『麦藁帽』は大崎紀夫(1940 - )の第11句集。
著者は「やぶれ傘」主宰、「棒」同人。
冴ゆる夜の水脈を引きゆくヌートリア
チヴィッタ・ディ・バニョレージョ 二句 より
首振つてラバ立ちあがる春の午後
春の蠅そばにボルヘス『伝奇集』
自転車を止めてバナナを食つてゐる
灼けてゐる磧へ舟の渡し板
提灯に雨降つてゐる盆やぐら
栗の毬ばかりの道をしばらくは
菊を焚くけむりが道に出てきたる
牡丹見る午前一時の窓開けて
釣り宿の魚拓に蠅がとまりゐる
うみうしを棒でつついてゐる炎暑
鶏頭のふたつみつつに触れにけり
棒きれが立つて流れてゆく残暑
ゆく秋の市電のパンタグラフに火
月あかり届くところにゐる海鼠
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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