謹賀新年。
冬季鬱悪化で読めた冊数は普段の半分もいかなくなった。というよりも数年前から冬場は食事や最低限の締切をこなすだけで息絶え絶えな感じなので、年賀状を書くのはもう諦めた。海東セラ『ドールハウス』は著者から寄贈いただきました。記して感謝します。
渡辺淳一『野わけ』角川文庫・1982年
《24歳の血液検査技師・有沢迪子は、ふとしたことから上司の阿久津恭造と深い関係になった。相手が妻子ある男性であることを知りながら、迪子はしだいに阿久津に傾斜してゆく。やがて病気の妻から阿久津を奪い、身も心も独り占めにしたい熱情にかられる。
そして阿久津の妻の突然の自殺――迪子は、吹きすさぶ野わけの道をひとりで生きて行こうと決意する…。
京の四季を背景に、繊細な心理描写を織りこんで綴る華麗な愛のロマン。》
なんごくピヨーコ『悪役令嬢改め、借金1億の守銭奴令嬢です』アルファポリス・2015年
《ある日、白鷺百合子は自分が乙女ゲーム世界の悪役令嬢であることに気づく。しかも、どうやらこの世界はループし続けているらしい……!? 同じ時を繰り返す原因は、主人公が完全クリアを目指し、何度も何度もゲームをやり直しているからだった。
物語のやり直しのたびに、借金を抱えた家が没落し、婚約者に捨てられ、悲惨な末路を辿る百合子。しかし、自分の置かれた状況に気が付いた彼女はループを破り、明るい未来を勝ち取ろうと決意した! 百合子は物語そっちのけで、1億円の借金返済のため土地と株の売買や、新ビジネスに奔走する。
だが、女子からの嫉妬で妨害を受けたり、アイディアを盗用されたりと、お金稼ぎは一筋縄ではいかなくて――!?》
海東セラ『ドールハウス』思潮社・2020年
《空間のプリズム
ふり向いてごらんなさい、背後はどこまでも開かれている、ここはあらかじめ不完全にオープンな部屋です。
(「ドールハウス」)
鳥が尾羽をひらいた下廻り階段、屋根裏の気室、永久を夢見る台所……住まう構造とひとの時間がからまってはほどけ、ランプの火影に空間のポエジーが踊りだす。独創的な22篇の小世界。》
渡辺淳一『冬の花火』角川文庫・1979年
《昭和29年春、戦後の歌壇に突加、彗星のように登場した「乳房喪失」の歌人・中城ふみ子は、ひときわ妖しく鮮烈な光芒を曳いて、その夏、札幌医大病院の暗い病室に、31歳の生涯を閉じた。
没後20余年、当時、同じ大学の医学生であった渡辺淳一は、後、直木賞を受賞し、現代のロマンを語る作家として不動の地位を確立した。本書は、著者が年来のテーマに、数年の歳月と情熱を注いだ中城ふみ子の伝記的小説である。
北国の野に、街に、そして死の迫る癌病棟に、美貌と天才に恵まれながら、短く激しい生命の炎を燃やし尽し、夭折した女流歌人の奔放華麗な愛の遍歴と、死に至るドラマが展開する――》
今井茶環『恋するパパは鬼に金棒』セシル文庫・2017年
《都心から離れた田舎町の神社にバイトをするためにやってきた桃里。迷子になり暗くなってからやっとたどりついた神社には鬼のコスプレをしたイケメンがひとり立っていた。彼はなんと本物の鬼神だと言う。本気にしなかった桃里だったが、途中捨てられた瀕死の赤ん坊を見つけ、鬼神の力で救ってもらったため、信じざるをえなくなってしまった。その上、赤ん坊は鬼神と桃里が一緒に育てることになり!?》
藍川せりか『シッター執事の子育てレッスン』セシル文庫・2017年
《新米執事の青山は子どもの面倒をみるのが上手いということで財閥の北条家に引き抜かれる。北条家にいってみると当主の涼太郎は離婚をしたばかりで、しかも女性に幻滅したため、屋敷には女性をいれたくないらしい。涼太郎に屋敷の管理とともに幼稚園児の悠の母親がわりになるように言い渡され、戸惑う青山だったが――。悠をしっかり育てようと奮闘する青山は涼太郎と衝突し!?》
墨谷佐和『小児科医は子連れ刑事に恋をする』セシル文庫・2017年
《祖父が経営していた小さな病院の跡を継いだ小児科医の真琴。引き継いですぐに強面のシングルパパ・桐生とその息子・凛がやってくる。まだ1歳児の凛はアトピー体質で喘息持ち。病院とは切っても切れない体質で、その上、人見知りということで、桐生も手を焼いていた。だが凛は真琴にはよく懐き甘えてくるので、真琴もこの父子が気になり出して面倒をみるようになるが――。》
大崎清夏『新しい住みか』青土社・2018年
《すきな絵を忘れてもわたしは平気だろう
自分の野蛮な魂に自信をもつだろう (「炊飯器」)
中原中也賞を受賞した『指差すことができない』から四年。気鋭の詩人、待望の新詩集
動物の沈黙に
いまを生きる知恵を聴きとり
見晴らしのいい居場所を切りひらく、
伸びやかな言葉の大移動》
三角みづ紀『詩集 どこにでもあるケーキ』ナナロク出版・2020年
《三角みづ紀の第8詩集は、詩人が自身の思い出を重ねながらひとりの13歳を描いた33篇の書き下ろしです。誰もが感じてきた変わっていく心と身体と家族との関係性、教室の疎外感や世界の美しさを、失った記憶が蘇るように描きだします。タイトルの『どこにでもあるケーキ』をはじめ、一見すると否定的な言葉に、どこかそうありたいとも願う繊細な感情を見事に詩にしています。すべて一人の目線で描かれるため、主人公のいる短い物語としても読める、親しみやすい一冊です。》
岡本啓『絶景ノート』思潮社・2017年(萩原朔太郎賞)
《第25回萩原朔太郎賞受賞!
一つの模様の一つのホツレにさえ
気が遠くなるほどの手仕事が重なり合っている
ふとはるかな巡礼の予感がある
ながい荒れ狂う季節の刺繍
(「巡礼季節」)
「絶景ノ音、離陸間際のふいの静けさ――。(…)この一冊が、だれかの忘れ物のノートのように、ふとそこに轟音と静けさをもたらしてくれたら」(あとがき)。緑の丘の線、花粉でスれた糸綴じノート。中原中也賞とH氏賞を史上初めてW受賞した詩人、疾駆する第2詩集! 著者自装。》
小笠原鳥類『鳥類学フィールド・ノート』七月堂・2018年
《生き物たちの安全で安心な楽園はどこだ
みーんなこの地球の仲間たち
おはようございます
小笠原鳥類の入門書ともいえる一冊。
編集や装丁は、詩人の榎本櫻湖によるものです。
現代詩手帖やフリーペーパー、ブログなどに発表された詩に書き下ろしの作品を収録。》
森奈津子『先輩と私』徳間文庫・2011年
《T女子大学好色文学研究会の会員・光枝は、会長の阿真理先輩(ロリ巨乳系)に淡い恋心を抱いている。それを知ってか知らずか先輩はつれなくて、オナニーによる女性の真の自立と解放を叫ぶのみ。光枝は仕方なく、エッチな小説を書いて自らを慰める、しょんぼりな毎日。そこへライバルサークルの会長、華代の魔の手が。笑いとエロスが奇跡の融合を遂げた、著者の真骨頂。女だらけの官能小説。》
アンドレ・ノートン『ゼロ・ストーン』ハヤカワ文庫・1986年
《名うての宝石商人の父から見せられた奇妙な指環――人間の倍以上はある指に合わせてつくられたような大きいリングに、くすんだ色の丸石がついたその指環に、ぼくはなぜか心を惹かれた。しかも、宇宙空間を漂流していた死体が指にはめていたものだという話をきいて、ぼくの興奮はますます高まった! だが、そのときのぼくには知るよしもなかったのだ――やがて、その指環に引きずられるようにして宇宙へ旅立ち、猫型エイリアンのハートと出会って、指環をめぐる苛酷な戦闘に巻きこまれてゆくことになろうとは……冒険SFの第一人者が放つ傑作スペースオペラ!》
ジョーン・ヴィンジ『レディホーク』角川文庫・1985年
《城壁に囲まれた町、アクィラ。そこは悪魔に魂を売った大僧正が支配する、邪悪の町だった。
いま、その町へと逞しい黒馬を進める男が一人。その腕にはきらめく緑色の目をしたみごとな一羽の鷹がとまっていた。男の名はナヴァレ。その胸にたぎるのは、彼とその恋人イサボウに恐ろしい呪いをかけ、町から追放した大僧正への復讐の思いだった。
二人は今も一緒だった。だが決して愛しあうことはできず、互いの姿さえも見ることができない。大僧正のかけた呪いが、夜と昼、二人をまったく別の世界に封じこめてしまうのだ-
中世の悲恋物語と変身伝説に材をとり、波乱万丈の展開のうちに描く、剣と魔法の物語。》
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