【十五句抄出】佐藤文香『こゑは消えるのに―アメリカ句集』

2023年12月
港の人

　『こゑは消えるのに―アメリカ句集』は佐藤文香（1985 - ）の句集。

　著者は「翻車魚」同人。

 

 

 

 

 

 

芝に小径に栗鼠は立つ又すぐ立つ

歩み来て硝子に映る冬の虎

市場美しyamと隣りてSatsuma yam

4th Streetへそ出せばへそに自我

欲情は墨のかをりの二月かな

葡萄酒や夜空へ花はこはれつつ

夏帽を選びて我の換喩とす

カピバラの涙かがやく州都かな

アメリカの日落ちて夏の明るさよ

作曲家ごとのてのひら夏のピアノ

こゑで逢ふ真夏やこゑは消えるのに

ほぼとこたふ秋の妖精かと問はれ

牛肉を切れば厚さや夏景色

巨大峡谷赫しこの地球(ほし)を構成す

雪や地図に友らの生くる国散らばる

 

 

 

※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。