『遠き船』は松野苑子(1947 - )の第3句集。
著者は「街」同人会長。
東日本大震災
津波警報子猫二匹の上に鳴る
ガーベラや厚き手紙の恐ろしき
万緑や蹄鉄打つに馬静か
だんだんに海月の姿となりし水
王冠のやうな夜景と秋の蚊と
江戸地図のここを貨車行く野分晴
蝸牛ピシと音して踏まれたる
夏蒲団と私の体との隙間
花屑にまみれてバスの冥さかな
カンナ老ゆその柔らかきところから
指入れて指長くなる泉かな
ががんぼの夜の鏡を落ちてゆく
母(享年九十六)
息せねば母は骸や夏の月
象の背を流れてをりぬ秋の雨
皆マスクして異界へと行く列車
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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