不調でほとんど何も読めなくなってきた。読みやすいものの再読が多い。
近年のハヤカワ文庫等のデザイン、タイトル文字が大き過ぎ、フォントが肉太過ぎで本の装幀というよりも立て看板か何かを見ている気分になるものがときどきある。
眉村卓『おしゃべり迷路』角川文庫・1981年
《さぁさぁ今から始まりまするのは、愉快・痛快・奇々怪々。変で不思議でケッタイな話。
イジキタナク食べる話
ウサンクサイとはどういう意味?
ロマンチックな徹夜のお話
ひとつの話が始まれば、あっちへ翔んだり、こっちへ跳ねたり、どこで終わるか予想もできない……。どう転んでも、貴重で乏しいあなたの読書時間を楽しませずにはおかない!
さあ、あなたもクマゴローこと眉村卓の、真面目で不真面目な、そして知的センス溢れるおしゃべりに耳を傾けてみましょう。》
眉村卓『たそがれ・あやしげ』出版芸術社・2013年
《なんてことない日常にひそむ、異界へのわき道……。
くたびれた男たちが紛れ込んだ21の奇妙な世界。
全編単行本未収録!
本にするにあたって順序を変え、それぞれに前文「TMいわく」を書き加えた。内容に関連するつもりが、エッセイと言われても仕方がない文章になっている。余計なことを、と顔をしかめる人もいるかも……。
これはいわゆる「すれっからしのSF誌読み」向きの作品集ではない。
また、若さで可能性に挑戦しようという人には、物足りないであろう。
だからといってこうしたものを面白がってくれる人がいなくなったわけではない、と、私は思う。私自身が年寄りになってこういうものにもちゃんと存在理由があると信じるようになったせいもあるが。 ――(まえがきより)》
収録作品=絵のお礼/腹立ち/和佐明の場合/五十崎/多佳子/新旧通訳/中華料理店で/息子からの手紙?/有元氏の話/あんたの一生って……/未練の幻/昔の団地で/十五年後/「それ」/「F駅で」/帰還/電車乗り/同期生/未来アイランド/F教授の話/やり直しの機会
眉村卓『歳月パラパラ』出版芸術社・2014年
《今年、傘寿を迎える著者のショートエッセイ集。
<目 次>
子(ね) 雄弁は金/禁 煙/昔感嘆・今?/地球の英雄/まあもう少し
丑(うし) 日暮れ/目玉カレー/理系とか文系とか/諦めのアイデア/電車乗り
寅(とら) 優先席/「しまい込み」の結果 /日記帳と手帳/母 校/店閉じ人
卯(う) 呼びりん/S/他人の死/「作品リスト」というノート
辰(たつ) ワタナベー/昼 前/勤め先と自分/ヨータイ話 入社試験と赴任
巳(み) 溜まるもの/十年め/大 声/宇治電ビル時代
午(うま) 階段の高さ/バッグにぶら下げて……/文才の有無/社宅入りと「宇宙塵」の勧誘
未(ひつじ) 父の作り話/子供のせりふ/「燃える傾斜」を書いた頃
申(さる) イケメン/姫路の駅そば/昔大阪入り
酉(とり) 落下恐怖症/喫茶店で書いた日々/書いたカフェ
戌(いぬ) 物語の主人公の気分/半村良さん/福島正実さんのこと
亥(い) 体重・体力/病み上がりの首/「木更津」のことなど/自己客観性社会の憂鬱 》
三島由紀夫『戦後日記』中公文庫・2019年
《「小説家の休暇」「裸体と衣裳」を中心に、昭和二十三年から四十二年の間に日記形式で発表されたエッセイを年代順に収録。昭和を代表するスタア作家の華麗なる日常と、小説から映画・演劇まで同時代芸術への鋭い批評が随所に光る比類なき戦後史のドキュメント。文庫オリジナル。》
伴名練『なめらかな世界と、その敵』ハヤカワ文庫・2022年
《いくつもの並行世界を行き来する少女たちの1度きりの青春を描く表題作や、ありえたかもしれないもう1つの日本SF史を活写する「ゼロ年代の臨界点」、伊藤計劃の『ハーモニー』にトリビュートを捧げた「美亜羽へ贈る拳銃」、未曾有の災害が発生した新幹線の乗客と取り残された人々のドラマ「ひかりより速く、ゆるやかに」など、人の心の隔たりと繋がりをめぐる奇跡の傑作集。著者渾身の1万字あとがきを併録した決定版》
収録作品=なめらかな世界と、その敵/ゼロ年代の臨界点/美亜羽へ贈る拳銃/ホーリーアイアンメイデン/シンギュラリティ・ソヴィエト/ひかりより速く、ゆるやかに
川俣正『アートレス―マイノリティとしての現代美術』フィルムアート社・2001年
《「私はすべての決定権を現場サイトに委ねる!」
なぜ個人で表現を追求するのではなく、多くの人たちとかかわるのか。かかわることによる共同性の意識が、作品を個人レベルから少しずつ集団のものとしてのレベルに肩代わりさせ、責任を分かち合うようになるからであり、唯一その関係性の変容を体感したいという興味が私にはある。(本書より)》
収録作品=セメント樽の中の手紙(葉山嘉樹)/機械(横光利一)/随行さん(源氏鶏太)/輸出(城山三郎)/巨人と玩具(開高健)/あざやかなひとびと(深田祐介)/樹と雪と甲虫と(木野工)/黄色い微笑(井上武彦)/聖産業週間(黒井千次)/特別休暇(山田智彦)
川俣正+N・ペーリー+熊倉敬聡編『practica1 セルフ・エデュケーション時代』フィルムアート社・2001年
《既成の行動様式を変容させる、いま世界各地で起きている新しいアート・プロジェクトを参考に、自らが自らの力で学ぶ実践法!
アートフルな創造から、アートレスな試行錯誤へ
practicaとは……
それはラテン語で〈実践〉を意味します。
観客、読者、生徒、セルフトート(独学者)あるいは消費者、患者などいままでの情報の〈受け手〉とされていた人たちが反対に、積極的な〈発信者〉になり、独自に鑑賞から表現、社会革新的なプレゼンテーションを大胆に提唱します。》
源氏鶏太『結婚の条件』集英社文庫・1981年
《“愛情、誠実、勇気。この三つこそ結婚の条件だわ。相手に要求するだけでなしに、あたしもその持ち主にならなければ”水戸まひるは姉夫婦と同居する明るい22歳。OL。そんな彼女に同僚の矢貝君と義兄の部下の三好君が立候補。霧の夜の中之島公園、ネオンの映る道頓堀。大阪の街に青春のゆめと希望と恋の冒険があふれる。 解説・武蔵野次郎》
ステファニー・ジェイムズ『ロッキーの熱い想い』サンリオ文庫・1984年
《カリンダは、父親から受け継いだ会社を、苦労しながらも建て直した敏腕の女社長。そんな彼女も、二年前には、婚約者だったデヴィッドから裏切られるという悲しい体験をしている。
時は熟し、デヴィッドに対するうらみを晴らすため、カリンダは、コロラドの田舎町を訪れる。そこで、ふとしたことから、釣りや陶器作りにうつつを技かす気ままな男――ランドに出会う。強引とさえ思われるかれの誘惑に会って、戸惑いながらも、なぜか心惹かれていった……。
時にリリカルに、時にセクシャルに、軽快なテンポで描かれる愛の秀作。(解説=森瑶子)》
銅大『天空の防疫要塞』ハヤカワ文庫・2019年
《辺境の惑星〈プリル〉に、星々を結ぶ銀河回廊を開いて星間連盟の探査船が到来した。銀河回廊の開通により、辺鄙な農業惑星はめざましい発展を遂げる。だが、銀河回廊がもたらしたのは繁栄だけではなかった。銀河中心核から侵攻してくる恐るべき敵、〈空食い〉もまた襲来したのだ。防疫要塞から派遣された教官のもと、体内にナノマシンを入れて特殊能力を得た少年たちは、義勇防疫団員となって強大な敵に戦いを挑むが……。》
阿刀田高『ギリシア神話を知っていますか』新潮文庫・1984年
《聖書と並ぶ古典中の古典、ギリシア神話は、世界の思想、芸術、文芸に多大の影響を及ぼしている。本書では、多彩豊富な物語の膨大な枝葉を巧みに整理し、著名なエピソードを取りあげてわかりやすく解説する。エロス、オイディプス、パンドラ、アンドロメダ……神話中のヒーローとヒロインの運命を、作家的想像力で興味深く語ったこの一冊で、あなたはもう“ギリシア神話通”。》
末木文美士『死者と霊性の哲学―ポスト近代を生きぬく仏教と神智学』朝日新書・2022年
《近代の価値観は崩壊し、格差はますます広がり、弱肉強食のポスト近代へ突入した。それでもしぶとく根を張り、生き抜いてきた「もう一つの近代」という思想がある。
日本仏教の思想は、従来の哲学には欠けていた新鮮な発想に富む。そう気づいた仏教研究の第一人者である著者が、
哲学の分野に挑み、「死者」や「霊性」の問題を発掘。ポスト近代のニヒリズムに抗しつつ、理想や希望を取り戻す壮大な試み。》
星新一『盗賊会社』講談社文庫・1973年
《「ああいうアイデアはどうして考えるのかしら」「それは秘密のトバリに包まれている。逆立ちしながら、という説もある。鼻クソをとばすと一つアイデアができるという説もある。トイレの中に限り、という説もある。だから星さんは一日十三時間トイレにはいっているといった人があった。もっとも、これはみんな伝説なんだ」北杜夫《非解説》より》
収録作品=雄大な計画/新しい社長/名案/ぼろ家の住人/滞貨一掃/あるロマンス/あすは休日/盗賊会社/殺され屋/あわれな星/やっかいな装置/程度の問題/趣味決定業/装置の時代/気前のいい家/最初の説得/仕事の不満/あるノイローゼ/声の用途/紙幣/大犯罪計画/感情テレビ/悲しむべきこと/時の人/善意の集積/黒い棒/なぞの青年/特許の品/打ち出の小槌/あるエリートたち/最高のぜいたく/無料の電話機/夕ぐれの行事/帰宅の時間/助言/長い人生
村上春樹・安西水丸『ランゲルハンス島の午後』新潮文庫・1990年
《まるで心がゆるんで溶けてしまいそうなくらい気持のよい、1961年の春の目の午後、川岸の芝生に寝ころんで空を眺めていた。川の底の柔らかな砂地を撫でるように流れていく水音をききながら、僕はそっと手をのばして、あの神秘的なランゲルハンス島の岸辺にふれた――。夢あふれるカラフルなイラストと、その隣に気持よさそうに寄り添うハートウォーミングなエッセイでつづる25編。》
村上春樹『パン屋再襲撃』文春文庫・1989年
《彼女は断言した、「もう一度パン屋を襲うのよ」。学生時代、パン屋を襲撃したあの夜以来、彼にかけられた呪いをとくための、このたくらみの結果は……。微妙にくい違った人と人の心が、ふとしたことで和んでいく様子を、深海のイメージによせて描く六作品。ところで、いろんな所に出てくる〈ワタナベ・ノボル〉とは何ものだろう?》
収録作品=パン屋再襲撃/象の消滅/ファミリー・アフェア/双子と沈んだ大陸/ローマ帝国の崩壊・一八八一年のインディアン蜂起・ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界/ねじまき鳥と火曜日の女たち
東海林さだお『サクランボの丸かじり』文春文庫・2022年
《あまりにも清楚、あまりにも純粋。ある日、皿に静かに横たわる一粒のサクランボを見て思わず涙した。またある日は、あえて全身をべろべろさせるワンタンの魂胆を探り、黒衣に徽するキクラゲの立場を忖度しつつ、お通しがタダとは限らない現実もスルドク見逃さない。抱腹絶倒の東海林ワールドはまだまだ続く。 解説・丸岡九蔵》
東海林さだお『シウマイの丸かじり』文春文庫・2019年
《今年は牛肉弁当を獲得するぞ、と心に誓って駅弁大会に参戦。しかし既にモー長蛇の列、行列なしのシウマイ弁当をつい購入。全身牛肉人間と化した内臓たちを、どう説得するか!?――関係が複雑に入り乱れる海鮮丼の悲劇、吉野家で酒を呑む「吉呑み」初体験、スマホ時代のポテチ生き残り策、などなど。解説エッセイ・たかぎなおこ》
星新一『つねならぬ話』新潮文庫・1994年
《海の下の、奥の奥で眠っている神の夢。大地をうごめき、すべてを食い尽くす不快なブガン。アステカの怪しげな薬草に酔って義経がみる昔日の幻。満月の夜にとらえた人魚を食べてしまった男たちのゆくえ――。
天地の創造、人類の誕生など語りつがれてきた物語が、いま奇抜な着想で生れかわる。あなたを空想の小宇宙へ誘う、幻想的で奇妙な味わいの52編のワンダーランド。》
収録作品=はじまりの物語(風の神話/表紙の神話/天空の神話/海の神話/やじうま神話/さざれ神話/ブガン神話/しらけ神話)/もしかしての物語(花も嵐も/旅情/海の若大将)/お寺の昔話(天狗/宿屋/古戦場/満月/花/門前町)/夢20夜(旅館/夜空/背中/老人/スパイ/ヨウカン/船/古い家/社会/花の女/災厄/夜の話/白い粉/風景/ネズミ/福/虫/営業/昔の話/部屋)/ささやかれた物語(壺/川/緑/雪/鳥/光/海/竹/鏡/筒/水/夜/寺/空/話
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