もともと出不精なので新型コロナウイルスによる生活パターンへの影響はあまりないのだが、外での仕事がいくつか中止になってしまった。あと寒暖差がこたえているらしくて、3月下旬から内容の硬軟に関わらず何も読めなくなった。
存在だけは知っていながら実物を見たことがなかった眉村卓『ながいながい午睡』(三一書房、1969年)が、唐突に古本市で手に入った。
潘恵子『愛情星占い―相性のいい星座を見わける法』は、その眉村卓の角川文庫作品と同じく、版画家の木村光佑が装幀を手がけているため、表紙と裏表紙の絵が欲しさに買った。
若桜木虔『恐怖の異次元大地震』秋元文庫・1980年
《東京都杉並区富士見ヶ丘にある星華学院は、ここに通学する生徒たちから、杉並のSと富士見ヶ丘のFをとって、通称SF学園と呼ばれている。それというのも、星華学院は幼稚園から大学まである総合学園で、大学の工学部には付属コンピューター研究所があり、このコンピューターが授業の始業終業の合図から温度調節、図書館の書物の分類から全生徒の成績の記録、といった細々としたことまで引受けていて、実にSF的な雰囲気があるからなのだ。さてこの物語は、第一話の「未知からの侵略者」に続いて、そのSF学園で起こった奇怪な事件の第二話である――》
若桜木虔『二つの影の挑戦』秋元文庫・1980年
《東京都杉並区富士見ヶ丘にある星華学院は、ここに通学する生徒たちから、杉並のSと富士見ヶ丘のFをとって、通称SF学園と呼ばれている。それというのも、星華学院は幼稚園から大学まである総合学園で、大学の工学部には付属コンピューター研究所があり、このコンピューターが授業の始業終業の合図から温度調節、図書館の書物の分類から全生徒の成績の記録、といった細々としたことまで引受けていて、実にSF的な雰囲気があるからなのだ。さてこの物語は、第一話の「未知からの侵略者」第二話の「恐怖の異次元大地震」に続いて、そのSF学園で起こった奇怪な事件の第三話である――》
若桜木虔『消失人間の謎』秋元文庫・1980年
《東京都杉並区富士見ヶ丘にある星華学院は、ここに通学する生徒たちから、杉並のSと富士見ヶ丘のFをとって、通称SF学園と呼ばれている。それというのも、星華学院は幼稚園から大学まである総合学園で、大学の工学部には付属コンピューター研究所があり、このコンピューターが授業の始業終業の合図から温度調節、図書館の書物の分類から全生徒の成績の記録、といった細々としたことまで引受けていて、実にSF的な雰囲気があるからなのだ。さてこの物語は、第一話の「未知からの侵略者」第二話の「恐怖の異次元大地震」第三話の「二つの影の挑戦」に続いて、そのSF学園で起こった奇怪な事件の第四話である――》
村上春樹『1973年のピンボール』講談社文庫・1983年
《さようなら、3フリッパーのスペースシップ。さようなら、ジェイズ・バー。双子の姉妹との〈僕〉の日々。女の温くもりに沈む〈鼠〉の渇き。やがて来る1つの季節の終り――『風の歌を聴け』で爽やかに80年代の文学を拓いた旗手が、ほろ苦い青春を描く三部作のうち、大いなる予感に満ちた待望の第二弾。》
赤江瀑『ポセイドン変幻』集英社文庫・1994年
《何者かの手に招き寄せられるように、二人の女が旅立っていった山陰の海。そこには一匹の巨大な海魔に憑かれた青年と“地獄”が待っていた――「ポセイドン変幻」。他に「恋牛賦」「灯籠爛死行」など、夢幻のエロスのなかに、清冽なリリシズムをたたえる著者独壇場の小説世界。》
収録作品=恋牛賦/春猿/ポセイドン変幻/ホタル闇歌/灯籠爛死行/八月は魑魅と戯れ
光瀬龍『異境』ハヤカワ・SF・シリーズ・1971年
《光瀬龍の創造したSF宇宙に生きる人々には決して輝かしい勝利は訪れない。敗北と冷遇だけが彼らに与えられる運命だ。しかし、このやりきれない状況には不思議に隠湿な悲惨さはなく、ただ生きることに懸命にしがみつく生命の乾いた悲しみだけが感じられる。それは、彼が個体の運命を遙かに超えた宇宙の創造者としての視点に立ち、宇宙における生命そのものの消長を冷静に見すえようとするからであろう。しかも、拡大し続ける彼の宇宙は多くの世界を呑み込み成長し、さらに確固とした実体を具えて読者の探索を待ち受けるのだ!
*
人間の大脳を操る恐るべき細菌に犯され、極限状況に置かれて苦闘する宇宙の男達の物語『スペース・マン』木星の厳しい自然に弄ばれ、死の淵に立ちながらも名誉のためにいがみあう醜い地球の人間と、生への執着に忠実たらんとするスペース・マンとのギャップを描いた『異境』など、彼のSF宇宙を独特の筆致で謳いあげた短篇のほか、時代物にも著しい進境を見せる彼が、歩く首なし死体、乞食の姿をしたタイム・パトロール員など、様様の道具だてを駆使した『多聞寺討伐』『飼鳥夜草紙』などの一連の作品を併せて収録!》
収録作品=スペース・マン/廢墟/市二二二〇年/異境/雑司ヶ谷めくらまし/飼鳥夜草子/多聞寺討伐/追う/エトルリア二四一一年/訣別/クロスコンドリナ2/錆びた雨
眉村卓『ながいながい午睡』三一書房・1969年
《未来の産業社会を痛烈に描くSF界に新風を送る眉村卓の作品集!》
《ぼくは以前、なぜ俳句を作るのかといわれて、「形而下から形而上に入る魅力――非常によくできたショート・ショートの味ですね」といったことがあるようです。それが今でもそう思うのか、また、この逆は成立するのか、と問われれば、さっぱり判らなくなったとしか答えようがないのも、また事実なのですが……。ともかく、
吹雪く野と異次元全速でも澱む
というところが、あんがい本音なのかも知れません。(著者「あとがき」より)》
《SFは日本でも最近ようやく注目されてきたが、そのなかでも、未来の産業社会をテーマに取り組んだ作品は数少ない。眉村卓という作家は、大学で経済学を専攻し、会社勤めという職歴もあって、こういった題材に強い関心をもっている。だから彼の描く世界は、時には産業エリートの未来像であったり、ロボットで運営される企業であったりする。国民の大多数が勤労者である日本においては、彼の作風はやがて大きく注目されるにちがいない。眉村卓はいろいろな意味で、今後、おおいに期待できる作家である。(は)》
収録作品=名優たち/われら人間家族/父と息子/ランナー/くり返し/廃墟を見ました/世界は生きているの/大当たり/誰か来て/行かないでくれ/ふくれてくる/女ごころ/応接マナー/ムダを消せ!/委託訓練/面接テスト/忠実な社員/黄色い時間/暗示忠誠法/特権/夜中の仕事/のんびりしたい/土星のドライブ/アンドロイド/仕事/旅の終わり/家庭管理士頑張る/自動車強盗/ミス新年コンテスト/物質複製機/獲物/はねられた男/落武者/安物買い/よくある話/なつかしい列車/動機/酔っちゃいなかった/役立たず/晩秋/スーパーマン/雪/終わりがはじまり/怨霊地帯/目前の事実
五十嵐一『音楽の風土―革命は短調で訪れる』中公新書・1984年
《シャーが去り、ホメイニー師が帰ってくる、その時に、テヘランの巷で聞えた唄声はどのように変わったか。訣れは長調で歓迎は短調で聞えた音楽は何を意味したのだろうか。革命の渦中で三年間を暮した著者は、イスラームの宗教風土とその民族音楽の研究を通じて、西洋文化圏を支配してきた平均律とまったく異質な音楽世界を見出す。トルコ行進曲や教会ミサ曲の原型をたずねて、これまでの西欧中心の音楽文化観の見直しをはかる。》
阿刀田高『黒い箱』新潮文庫・1988年
《黒い箱を抱えた男が空を飛ぶのを見たのが白昼夢の始まりだった。家に帰ると、妻が行先も告げずに旅に出てしまっていた。仕事部屋に行ってみると、見知らぬ女が勝手に上がりこんでいた。新手のコールガール? 泥棒? それとも気がちがっているのか?――わけが分からないままに奇妙な黒い箱に翻弄された男の微熱を帯びた九日間。空想と現実のあわいに展開する本格ミステリー長編。》
眉村卓『出張の帰途』祥伝社ノン・ポシェット・1990年
《出張の帰途、坂田信一はがら空きのローカル線に乗った。明日は休みなので、のんびり帰ればよかった。しばらくして、手帳を忘れたことに気づき、坂田はうろたえた。仕事の記録や予定をびっしり書き込んだ大切な手帳である。あわてて列車を乗り換え、先はどの駅に舞い戻った。すると、手帳を拾ったらしい若い女が坂田ににじり寄ってきた。それが、恐怖の始まりだった。(「出張の帰途」より)平穏に始まったはずのあなたの一日が、些細なきっかけから恐怖に変わるサスペンス傑作集!》
収録作品=ペラペラの名刺/酔えば空白/つかの間の草原/ひょうたんの中/出張の帰途/豪雨の中/返上者章/うつつの崖/秋のめざめ
眉村卓『それぞれの遭遇』ケイブンシャ文庫コスモティーンズ・1988年
《眠っている間に自分の身体が別の場所にあるなんてことが、森田茂に実際におこった。気がつくと、そこは地球を遠くはなれた多元宇宙の未来都市ビュロウだったから、パニック! 複雑な構造の建物のなかに監禁された茂は、転移交換装置によって、ビュロウのエゲラという男と入れかわったのを知る。一方、地球の小さな島国、日本の茂の部屋には、エゲラが現われ、“私はこの世界を支配するのだ”と叫んで街に出て行ってしまう。茂の両親や警察が右往左往するなか、エゲラは子供を人質にとった――。日常と未来が入り交じるドキドキハラハラSF大冒険。》
國分功一郎・山崎亮『僕らの社会主義』ちくま新書・2017年
《社会が危機に瀕した時代にはいつも、大きな原則「グランド・セオリー」が必要とされてきた。ならば今こそ、それが語られるべきなのではないか?二一世紀現代にも似た一九世紀イギリスでは、数々の社会改革運動が起こった。当時の社会運動家たちが思い描いたのは、有産階級以外の人々も美的に豊かな生活を送れる社会だ。そこにあったのはマルクス主義一辺倒になる前の「あったかもしれない社会主義」だ。「豊かな生活」とは何を意味していたのか。自らがアクティヴィストでもある気鋭の若手論客二人が語り合い、今の自分たちが描くことのできるグランド・デザインを提言する。》
西村寿行『白い鯱』講談社文庫・1982年
《保守党の大長老、日本の黒幕第一人者の槐島佐吉は、過去に赤い国と、ある密約を結んでその地位を築いた男だ。密約の秘密を知るのは反体制作家のイワン。時宗首相の依頼を受け、仙石軍団はイワン救出に乗り出す。一方、KGBは仙石らの愛妾を人質として仙石軍団をシベリアに誘き出し、超人四人の皆殺しを策す……。》
岩田政義『鑑識捜査三十五年』中公文庫・1986年
《犯罪捜査の世界で“鑑識の神様”とよばれ、伝説化されている警視庁警視の、小説を圧倒するおそるべき体験記。「弾丸箱を追って」「手の甲に赤いひも跡」「死顔に化粧する」「ふしぎな現場」など四十話。》
池澤夏樹『セーヌの川辺』集英社文庫・2013年
《フランス・パリ郊外に位置するフォンテーヌブローに移り住んで一年。著者はエッフェル塔と東京タワーを比較しながら理想の国家のあり方を模索。電力の75%を原子力に頼るフランスでエネルギー問題を考え、サッカーW杯で起こったジダンの頭突きからナショナリズムに思いを巡らす。海外に暮らし、相対的な視点で捉えることで浮かび上がってくる日本のかたちを鮮やかに綴るエッセイ集。》
吉本隆明『源実朝』ちくま文庫・1990年
《中世期最大の詩人のひとりであり、学問と識見とで当代に数すくない実朝の心を訪れているのは、まるで支えのない奈落のうえに、一枚の布をおいて坐っているような境涯への覚醒であった。本書は、中世初期の特異な武家社会の統領の位置にすえられて、少年のうちからいやおうなくじぶんの〈死〉の瞬間をおもい描かねばならなかった実朝の詩的思想をあきらかにした傑作批評である。》
倉橋由美子『倉橋由美子の怪奇掌篇』新潮文庫・1988年
《夜になると体を離れて首だけが恋人のもとに通う娘の怪しげな恋慕と残酷な死「首の飛ぶ女」。長風呂がたたってガイコツになった少年の病名は突発性溶肉症と診断された「事故」。夢の中に現われる世にも醜悪な男のたくらみ「交換」。元宰相ボーブラ氏はいかにしてカボチャ顔になったのか「カボチャ奇譚」など、幻想・残酷・邪心・淫猥な世界を、著者独特の文体でえぐりだす怪奇短編20編。》
収録作品=ヴァンピールの会/革命/首の飛ぶ女/事故/獣の夢/幽霊屋敷/アポロンの首/発狂/オーグル国渡航記/鬼女の面/聖家族/生還/交換/瓶の中の恋人たち/月の都/カニバリスト夫妻/夕顔/無鬼論/カボチャ奇譚/イフリートの復讐
遠藤周作『あべこべ人間』集英社文庫・1985年
《予備校生の岡本茂は、実業家の金山から新しいタイプのモデルになるよう、勧められていた。「現代の美は、男でも女でもないミックス・セックスから生れる。君こそぴったりだ…」と。そして、秘かに開発された新ホルモン剤を注射、一夜にして美しい女性へと性転換するが……。現代人の心に潜む変身願望を背景に、若い男女の愛を軽快に描くユーモア長篇。 解説・佐藤愛子》
フランク・ハーバート『21世紀潜水艦』ハヤカワ・ファンタジイ・1958年
《時は二十一世紀。処は海面下8000フィートの深海。アメリカと東方陣営との間には、苛烈な最終戦争――原子戦争が戦われていた。戦況はわれに不利。しかも、相つぐ原子爆弾攻撃のために、アメリカ大陸のすべての油田を失った西方陣営の原油の欠乏は深刻だった。誰一の希望は、東方陣営の持つ巨大な海底油田から、原油を略奪することだ。だが……その任務で出発した潜水油送船は、二十隻が二十隻全部海の藻屑となり終せたのだ。志気は衰え、危機はアメリカと西方陣営とに迫っていた。このとき、原子力潜水艦フェニアン・ラム号に乗り組んだ新任電子技術士官ジョニー・ラムゼイの受けた特別任務とは……。
☆
これは単なる未来戦争小説ではない。限界状況に置かれた四人の男の人間性が、機械の谷間の中でいかに反応しいかに闘うか。多数の評論家から1956年度の最高傑作と折紙をつけられた最新の科学小説である。》
脇圭平・芦津丈夫『フルトヴェングラー』岩波新書・1984年
《今世紀最大の指揮者フルトヴェングラーが没して三十年、その名声は現在も高まる一方である。彼の芸術と人間像をドイツ現代史のうちにとらえ、芸術論以外にも広く亡命・非亡命、ドイツ的精神、有機体と共同体といった諸問題について論じる。丸山真男氏との鼎談「フルトヴェングラーをめぐって――音楽・人間・精神の位相」を収録。》
白井祥平『呪いの遺跡ナン・マタール―失われたムー大陸の謎を解く』いんなあとりっぷ社・1977年
《人類が安住の地を求め移動を繰り返していた先史時代のある時期、おびただしい労働力を犠牲にし、南海の島に厖大な巨石建造物が築き上げられた。それは軍事要塞か、それとも文明の象徴なのか。この難事業を完成させたのは? ナン・マタール伝説の中に見え隠れする失われたムー大陸の影》
岡真史『ぼくは12歳』角川文庫・1982年
《1975年夏、雷光に引き裂かれた夜空に向って、ひとりの少年が身を投げた。岡真史、十二歳。賢く、素直で明朗な少年だった。
少年は一冊のノートを残していた。そこには心あたたまるやさしさと透明感あふれる詩篇が綴られていたが、すでに「現実」との不協和音をもかなでぱじめていた。おとなへの旅立ちを前に、少年の心の中の「天使」が大空ヘ飛び立っていったのだろうか。》
荒巻義雄・合田一道『義経伝説推理行』徳間文庫・1993年
《彗星のごと歴史の檜舞台に登場し、天稟の機略によって平家一門を殲滅、しかし兄・頼朝の不興を蒙り、悲劇の最期を迎えたうたかたの英雄・義経。史書に記された足跡はわずか八年余。生涯の儚さゆえに数々の物語・伝説が生まれた。
義経生存を裏付ける伝承は、今も東北以北の各地に残る。長年月にわたる丹念な史料検索と伝承の渉猟により、陸奥の地にもう一つの歴史風景を望観する、歴史ロマン紀行。》
五人づれ『五足の靴』岩波文庫・2007年
《明治40年盛夏。東京新詩社の雑誌『明星』に集う若き詩人たち――北原白秋、平野萬里、太田正雄(木下杢太郎)、吉井勇がいさんで旅に出た。与謝野寛との五人づれは長崎・平戸・島原・天草と南蛮文化を探訪し、阿蘇に登り柳川に遊ぶ。交代で匿名執筆した紀行文は新聞連載され、日本耽美派文学の出発点となった。(解説=宗像和重)》
和久峻三『小鬼たちの熱い眼―円相場仕掛人』角川文庫・1982年
《ドルは各国の通貨の“ものさし”のはずであった。だが、所詮は一国の通貨にほかならず、必要とあらば、いつでも印刷できる“紙”なのだ。
ワシントンDCの一画で企てられた巨大な円相場の陰謀――米国財務省秘密代理人の弁護士・アトキンズは、大銀行の頭取を訪ね、最高機密である〈Y作戦〉を秘かに伝えた。その結果、日本経済はどん底につきおとされた。しかも陰謀には銀行乗っとりという新たな罠が仕組まれていた……。巨額の富を得る仕掛人は誰か?
国際的なスケールでミステリアスに展開される国際陰謀小説の傑作長編。》
アーサー・C・クラーク『未来のプロフィル』ハヤカワ文庫・1980年
《世界史はじまって以来、消費されたエネルギーの大半は人や物を ある場所から他の場所へ移動させるために使われてきた。20世紀は自動車と航空機という革命児を生んだが、これもまた、いまや新しい輸送手段の挑戦を受けている。現在、世界の各国で開発中の空気をクッションとしたGEM(地上効果車)である。未来とは、あっという間にやってくる。わずか100年前、家庭用電灯の着想はあらゆる専門家から鼻の先であしらわれ、今世紀初頭には 空気より重いものの飛行は不可能だと科学者に嘲笑され、50年前には「月ロケットなど100年前のテレビジョンの夢以上にほど遠い空想」と否定されていたのである。
SF作家、科学解説者として令名高い著者が、現代科学の最尖端を行く知識と、豊かなイマジネーションを駆使し、未来における 交通、宇宙、地底開発、天候管理、知能動物、不滅生命など、われわれの生活に密着したテーマを縦横に解説する!》
三田誠広『僕って何』河出文庫・1980年(芥川賞)
《母親に連れられて田舎から東京の大学にやってきた僕。受験勉強の他に何も知らない、母親っ子のこの僕が……いつの間にかセクトの争いや内ゲバに捲き込まれ警官に追っかけられたり、年上の女子学生と同棲させられたりしている……。
――僕って一体何をしたいんだろう! 現代の青春の旅立ちをあふれるユーモアで描き出して、芥川賞を受賞。若者たちの圧倒的な共感を集めるロングセラー。》
ジャック・ヒギンズ『謀殺海域』二見文庫・1987年
《英仏海峡で鎖を幾重にも巻かれた男の溺死体が発見された。ひそかに英国へ再入国せんとした暗黒街の大物だった。この事件から浮かび上がったのは密入国を援助する謎の組織の存在。その組織を壊滅させるべく、英国情報部員ポール・シャヴァスは犯罪者を装って接近をはかる。だが、組織の背後には意想外の陰謀が潜んでいた! 霧の英仏海峡に、雨に煙るフランスの湿地帯に孤高のスパイを待ち受ける死の危機。会心のアクション・ロマン。》
神吉拓郎『男性諸君』文春文庫・1985年
《『私生活』で第90回直木賞を受賞した著者の最初のエッセイ集。全篇に漂う“男のやさしさ”そして都会人ならではの含羞、エスプリ、ユーモア…ささくれだった神経も忽ちなごむこと請合い。短篇小説の名手は、また随筆も名人芸です。「古ビラメの洋酒煮」「夏のおズボン」「洗濯機最後の日」「湯気ぽっぽ」など59篇。 解説・矢野誠一》
檜山良昭『大逆転!レイテ海戦―栗田艦隊、レイテ湾に突入す!』カッパ・ノベルス・1988年
《1990年、米ソを中心とする東西両陣営は、緊張の度合いを深めていた。海上自衛隊の最新鋭潜水艦“おやしお”は、ソ連海軍の動きを追っていたが、原因不明の爆発に巻き込まれ、太平洋戦争最大の海戦・レイテ海戦の真っ只中にタイム・スリップしてしまった! 同時にソ連の通常動力型キロ級潜水艦・コテルヌイもタイム・スリップしたが、現状を把握できない彼らは、海上に浮かぶ米空母に次々と魚雷を撃ち込んだ! 攻撃を繰り返すコテルヌイを追う“おやしお”だったが、頭上には連合艦隊を待ち受ける米機動部隊が……!? 46年前のレイテ海戦に飛び込んだ海上自衛隊潜水艦の苦闘を描いた、書下ろし長編スペクタクル小説! 絶賛“大逆転シリーズ”第二弾!》
佐伯泰英『闘牛士エル・コルドベス1969年の叛乱』徳間文庫・1987年(PLAYBOYドキュメントファイル大賞)
《1960年代、極貧から身を起こし、闘牛界の頂点を極めたエル・コルドベスは、フランコ独裁体制下、〈奇跡の成長〉を歩むスペインの象徴だった。ビートルズが若者の魂を奪い、怪盗エル・ルーテが脱走を繰り返すこの時代、コルドベスをめぐる熱狂はどのようにして生まれ、組織されていったのか。そして'69年の叛乱とは何だったのか。闘牛士の栄光と挫折を通して、一時代のスペインを描き切った長篇ノンフィクション。》
潘恵子『愛情星占い―相性のいい星座を見わける法』角川文庫・1983年
《星占いというのは、人間の長所短所が実によくわかります。短い人生の中で、自分や相手のことがわかればとても助けになるものです。
この本では“理想的な愛のかたち”をどうすれば得られるか、恋愛・結婚・相性について女性の立場を中心にまとめたものです。彼の心を射とめるには、出会いの一瞬はいつの日かなど、くわしく教えてくれるでしょう。》
竹本健治『狂い壁 狂い窓』講談社ノベルス・1983年
《東京・大田区の高台に樹影荘と名づけられた古びた洋館があった。かつて産婦人科病院として建てられたもので、かたわらには鬱蒼とした樫の大木が生えていた。ここには六組の入居者が住んでいた。この樹景荘で怪事件があいつぐ。トイレの血文字、廊下の血痕、中庭の白骨……血塗られた洋館と住人たちの過去が、今あばかれる!》
湯川秀樹『半日閑談集―湯川秀樹対談集Ⅰ』講談社文庫・1980年
《感銘深い対談と鼎談
現代を生きること 梅棹忠夫
覚めるがごとく夢見るがごとく 上田正昭
鏡と船 小林行雄/上田正昭
創造的文化生む教育 村松喬
無用の用 W・M・スタンレー
創造への飛躍 小松左京
中国の学問と科学精神 吉川幸次郎
固定の理論について 市川亀久彌
日本人の原型を探る 司馬遼太郎
科学と人間と 梅原猛
世界平和のために ラルフ・バンチ
科学と文学 頴原退蔵》
湯川秀樹『科学と人間のゆくえ―湯川秀樹対談集Ⅱ』講談社文庫・1981年
《感銘深い対談と座談
人間の進歩について 小林秀雄
今日のヒューマニズム 広津和郎
日本人の伝統と文化 井上靖
学問と人間 大河内一男
科学と人間の未来 芦田譲治/渡辺格/大川節夫
古代史の周辺 上田正昭
科学と価値 江上不二夫
幼児の精神発達と創造性 市川亀久彌
科学と文化 梅棹忠夫
進歩の思想について 桑原武夫
よもやま話 朝永振一郎/山崎文男
無駄と減速 市川亀久彌
科学と芸術 加藤周一
地球・人類の未来のために 大来佐武郎》
小松左京『地図の思想』講談社・1965年
《これらの「裏の世界」は……全部が、現代的意味をもつとはいい得ないにしろ……現代日本のマクロな社会的動きの中に大きな影響をもっており……休火山のように……活動をはじめる状態にあることはたしかである。
……さまざまな、内部要因を定性定量的に、正確にとらえ、できるだけ精密な地図をつくること――いわば、「民族」の、膨大な無意識領域を、白日のもとに開明することは、ナショナリズムや、反動的右翼的エモーションや、新興宗教の台頭の「危険」を単に表面的、日常的次元において、「指摘」し、金切声の警告を発するよりもはるかに重要なことではないかと思う。 著者「あとがき」より》
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