なぜか翻訳小説(主にSF、ミステリ)の方が読みやすくなってしまった。
日本の作品では既に何度も読んでいる眉村卓『月光のさす場所』の単行本版が手に入り、また再読。文庫版と同じ木村光佑の装幀で、小中学生の頃欲しかった物件。
ハヤカワ文庫のアガサ・クリスティー作品は真鍋博装幀の旧版が手に入ったら読んでいる。
福島正実『ロマンチスト』ハヤカワ・SF・シリーズ・1968年
《本書は『SFハイライト』『SFの夜』につぐ、ミスターSF、福島正実の3冊めの短篇集である。福島正実は出版界のジンクスを破って、日本の土壌にSFを根づかせ、SFを育て、日本のSFを創りだした男である。編集者としてはSFマガジン、ハヤカワSFシリーズ、日本SFシリーズの生みの親であり、SF評論家としては真摯な態度でSFにアプローチする論客であり、作家としては独自のSFジャンルをうちたてようと意欲を燃やす。その扱う分野も、近未来、宇宙、次元ものときわめて多彩であるが、そのすべてを通じて感じられる異様な現実感と衝撃とは彼独得の持ち味だ――日本SF界の新しいマイルストーンを画する福島正実の最新傑作SF集!
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電子装置によってすべてが自動化された21世紀の大洋外航船――その海の男たちの失われ行く人間性と冒険心を淡々と描く『ロマンチスト』人間がコンピューターの奴隷か主人かを問う『ラダイト計画』セックスだけでなく、男女間の風情、情緒までが人工のものとなる時代を描いた『ワレガナレオアイス』など、日本SF界に独得の位置を占める福島正実の新作SFを結集する!》
収録作品=ロマンチスト/花の命は短くて/ラダイト計画/〈万国博発明史〉/黒い嵐/嫌がらせの世代/〈臓器交換〉/死にいたる病/ワレガナレオアイス/蟻地獄/東京二〇一〇年/人間そっくり/〈SFにおける言語思想の欠落〉/ゴールデン・ウィーク/〈レジャーについて〉/見果てぬ夢/雪ぞ降る/〈SFと広告の未来〉/愛の映像/〈画像優位時代について〉/ドアを開けば/文化財/〈怪獣ブーム考〉/空の記憶/よみがえる過去/決定的瞬間/あれ
※〈〉内はエッセイ
川又千秋『真珠湾ようそろ』ジョイ・ノベルス・1993年
《敗色濃い南海の孤島ラバウル。そこには今や戦争の帰趨には関係なく取り残された日本軍将兵たちがいた。すでに闘うべき戦闘機も艦船も殆どない。しかしこのまま座して敗戦を待つというのも面白くない。そこで考えだされたのが、何とも奇妙で大胆な奇襲作戦。目標は真珠湾だ!》
川又千秋『総統兵団、潜航す』C・NOVELS・1988年
《「右舷に雷跡!」――月下の洋上で不審な艦影に接近を試みた護衛艦〈ちくご〉が、何者かの雷撃を受け被弾した。幸い不発弾ではあったがこの魚雷、なんと第二次大戦中ドイツのUボートが使用していた音響誘導魚雷であった。この話を聞き込んだ海自パイロット仁科と柴崎は、訓練を利用して周辺海域へ飛ぶ。そして樹林に覆われた孤島上空を通過したとき、彼らの乗るVTOL戦闘機ミツビシVF‐1を怪光線と衝撃が襲った! ヒトラー率いる総統兵団と海上自衛隊空母飛行隊、その最後の対決は。》
川又千秋『対馬沖ソ連艦に突入せよ』ノン・ノベル・1981年
《夜の福岡空港に垂直離着陸機が緊急着陸した。機はソ運太平洋艦隊の旗艦アクチューブリの艦載機だ。そして、この旗艦は対馬沖にいる。何だ、何が起きているのだ。ルポ・ライター坂井英治は福岡に飛び、そこで恐るべき光景を見た。一方、緊迫する最高国防会議は、ついに最後の断を下した。マスコミを完全に遮断した攻撃指令である。影の激闘が始まった。味方の死体が累々とする中を、腰だめにした突撃鉄をフル・オートにし、南一勝は絶望的な戦闘へと突入していった……。SF界の新鋭・川又千秋が渾身の力を絞って書き下ろした冒険アクション小説の最高傑作!!》
ヴァン・ダイン『僧正殺人事件』角川文庫・1961年
《ディラード教授宅での殺人事件を聞いたファイロ・ヴァンスは、すぐに童謡「マザー・グース」との暗合に気がついた――“コック・ロピンを殺したのはだあれ。わたし、と雀がいった。弓と矢で殺したの”
被害者の名前は、ジョウゼフ・コクラン・ロピン。彼は胸に矢を射こまれて死んでいたのである!
つづいて起こる第二、第三の殺人事件のいずれもが、マザー・グースの歌詞を見事になぞっていた。そしてそのつど新聞社に、事件を告げる謎の手紙が送られてきた。その最後には、必ず、〈僧正〉の署名が…。
『グリーン家殺人事件』と並ぶ、ヴァン・ダインの最高傑作!》
吉田健一『英国の近代文学』岩波文庫・1998年
《近代という分裂と混乱の時代に、文学はどのようなものであるのか。著者は言う、「近代文学は何よりも先ず自己に向って語り、さらに自己に向って語ることを知っている読者に呼び掛けるものでなければならない」。独自の視点から近代人とその精神を見据え、批評・詩・小説に英国の近代を読み取る。(解説=川本皓嗣)》
クリス・クレアモント『暁のファーストフライト』ハヤカワ文庫・1990年
《暁の空にそびえ立つ宇宙船の群れ、次々と発射されるシャトルの轟音――ここ、ダビンチ基地で、新任女性少尉ニコル・シェアの夢が、いまかなえられようとしていた。航宙図作製のため冥王星基地へと向かう〈ワンダラー〉に、指揮官として乗り組み、あこがれの宇宙に第一歩をしるすのだ。だが、航宙途中で、壊れて漂流している〈ロックハウンド〉と遭遇したことから、ニコルはとんでもない陰謀に巻きこまれていく……超光速航行が実現し、太陽系せましと宇宙船が飛びかう近未来を舞台に、若きヒロインの話躍を生きいきと描きだす、傑作冒険SF!》
カート・ヴォネガット『デッドアイ・ディック』ハヤカワ文庫・1998年
《人生にご用心――オハイオ州ミッドランド・シティのドラッグストアで薬剤師をつとめるルディ・ウォールツは、いかにしてデッドアイ・ディック、すなわち必殺射撃人と呼ばれるようになったのか。ルディの父オットーは、いかにして若き画家アドルフ・ヒトラーと親友になったのか……祖国の中性子爆弾によって、やがて滅びる運命にある街で、奇人・変人・普通人たちがコミカルに織りなす人間模様を描く、涙と笑いの感動作。》
アイザック・アシモフ『神々自身』ハヤカワ文庫・1986年(ヒューゴー賞、ネビュラ賞)
《西暦2070年。研究室の試薬ビンを手にした化学者フレデリック・ハラムは驚愕した。タングステンが入っているはずのそのビンには、我々の宇宙には存在しないプルトニウム186が入っていたのだ! それは〈平行宇宙〉からタングステンとの交換に送られてきたらしい――〈平行宇宙〉ではタングステン186が、我々の宇宙ではプルトニウム186が無公害でコストゼロのエネルギー源となる。かくて〈平行宇宙〉とのエネルギー源の交換がエレクトロン・ポンプを通して行なわれることとなった。だが、この取引きには恐るべき罠が隠されていた! 米SF界の巨匠が満を持して放つ最高傑作》
スパイダー&ジーン・ロビンスン『スターダンス』ハヤカワ文庫・1987年(ヒューゴー賞、ネビュラ賞)
《街を歩けば誰もがふり返る、魅力的なプロポーションと素晴らしい美貌の持ち主、シャーラ・ドラモンド――だが、モダン・ダンサーとして成功するには、大柄な彼女の姿態そのものが障害となった。バスケットボールの選手が踊る姿など、誰も見たくはない。しかし、もし、重力のないところで踊れるとしたら……スカイファックの軌道上、ゼロGの環境で踊ることに、シャーラは自分の全存在を賭けた! 悲劇的なオープニングから、感動的なエンディングまでユーモアを織りこみながら卓越したストーリイ・テリングで描く、1987年度ヒューゴー、ネビュラ両賞受賞作、待望の文庫化!》
アイラ・レヴィン『ローズマリーの赤ちゃん』ハヤカワ文庫・1972年
《若妻ローズマリーが夫のガイと共に越してきたマンハッタンの古風なアパート。そのヴィクトリア朝風の華麗な建物には過去の住人の呪われた逸話が隠されていた。やがて一ヵ月余りの時が流れ、ローズマリーは子を身ごもった――常ならぬ悪夢にさいなまれた夜に。そして、その時から彼女の身体に奇妙な変化が起き始める――しきりに襲う激痛、生肉への異常な執着。かかりつけの医師や隣人たちの奇怪な言動も目につき始めた。いったい何が起ころうとしているのか? 強烈なサスペンスと衝撃の結末――鬼才が悪魔崇拝を題材に描く恐怖小説の最高傑作》
ハリイ・ハリスン『銀河遊撃隊』ハヤカワ文庫・1980年
《若き天才科学者ジェリーとチャックは、ある日たいへんな新物質を発明した。ちょっとしたいたずらから粒子加速器に放りこんだチーズが、どんなものも瞬間的に移送できる驚くべき新物質に変貌していたのだ! すぐさま二人は、この新物質から画期的な航法装置チェダイト放射器を完成させた。ジェリーとチャック、それに愛らしい学長の娘サリーの三人は、実験のため747専用ジャンボ・ジェット――イーグル号にのりこんだ。だがこの実験飛行が、やがて銀河狭しと繰り広げられる一大冒険への旅立ちになろうとは……抱腹絶倒、スペースオペラの傑作パロディ!》
タニス・リー『銀色の恋人』ハヤカワ文庫・1987年
《とび色の瞳に赤褐色の髪、銀色の肌をもつ美貌の吟遊詩人シルヴァーは、エレクトロニック・メタルズ社が試作した精巧仕様型ロボットだった。彼は優雅な仕草でギターをつまびき、ありとあらゆる歌を紡ぎだす。人々はこぞって彼の歌を聴きたがった。シティに住む孤独な少女ジェーンは、彼をロボットと知りながらも愛してしまうが……人気作家タニス・リーが情感豊かに描きあげる、少女とアンドロイドとのSFラブロマンス!》
ラリイ・ニーヴン『プタヴの世界』ハヤカワ文庫・1983年
《身長四フィート、奇妙に曲がった四肢、つるりとした球形の頭――イルカたちが海底で発見した〈海の像〉は、古代のゴブリンさながらの様相を呈していた。いったい、これは……? 時間遅延フィールドに入った異星人ではないかと考えた物理学者のチームは、コンタクト・マンの出勤を要請した。だが、コンタクトに成功したラリイ・グリーンバーグはめくるめく意識の奔流に呑みこまれ……やがて、その〈像〉こそ、15億年前、全銀河を支配していたスリント人唯一の生存者であることが判明したのであった! ノウンスペース・シリーズの原点をなすニーヴンの処女長篇、遂に登場!》
野田昌宏『銀河乞食軍団〈外伝2〉禿蔓草107号!』ハヤカワ文庫・1987年
《〈星涯〉星系では、どんなボロ会社でも年に一度、会社ぐるみの救難訓練をやることになっている。今年もまた、その年次機動救難演習の季節がやってきた。惑星・白沙基地の仮装遭難宇宙船が救難信号を発するやいなや、お七やネンネたちが所属する金米糖錨地の救難艇が救助に向かうことになっているのだ。だが、今年はなかなか信号が入ってこない。運航管制所にあせりがみえてきたころ、ついに信号が入ってきた。いっせいに行動を開始したおネジっ子たちの救難艇だったが、なぜか、お七たち花組の禿蔓草107号だけは正反対方向へ向かっていった!?》
収録作品=金米糖錨地、清純乙女強盗団/禿蔓草107号、只今出動!/琴姫ポイント、異常あり!/金米糖〈花組〉秘密部品庫
カート・ヴォネガット『青ひげ』ハヤカワ文庫・1997年
《わたしはラボー・カラベキアン。亡き妻の大邸宅に孤独に暮らす老人だ。かつては抽象表現派の画壇で活躍したこともあったが、才能に限界を感じて今では抽象画のコレクターに甘んじている。そんなある日、若くエネルギッシュな女性が現われ、わたしの人生も大きく変わることになった。彼女は、わたしが誰一人入らせない納屋にいったいどんな秘密があるのか、興味を示しだしたのだ。――人類に奇跡を願い、鬼才が贈る感動長篇。》
光瀬龍『宇宙救助隊2180年―宇宙年代記1』ハヤカワ文庫・1975年
収録作品=シティ〇年/ソロモン一九四二年/晴の海一九七九年/墓碑銘二〇〇七年/氷霧二〇一五年/パイロット・ファーム二〇二九年/幹線水路二〇六一年/宇宙救助隊二一八〇年/標位星二一九七年
光瀬龍『辺境5320年―宇宙年代記2』ハヤカワ文庫・1975年
収録作品=巡視船二二〇五年/落陽二二一七年/市(シティ)二二二〇年/戦場二二四一年/スーラ二二九一年/エトルリア二四一一年/連邦三八一二年/カビリア四〇一六年/辺境五三二〇年
アガサ・クリスティー『ナイルに死す』ハヤカワ文庫・1984年
《ナイル河上には、そもそもの始めから暗雲がたれこめていた。社交界の花形であり財産家でもあるリネットと失業中のサイモンのハネムーンは誰からも祝福されたものとはいえなかったのだ。とりわけ婚約者を奪われたジャクリーンにとってはそうだった。彼女は拳銃を片手に、二人の行く先々に現われ、脅迫まがいのいやがらせをした。同じ観光船に乗り合せたポアロはそんな彼女のふるまいを押しとどめようと試みたが……やがて、恐るべき惨劇は起った! ポアロの名椎理があばき出す意外きわまる真相。ロマンとミステリを鮮やかに結合する最高傑作!》
アガサ・クリスティー『スタイルズ荘の怪事件』ハヤカワ文庫・1982年
《戦傷を癒そうと、旧友カヴェンディッシュの母エミリイの邸〈スタイルズ荘〉を訪れたヘイスティングズは、到着早々事件に巻き込まれた。二十も下の男と再婚したばかりのエミリイがストリキニーネで毒殺されたのだ。困惑するヘイスティングズの胸にある男の姿が浮んだ。卵型の頭と見事な口髭が印象的な小男――ベルギーから亡命し、エミリイのおかげで近くに居を構えたエルキュール・ポアロだ。かくしてポアロは恩人毒殺の謎を解くべく、自慢の“灰色の脳細胞”を駆使しはじめた……不朽の名探偵ポアロの出発点となった女史の記念すべき処女作!》
アガサ・クリスティー『満潮に乗って』ハヤカワ文庫・1976年
《大戦後、故郷に帰ったリンは現在の単調な生活にあきあきしていた。しっかり者と、人からも頼られ、信じられていたリン。だが彼女はそんな自分にもあきていた。荒波にもまれて、自由に泳いでみたい――そんな時リンは、危険な無頼の男デイヴィッドに会った。リンは強くデイヴィッドに惹かれた、流れゆく先が死の渦潮であることを知る由もなく……。叔父の莫大な遺産と、野望のためにはいかなることも辞さぬ謎の殺人鬼とのあいだに立たされた、傷つきやすい美貌の娘リンのとるべき船舵は? エルキュール・ポアロの登場はいつ?》
ロバート・A・ハインライン『未知の地平線』ハヤカワ文庫・1986年
《時は23世紀。遺伝子操作が可能となり、すべての病苦は克服され、人々は自由を享楽していた。だが、このユートピアのような地球社会に、反逆をいどむ集団があった。自らを〈生き残りクラブ〉と称するかれらの目的は、より機能的な社会をつくりあげること。四世代以上にわたる遺伝子操作の結果生まれたエリート種の一人でありながら、現状にあきたらぬ若者ハミルトン・フェリクスは、しだいにその運動に巻きこまれてゆくが……巨匠ハインラインが、遺伝子操作の問題に深く切りこみ、ありうべき近未来社会の姿をリアルにかつヴィヴィッドに描きあげた、記念すべき長篇第一作!》
澁澤龍彦『黒魔術の手帖』河出文庫・1983年
《科学、宗教と表裏一体をなし、理性信仰の陰画のごとく常に存在して、悪魔的小宇宙創造へと人類を駆りたてる暗い情熱。意識の底に潜むこの反理性的心性は時として神秘思想へと結晶し、ヨーロッパでは、魔術、占星術、錬金術などとして顕現した。本書はその夢魔の跳梁する黒魔術の世界をさまぎまなエピソードとともに紹介したエッセイで、発表時強烈なインパクトを与えた驚異の論考である。》
澁澤龍彦『サド侯爵の生涯』中公文庫・1983年
《無理解と偏見にみちたサドヘの理解と対決して、その真実を究明しその華麗な全貌を捉えたサド文学評論決定版。この本をぬきにしてサドを語ることはできない。》
グレゴリー・ベイトソン『精神と自然―生きた世界の認識論』岩波文庫・2022年
《私たちこの世の生き物すべてを、片やアメーバへ、片や統合失調症患者へ結びつけるパターンとは? 日常の思考の前提を問い直し、二重記述、論理階型、散乱選択といった道具立てによって、発生も進化も学習も病理も包み込むマインドの科学を探究したベイトソン(1904-80)。そのエコロジカルな認識論の到達点を自ら語った入門書。》
眉村卓『月光のさす場所』角川書店・1980年
《社会は今、全ての人間的なものを喪失しつつあった。個人のもつ自由な発想と能力をスポイルしつつ進行する、社会のシステム化と管理化。記憶力に頼り、型にはまることによって社会の階段を登ってゆこうとする“秀才”たち。はたしてこのままで良いのか……?
ある日、エリート・サラリーマンの井場の前に、学校時代の落ちこぼれだった級友が経営するアイデア会社が出現した。それは正規の教育体系にもとづかない“裏学校”出身者ばかりで構成され、実に自由で活発な創意と行動力にあふれていた。井場の心に宿る疑問……。
人間にとって理想の社会とは? 現代文明のかかえる病理を抉り、未来社会に問題を投げかける社会SF等、全6編を収録するSF秀作集。》
収録作品=鳳凰傘下/月光のさす場所/暁の前/オーディション/霧に還る/剥落の冬
眉村卓『滅びざるもの』徳間書店・1979年
《「――二十一世紀初頭においても、この小説が、はたしてフィクションでありつづけるかどうか? そこに、この小説のもつ企業未来小説としての恐ろしさがある」(豊田有恒・解説より)
高度に管理化される現代社会に鋭い批判の目を向ける社会派SF作家が、国家と企業の対立という、あり得べき未来社会を予見して描くSF長篇。
果たして、“滅びざるもの”は誰か?》(徳間文庫版内容紹介)
野坂昭如『真夜中のマリア』新潮文庫・1971年
《労のみ多くして功少ない処女相手をあえてするのは年長の男の義務。「ヴァージンにペニスを! 市民連合」の結成。阿鼻叫喚の女にくらべ男はただ黙々とうごめく輪姦……。男色のおしえ、ホモ道への出陣、オナニー哲学序説――十七歳の少年カンとその仲間たちの奇想天外な性の体験と意識を、特異な語りの文体で奔放に描き、セックスについての古い通念を粉砕した著者会心の長編小説。》
眉村卓『幻の季節』主婦の友社・1981年
《あの声は…いや。いやまさか。だが……
男の心に、ふと忍び寄る女の影。失ったものを求めてまぼろしの旅はつづく……スリルと興奮のSFロマン。》
収録作品=ホテルたかのは/浄瑠璃寺・夏/黒いドアの店/ダムであった女/浜詰海岸/遠い日の町/乗せられた旅/旅で得たもの/照りかげりの旅
小栗虫太郎『青い鷺―小栗虫太郎傑作選Ⅲ』教養文庫・1976年
収録作品=二十世紀鉄仮面/青い鷺
堀田善衛『若き日の詩人たちの肖像(上)』集英社文庫・1977年
《北陸の没落した旧家から骨董を学費がわりに特って上京した少年は、その夜雪の東京の街に響く銃声、血ぬられた二・二六事件に会う。暗い夜の時代をむかえる昭和初年に目覚めた青春の詩情と若者の群像を描く長篇(第一部、第二部)》
堀田善衛『若き日の詩人たちの肖像(下)』集英社文庫・1977年
《“しかと定めもつかぬ颱風が荒れ狂い、その風の吹くまま”右へ左へ流されてゆく若者たち。荒涼たる時代の空間をえがきだして、戦中の暗い時間の中に成長する魂の遍歴の典型をつくりだして、青春の詩と真実を生き生きと伝える自伝長篇完結篇(第三部・第四部) 解説・篠田一士》
バリントン・J・ベイリー『カエアンの聖衣』ハヤカワ文庫・1983年
《服は人なり――この衣裳哲学を具現したカエアン製の衣裳は、カエアンと敵対関係にあるジアード人をすら魅了し、高額で闇取引されていた。その高価な衣裳を満載したカエアンの宇宙船が難破した。情報をつかんだジアードの密貿易業者の一団はさっそく衣裳回収に飛んだ。ところが、彼らが回収した衣裳の中には、思いがけない威力を秘めたスーツが含まれていた……英SF界の俊英が奔放なイマジネーションを駆使して描く力作》
東海林さだお『そうだ、ローカル線、ソースカツ丼』文春文庫・2011年
《ローカル線の旅をしたいなー。夢を叶えるべく、水戸から2輛編成の単線に揺られたショージ君。水族館で山椒魚に会い、しゃも料理を堪能し、袋田の滝の前に無言で佇んでみた――内田百閒を真似て用事もないのに列車に乗る、京都に定食・群馬にソースカツ丼を食べにいく等、ショージ君流旅の愉しみ方が満載! 解説・関川夏央》
ラリイ・ニーヴン『中性子星』ハヤカワ文庫・1980年(ヒューゴー賞)
《莫大な借金をかかえて首のまわらなくなった宇宙船のパイロット、ベーオウルフ・シェイファーに、パペッティア人から耳寄りな話がもちこまれた。中性子星BVS=1を調査してくれれば、百万スターを支払うというのだ! 渡りに舟とばかり、調査機器を満載したゼネラル・プロダクツ社製の宇宙船で旅立ったシェイファー。だが、やはりうまい話には……ヒューゴー賞を受賞した「中性子星」ほか、銀河の中心部探索をめぐる冒険を描いた「銀河の〈核〉へ」など、八中短篇を収録。広大な銀河系を舞台に、多彩な登場人物によって繰りひろげられるニュー・スペースオペラの決定版!》
収録作品=中性子星/帝国の遺物/銀河の〈核〉へ/ソフト・ウェポン/フラットランダー/狂気の倫理/恵まれざる者/グレンデル
デュラス『静かな生活』講談社文庫・1971年
《南西フランスの田園と海辺を背景に展開される、肉親間の殺人、自殺など、死に侵された没落ブルジョワ一家の倦怠と狂気と不毛の愛……。現代の虚無と不条理を個性的な文体で表現するフランス女流文学の第一人者マルグリット・デュラスの異色長編。》
クロード・モーリアック『あらゆる女は妖婦である』集英社文庫・1979年
《死の恐怖にさらされている現代人にとって、愛はついに不毛に終るのだろうか。著者の分身ベルトランの内的な告白体を通して語られる愛と死の遍歴。時間と空間を錯覚させながら、女から女へ快楽に耽ける男の、激情と愛の日々、惑溺する中に芽ばえる孤独を、鮮烈な性描写をまじえて描き出す。》
ジョルジュ・シムノン『メグレと老婦人』ハヤカワ文庫・1976年
《小雨降る九月の朝、列車を待つメグレ警視は昨夜の事を回想していた。可愛い老婦人が彼を訪れ、自分の毒殺を企んだ犯人を調べてくれと訴えたのだ。彼女は睡眠薬の常習者で、ある夜、偶然に薬を飲んだメイドが死んでしまった。犯人が狙ったのは自分だと彼女は主張した。が、彼女を訪ねたメグレを待ち受けていたのは、憎しみあう老婦人の家庭の複雑な人間関係だった。フランス文壇の驍将が独自の心理的手法で描破する本格篇》
ロード・ダンセイニ『魔法使いの弟子』ハヤカワ文庫・1981年
《時折しも素精しかった絶頂期もすでに過ぎ、いまや黄昏へ向かっているスペイン〈黄金時代〉、一人の若者が魔法使いの棲み家を訪ねて、草深き山中を彷徨っていた。旅人の名はラモン・アロンソ。彼は魔法使いに弟子入りし、錬金術の奥義を極めねばならなかった――今や彼の城館の財政難は、魔法にすがらねばならぬほど逼迫していたのだ。だが、彼が探し求めている魔法使いこそ、実は宇宙の精霊かちと交信すべく、人間の影を蒐集する恐るべき黒魔術の徒であった! 今世紀最大の幻想作家が、ケルト民族特有の〈黄昏の想像力〉を駆使して描く傑作!》
レイ・ブラッドベリ『社交ダンスが終った夜に』新潮文庫・2008年
《深夜の路面電車に乗り合わせた男女の会話は、やがて不思議な結末へと……ふわりとした余韻を残す表題作のほか、急場しのぎにでっち上げ、リールの順番さえ間違えて上映した映画がベネチアでグランプリを受賞してしまう「ドラゴン真夜中に踊る」、ゴルフ場で偶然知り合った同名の老人の過去と自分の過去が、徐々に混じりあっていく「19番」など、いずれも〈SFの抒情詩人〉ならではの25編。》
収録作品=はじまりの日/心移し/埋め合わせ/社交ダンスが終った夜に/墓碑銘/頭をよせて/ドラゴン真夜中に踊る/19番/けだもの/秋日の午後/何もない土地には動く場所がある/独り舞台/ローレル・アンド・ハーディ、アルファ・ケンタウリさよならツアー/残りかす/夢街道いま一度/タンジェリーン/ほほえみは夏のように大きく/時の撚り糸/小麦畑の敵/フォア!/わが息子マックス/F・スコット/トルストイ/エイハブ緩衝機/それで、あなたの言い分は?/ディアーヌ・ド・フォレ/炉辺のコオロギ/隠喩、チャンピオンたちの朝食
和歌森太郎『山伏―入峰・修行・呪法』中公新書・1999年
《兜巾、白衣の結袈裟、錫杖をつき、笈を背に法螺貝をふく、いまでも出羽三山、大峰山中に出没する山伏――。年二回先達に従って入峰し、水断、穀断、懺悔、相撲などの苛酷な修行で体得した験力により、加持祈祷の呪法を行なう彼らのなかには、中世の最盛期を過ぎると修行を忘れ、まじない師に堕するものもあらわれた。本書は、民間信仰に仏教が結びついて完成された修験道の真髄を、山伏の奇怪な行事、生態のなかにさぐる。》
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