『こほろぎ』は岡田一夫(1947 - 2021)の第3句集(遺句集)。栞文:土岐光一、馬場龍吉、吉田香津代。
短夜や柩に爪の伸びる音
箒目に靴底の綾冬もみぢ
胴長に猫の出てゆく障子かな
複写機に潜む鏡や修司の忌
寝かされて自転車は骨うまごやし
鮎釣りの影は流れず昼の月
水音に憑かれてゐたる蛇の衣
枯蓮の見えてフォークの裏使ふ
花守の左眼福島右眼フクシマ
ふみきりに人古ぶなり春の雨
鮎を焼く直火の色も奥武蔵
オホカミは絵本に戻り年詰まる
いもうとの兄老い易き遅日かな
男子用便器一列終戦日
人形に髪植ゑてゐる冬座敷
※本書は関係者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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