【十五句抄出】マブソン青眼句集『妖精女王マブの洞窟』

2023年6月
本阿弥書店

　『妖精女王マブの洞窟』はマブソン青眼（1968 - ）の句集。

　著者は「海原」同人。

 

 

 

 

 

初凪や地球にLONG COVID数知れず

子の将来を思えばマムシ通りけり

こんなにも　ゆっくり飛ぶか　孤島の蝶

大氷柱を摑んで不死身になろうか

ニホンという広き刑務所月朱し

マスクしても異人と覗(み)られ花薊

潮干ゆく吾子日本人我異人

　　　カンボジア戦跡　四句　より
元旦の仏像のごと象の糞

空飛べぬ人間ばかり　雪に血痕

プラスティック袋の遺体袋寒いだろう

本五冊抱いてドンバスの老女逃げる

生放送で子の爆死見ゆ寒暁見ゆ

花火見るたびウンチする赤子かな

肌に風当たりてここを「地球」という

木々に雪バッハの後の無音

 

 

 

※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。