『泥天使』は照井翠(1963 - )の第6句集。
著者は「暖響」「草笛」同人。
海嘯(かいせう)の弧を保ちつつ陸(くが)呑みぬ
しら梅の二度頷きて呑まれけり
三・一一死者に添ひ伏す泥天使
三月の君は何処にもゐないがゐる
初螢人を吞みたる川のへり
ひとりづつ呼ばるるやうに海霧(じり)に消ゆ
寒念仏(ねぶつ)津波砂漠を越えゆけり
仔猫クロ泥の胎(はら)より生れけり
分かるのか二万の蝉の溺死なら
泛ぶたび見知らぬ町や鳰(かいつぶり)
冬雀膨らみてゐてがらんだう
人吞みて光の春となりにけり
雛まつり遺影外され伏せらるる
また春が来るのか泥に沈むのか
コロナにて死ねば抱かるる柩ごと
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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