煩悩の魔力に要注意」庭木々に光(て)る大寒の陽よ 石原伸子初めてのスキーの折に買いし靴水が浸みきて御払箱に 梅村千枝子ブルドーザーでむき出しになったあかるさのつくられた町に呼吸している 加藤ユウ子檜垣、泥眼、姥、山姥、般若の面、並ぶ女の息苦しくも 松野登喜子大量虐殺(ジェノサイド)時さへたてば嘘となるたつぷり降れよ三月の雪 山下好美*****************************************************Art Blakey's Jazz Messengers and Special Guests - Leverkusen Jazzfest Oct. 9, 1989
2013年角川書店 大石悦子(1938 - )の第5句集。 2005年から2011年、古稀前後の363句。 俳人協会賞受賞。趾(あしゆび)に香油垂らして春待つか櫛その他柩のなかの春景色草辷りゆくくちなはを恍と見き投げよこすうらなりへうたん投げかへす秋興や熊除の鈴振ることもうちひろげ春待つ京の五色豆櫂立てて通るときどき花を打ちおほわたのとまりし髪をさはらせず独り居もよけれ日暮は餅焼いて数珠玉を詰めし枕を呉るるなら死ねばきてわが眼ついばむ虎鶫轟々とオリオンの立つ荒野かな蝉茸のあはれ紅さすひとところ椿象は来るはパソコンは鈍(のろ)いは榠樝の実生首提げてゐるやうな※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。*****************************************************Talking Heads - Girlfriend Is Better (Live 1984)
2014年ウエップ 柳生正名(1959 - )待望の第1句集。 夏から始まる四季順配列の350句。 《言葉の実在性や自立性を、現実のなかからたぐり寄せる柳生の想像力は、一句が登場するたびに意味内容を弾力的に動かしてゆくようだ。それはくるくると方向を変えながら交差し、変化し、すれ違う透明な錯綜体となる。読者は、そこを自由に楽しまれたらよろしかろう》(安西篤「跋 透明な錯綜体としての諷喩―柳生正名句集『風媒』に寄せて―」)まんばうの正面薄き光秀忌鎌倉や揚羽の映るサングラス玉虫がきらきら溺れ水の皺神棚に階段のある冷奴打ち払ふ金蠅ときに海のいろ男郎花近江で硝子すつと切る瓜坊来て障子を食べる籠り寺切手より舌の大きく憂国忌 靖国神社遊就館冬菫人間魚雷に窓なけれ鬼房ゐて海猫来て東北鉈の冷えランボオといふ馬に賭け懐手人形の黙つて縫はれ室苺臘梅や阿修羅に腋の六つほど初旅や海星乾ぶを火にくべて蛍烏賊醤(ひしお)に入りてなほ灯る※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。*****************************************************Claudia Brücken - Thank You
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