歌誌「美志」(編集発行:さいかち真、嵯峨直樹)18号(2016年5月)から。
特集は《瀬戸夏子歌集『かわいい海とかわいくない海 end.』を読む》。
他に、さいかち真、江田浩司の評論あり。
とりどりの傘をさしたる人が見ゆ車窓より見し福島の街 江田浩司
菜の花の黄のひとかかえ闇に抱いて何の頼りになるというのか 嵯峨直樹
真夜中の街へと出れば見たことのない量感で異郷の雨は 柳原恵津子
象の背にカメラをつけよ中継は老人ホームの大画面テレビに さいかち真
「絵空」vol.15(2016年春)から。
山崎祐子、茅根知子、土肥あき子、中田尚子の4人の同人誌。
遠足は大人になつて帰りけり 茅根知子
腹に土付けてこの世に蟇出づる 土肥あき子
沢山の手紙出てくる朧かな 中田尚子
山笑ふ大仏の唇半開き 山崎祐子
「澪」(編集発行:松林尚志)2016年5月号から。
大根提げ類人猿のごとくなり 松林尚志
忘られし記念樹の桑萌えてをり 藤田 宏
生きすぎて白魚の目とたたかへり 阿部晶子
落椿己が走り根覆ひける 福田芳枝
時折はインコ苛立つ木の芽時 林美智子(特別作品)
「小熊座」(発行:高野ムツオ)2016年5月号から。
《『小熊座の俳句 三十周年記念合同句集』を読む》に仙田洋子が鑑賞文、小林貴子、川口真理、佐藤文香、鴇田智哉、渡辺誠一郎が50句選を寄せている。
栗林浩「昭和・平成を詠む(10)」は大串章インタビュー後編。
宇井十間「鬼房俳句と戦争について」は、先日の鬼房俳句大会のシンポジウムでレジュメとして配られたもの。
人間に翼なけれど春日影 高野ムツオ
霾や瓦礫に立つは詩の神か
原子炉は寂しい女陰春の雨
戦争は紙の薄さにはじまりぬ 渡辺誠一郎
アテルイのここに生まれて春の蛇 越高飛騨男
水中とときどき気付く寒の鯉 中井洋子
亡き人に花の咲く音聞こえをり 関根かな
置き去りの五年廃墟に蝶生まる 阿部流水
我といふブラックホール春キャベツ 小野 豊
疎ましき髪ほめらるる桜の夜 高橋彩子
「円錐」(編集委員:山田耕司・今泉康弘・澤好摩・橋本七尾子)第68号(2016年2月)から。
特集は《矢上新八句集《浪華》》《戦後派俳人作品鑑賞を鑑賞する》。
押入れは女の胃の腑文化の日 大和まな
紅葉ののちの永飢ゑ岩魚淵 後藤秀治
音盤(レコード)の針鳴きを聴く夜長かな 澤 好摩
黄落にすべなき笊となりにけり 山田耕司
河童忌の繋がるる山羊われを見る 横山康夫
編集長に追はるる夢や年の暮 佐藤獅子夫
円柱(エンタシス)に一刀入れたき冬に入る 和久井幹雄
「鬣」(代表:林桂、編集:水野真由美)第58号(2015年2月)から。
第14回鬣TATEGAMI俳句賞発表あり(石牟礼道子『石牟礼道子全句集 泣きなが原』、小宮山遠『句集 林棲記』)。
特集は《大野林火を読む》と《追悼・中島敏之》。
夏果ての城は斜めに苔むすや 堀込 学
重き頭ずんずん運ぶ枯野かな 吉野わとすん
県道ではねられている季語を見た 外山一機
カマンベールチーズ、それはとっても古い季語だよ
大空(おほぞら)のいちにち青(あを)き花林檎(はなりんご) 林 桂
「白茅」(代表:中田剛)第11号(2016年冬)から。
招待作家作品に松岡ひでたか、渡辺松男。
特別作品に上田信治、木村定生、長嶺千晶、山田耕司。
照れば小石どれも淑気のめだまかな 渡辺松男
夜更けては葱抜きにゆくすさびかな 中田 剛
水鳥や音叉しづかに鳴りやまず 坂内文應
絨毯を靴下の足歩みくる 上田信治
オルガンの装飾古し日脚伸ぶ 木村定生
麗らかや砂丘の山に名のなきを 山田耕司
「篠」(主宰・発行:岡田史乃)Vol.176(2016年4月)から。
七草を袋に入れてあらはれる 岡田史乃
春寒し谷戸に楮の匂ひして 辻村麻乃
「翔臨」(編集発行:竹中宏)第85号(2016年2月)から。
菜の花や幽霊船ごと沖の凪 竹中 宏
炎天の翳が薫るか天皇史
光の箸とどけやガラス皿の枇杷
くさはらの彼方此方の秋深し 中田 剛
鳥渡るザルツブルグの塩の粒 土井一子
大試験美青年順に遣唐使 小笠原信
模型空母へ冬蝶の影迫り来る 伍藤暉之
フェレットが踊り場とほる望の夜 上羽美津子
心臓の深さ水餅沈めけり 小林千史
「里」(編集:中山奈々、副編集:小鳥遊栄樹、同人会長:仲寒蝉、発行:島田牙城)2015年11月号から。
遅刊のため2016年4月現在、これが最新号。
村山槐多炎帝や我が身をやぶるオベリスク 九里順子(特別作品)
「猛犬に注意」は呪符ぞ秋の昼 谷口智行
冬ざれや細身の魚肉ソーセージ ローストビーフ
一時間ごとの舌打ちおでん酒 喪字男
寝返りの途中の空や逝く秋の 島田牙城
歳晩や麦酒の缶を踏み潰す 媚庵
のし餅の重さに耐へる机かな 上田信治
冬麗の木よはりつめし傷に似て 青本瑞樹
石蕗の花機械動けばその音の 佐藤文香
母訪うて海に初雪そのすがた 田中惣一郎
跫のつたはりて来るカンナかな 堀下 翔
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