半村良『産霊山秘録』(角川文庫)は全1巻版を最近入手したので再読。小中学生の頃、最初に読んだのは上下2分冊になってからの版だったので、こちらは個人的には見慣れないカバー絵(いずれも角川文庫の横溝正史本も手がけていた杉本一文の作品)。
西村京太郎が3点入っているが、そのなかで『十津川警部 トリアージ 生死を分けた石見銀山』(講談社文庫)だけ2011年と比較的新しめの刊行。これだけ装幀のセンスが明らかに違っていて、全面ビジネス書かテレビ画面のように文字だらけ。
杉本徹『天体あるいは鐘坂』(思潮社)は著者から寄贈いただきました。記して感謝します。
当ブログのこの書影シリーズ、ふだん俳句の本は除外しているのだが、寄贈本のうち持田叙子・髙柳克弘編著『美しい日本語 荷風Ⅰ 季節をいとおしむ言葉』(慶應義塾大学出版会)と、神野紗希『もう泣かない電気毛布は裏切らない』(日本経済新聞出版社)は俳句以外の内容が主なので例外的に入れました。こちらも感謝します。
荒巻義雄『紺碧の艦隊17―ウラル要塞崩壊』トクマ・ノベルズ・1995年
《「実は、日本は負けるのです、いったんは……」――大高首相はウランウデから蘇蒙鉄道でウランバートルヘ向かう途中、同行する前原たちを前に敗戦を予感させる謎めいた発言をした! 今やソ連が崩壊するのは時間の問題である。そうなれば、独ソ二つのランド・パワー国家ほまちがいなく連合する。その強大な力に対抗できるのはもはやシー・パワー国家の雄、日本しかいなくなる。まさにランド・パワーとシー・パワーの一騎討ち――迫り来る蒙古決戦を前に起死回生の極秘計画が進行する……。大高首相の真意と戦略とは?》
荒巻義雄『紺碧の艦隊18―東シベリア共和国』トクマ・ノベルズ・1996年
《照和二十五年五月――大高弥三郎はハバロフスクにいた。トロツキー新首相率いる東シベリア共和国発足の記念式典に出席したのも束の間、亜細亜各国代表との会談を精力的にこなした。さらに超長距離特急列車アジアン・エキスプレス、アジア号と乗り継いで訪れた大連で満洲鉄道首脳と会談、「国境なき亜細亜」の実現を訴えた。帰国後、極秘に国賓として迎えたロンメルのために、満洲の地に新国家樹立の用意があることを伝えた。大高の秘策はそれだけでなかった。何と自らの退陣を決意していたのである! いったいなぜ?》
荒巻義雄『紺碧の艦隊19―赤道大海戦』トクマ・ノベルズ・1996年
《独第三帝国の地中海大艦隊第二、第三艦隊は、カリブ海より出撃した米機動部隊要撃のため、アセンション島経由で南米リオデジャネイロ方面に向かいつつあった。これを阻止すべく紺碧艦隊は、新高杉艦隊と協同し、セントヘレナ島へ針路を向けた。前原の搭乗する司令艦・亀天号と紺碧艦隊攻撃主力は、敵航空機動艦隊、地中海大艦隊第二艦隊をいっきに殲滅すべく、セントヘレナ島北西西四五〇キロメートルの海域で息をひそめていた。日独一大艦隊決戦、いよいよ佳境に突入! 世紀の戦いの勝敗はいずこに……?》
荒巻義雄『紺碧の艦隊20―亜細亜の曙』トクマ・ノベルズ・1996年
《照和二十五年七月、大高弥三郎は首都ウランバートルの大地を踏みしめていた。ただちに美しい大草原をバスで疾走し、南ゴビ要塞司令部に到着した。間近に迫る蒙古決戦への大戦略を通達し終えると北京に向かい、周恩来と密会し、「庫倫無防備都市宣言」を提案し、亜細亜国連を調停機関とすることにより亜細亜の秩序を守る環境整備を万全にした。さらに蒙古方面防衛軍本部を訪れ、秘策「カンガルー作戦」の詳細を伝達し、ついに、ヒトラー率いる第三帝国との最後の戦いを待つのみとなった! 最終巻の行方はいかに?》
ロイド・ビッグルJr.『時の復讐』サンリオSF文庫・1982年
《かつて地球では私立探偵、現在は銀河統合体の第一評議員ジャン・ダーゼックにとって、こんなに困惑させられる事件は初めてだった。惑星ニフロンDが突加、太陽に変わってしまったのだ。すべての科学者は、そんなことは不可能だといっているが……。一方、銀河系の4分の1ほど彼方、惑星スカーナフで信じられないほど大量の放射能を浴びて醜く焼けただれた死体が発見された。古式の農業を営むその世界に核の施設など一つもないのにだ。ダーゼックは、この二つの事件に何かの関係があるとにらんで調査にのりだした。
さらに人口が密集し、工業も繁栄している惑星ベズプロに脅迫状が届けられた。10億の10億倍のカネと14歳から17歳までの女性を宇宙船に乗せて用意しろ。さもないとベズプロも新しい太陽に変えてしまう、と。誰か一級の科学者による犯罪なのか、それとも悪趣味で大規模な悪戯なのか。ミス・シュループの活躍も楽しいシリーズ第5弾!!》
野村美月『ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師様な件6』ファミ通文庫・2014年
《竜樹、聖羅が出席するため、ロマンシアの音楽祭に同行することになったシャール(♂)。船上で聖羅と過ごす楽しい時間を経てやっと到着! と思いきや、護衛のギルマーも加えたシャール争奪戦勃発! そんな中「世界を救ってほしい」とささやく赤い髪の美女がシャールの前に現れて……? さらにはポーラローズ姫と、コスプレ少年ヨルン、不気味な“終末教”まで登場し、音楽祭に不吉な影が迫る――。ファンタジー家庭教師コメディ、待望の第6巻!》
稀にしか出会わない、街景のうるんでゆく眺望――
この、地球の夜という水槽に
幾度も声にならないあいさつを、おくる
(「アクアリウム」)
「鐘坂、影坂、……いま急発進したバイクの後ろすがたはモノクロ、でも遠ざかるにつれ順々に、色彩をまとってゆく。」(「群青の」)。都市は黙示となって光と影が時間をつたう――。やがてこの惑星のはてにはるかな瞬間の眺望がひらく。5年ぶり、待望の第4詩集。カバー作品=村松桂》
川村二郎『語り物の宇宙』講談社・1981年
《伊吹山の天狗に妻を掠われ、山々を遍歴する「甲賀三郎」。地獄巡りの「小栗判官」。ギリシャ神話に通う「しんとく丸」。浄瑠璃、歌舞伎、説経節等に深く息づく庶民の英雄たち。柳田国男、折口信夫らの先駆的業績を踏まえつつ、遥かな神話、伝説に始源する「語りの世界」の魅力を豊饒な自立した言語表現として初めて本格的に論究する。現代文学の地平を新たな視点から照射する画期的文学論。》
野口武彦『江戸のヨブ―われらが同時代・幕末』中央公論新社・1999年
《安政地震・吉原遊女の義捐金、一生くすぶった旗本の私小説、ものみな踊りで終わる幕府の解体…幕末には現代日本があった! 江戸が発信するアナーキーの予言。》(「BOOK」データベースより)
丸谷才一『文章読本』中公文庫・1980年
《当代の最適任者が、多彩な名文を実例に引きながら、豊かな蓄積と深い洞察によって文章の本質を明らかにし、作文のコツを具体的に説く。最も正統的で最も実際的な文章読本。》
野村美月『ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師様な件7』ファミ通文庫・2015年
《「僕はグリンダ=ドイルじゃない」と竜樹たちに告白した矢先、ついに本物のグリンダがその姿を現わした。激しく動揺する聖羅に、「必ず戻って誕生日を祝う」と約束したシャールは、グリンダを追いかけ光の中へ! しかし、メレディスの森で置いてきぼりを食らったシャールが迷い込んだその先は、伝承で語られる二千年前の決戦の真っただ中! しかもシャールが“神託の黄金の天使”だって――!? 大人気ファンタジー家庭教師コメディ、最高潮の第7巻!》
野村美月『ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師様な件8』ファミ通文庫・2015年
《子供たちに胸を張れるような立派な大人になるため、グリンダを残し、エーレンを去ったシャール。だが何とか大学に合格し、外交官になるべく勉強をはじめたものの、ことあるごとに押しかけてくる聖羅に、振り回される日々を送ることになり――!? 十二歳、十四歳、十六歳と成長していく聖羅と、変わってゆく二人の関係。そして二千年前に飛んだ時に見た、十七歳の聖羅との“約束の未来”が訪れて……。大人気ファンタジー家庭教師コメディ、堂々フィナーレ!!》
神奈木智『無敵のLOVE POWER』アイス文庫・2003年
《図書委員の響は、最近貸し出し係が回ってくる日が憂鬱だ。なぜなら…校内でも有名な三人組が、決まって響をかまいに(?)現れるからだ。それも手に手に美味しそうなお菓子やランチをたずさえて…。成績優秀、ルックスよし、性格よしのお金持ちの(ちょっと変わっているけど)澄土、都乃生、浩介の三人がなぜ、自分を構うのか、響にはわからない。黒縁眼鏡、黒髪の地味~な自分の何が彼らのツボにはまったんだろう?中でも都乃生の眼差しは熱くて…。》
栗本薫『緑の戦士』角川書店・1995年
《緑、緑、緑。そこにあまりにも美しすぎる緑色の世界だった。そして人間のように言葉を話す花や木たち。――不思議な異空間フロリウムに迷い込んだちょっと物憂げな女子高生・水村るかは、伝説の花の騎士となり、悪の手によって連れ去られた王女フロラを救うために旅立つ。栗本薫が放つ新たなる冒険ファンタジー!!》
栗本薫『町』角川ホラー文庫・1997年
《新見貴広は、恋人の三島知佳子をドライヴに連れ出した。彼が目指したのは、誰も知らないような小さな町……貴広はそこで知佳子を殺してしまうつもりだった。だがたどり着いた町は、何かがおかしかった。――ここはどこだ。いまはいつなのだ? 町が、俺を見つめている?! そして貴広は、生を持たぬ者たちに囲繞されてゆく――。この世の果ての町に迷い込んだ男の恐怖。待望の書き下ろし長編!》
横田順彌『星影の伝説』徳間文庫・1989年
《ハレー慧星が地球に接近した明治四十三年、東京で若い娘が失踪し、記憶を失って戻ってくるという事件が相ついで起こった。警視庁刑事を兄にもつ黒岩時子の友人も被害にあい、時子に思いをよせる鵜沢龍岳が調査にのり出した。龍岳は、押川春浪主宰の〈冒険世界〉に科学小説を書き始めた新進作家だ。やがて、前回ハレー慧星が接近した時にも、同様の事件があったことをつきとめるが……。会心の書下し長篇!》
栗本薫『さらば銀河1』カドカワノベルズ・1987年
《身長二メートル六〇。体重は五〇〇キロに及ぶ。鋼鉄と合金によって造りあげられた超戦士、その名はブルー。銀河政府が生んだ最強の戦闘用マシン。辺境星区での苛烈な激戦のすえ部下全員を喪くし、彼は僅かな安息を求めクロノポリスへ降りたつ。「ブルー、あなたを探してた」忽然と現れたひとりの女。オリヴィア。天使の如く、王女の如く、七色を映す彼女の瞳に、ブルーは揺れた。曾て人間だった彼の心は何かを求めた。旅の始まりだった。恋。焦燥。喘ぎ。そして鋼鉄の接吻。永く遠い、常闇の孤独への旅。物語はいま、愛に彩られて宇宙へと向かう――。人気絶頂の著者が放つ書下しSFファンタジー、感動は数万光年の彼方へ。》
半村良『黄金奉行』祥伝社文庫・1994年
《“黄金奉行”とは、金山の不正を正すために徳川家康が設けた極秘の職である。代々その役に就く猿渡佐渡守のもとに、羽州天童で大量の辰砂が盗まれたとの報が届いた。辰砂を焼くと金の精錬に不可欠な水銀になる。盗賊たちは金鉱の鉉を見つけたのだ。奉行たち一行は直たに北上した。が、かの地では、天童九郎なる首魁が、奥羽復古に向けて反乱を興さんとしていた!》
持田叙子・髙柳克弘編著『美しい日本語 荷風Ⅰ 季節をいとおしむ言葉』慶應義塾大学出版会・2019年
《季節の和の文化に酔いしれる
永井荷風の生誕140年、没後60年を記念して、
荷風の鮮やかな詩・散文、俳句にういういしく恋するためのアンソロジー。
▼永井荷風「生誕140年・没後60年」記念出版。
▼荷風の美しい日本語を堪能できるアンソロジーを全3巻で刊行。
永井荷風の生誕140年、没後60年を記念して、荷風研究の第一人者で作家・持田叙子、気鋭の俳人・髙柳克弘が、荷風の美しい日本語を詩・散文、俳句から選りすぐり、堪能できる全三巻のアンソロジー。》
内田義彦『社会認識の歩み』岩波新書・1971年
《日本の社会科学の「高度成長」はめざましいが、一般の人にはますますよそよそしいものになっていくのは何故か。マキャヴェリ、ホッブス、スミス、ルソーなど、社会科学史上の結節点に位置する先人たちの知的遺産を読み解く試みを通して、一人一人が自らのうちにどのように社会科学的認識の芽を育てていくべきか、読者とともに模索する。》
黒崎宏『ヴィトゲンシュタインと禅』哲学書房・1987年
《肯定が否定であり、否定が肯定である「即非の論理」こそ禅の公案を解く鍵。これはたとえば、語り得ぬゆえに指し示されるほかない神は、神ではない、ということを証す論理ではないか。前期『論考』に発する論理実証主義、後期『探求』の影響下にある日常言語学派など、現代哲学の源流というべきウィトゲンシュタインの哲学によって禅の核心を解く。》(「BOOK」データベースより)
松本清張『異変街道(上)』講談社文庫・1989年
《幕府直轄の要衝、甲府勤番に役替されたばかりの鈴木栄吾が死んだ。死んだはずの栄吾に会ったという向両国水茶屋の主人が何者かに殺された。栄吾は生きている――、親友、銀之介は真相究明のため甲州街道を西へ馳る。そのあとを女が、そして岡っ引が、謎の影が追いかける。街道に異変がおきている――。》
松本清張『異変街道(下)』講談社文庫・1989年
《隠れ里、台里の秘儀。甲府勤番支配の山根伯耆守江戸屋敷と甲斐を結ぶ面妖な青日明神祠の点と線。絵馬に記された謎の符諜――。甲斐武田氏の隠された金脈をめぐる欲望が、人々を陰謀と殺戮へとみちびいたのか。栄吾の死をうたがう銀之介の目前で手がかりの糸はもつれ切断されて迷宮の深底へひきずりこむ。》
西村京太郎『南伊豆高原殺人事件』徳間文庫・1987年
《東京の神宮外苑で若い女性の暴行死体が発見された。解剖結果から、警視庁捜査一課の十津川警部は、よく似た暴行殺人事件が一週間前にも神奈川県平塚で起きていることに思い当たり、手がかりを求めて亀井刑事とともに、平塚に向った。だが、捜査の裏をかくように第三の死体が発見され、しだいに事件は意外な展開を見せはじめた……。東京―神奈川―南伊豆を結ぶ、人気絶頂の長篇トラベル・ミステリー。》
半村良『江戸群盗伝』文春文庫・1996年
《盗みとはアートなり。悪辣非道なお武家様には、きっちりと盗っ人の意地を見せましょう。立ちむかうはジゴロの間男七之助、忍び込み名人猫足の勘次、情報収集の達人貫太……。誇りのために手練手管の限りを尽す盗賊たちの技の冴え。大江戸の闇のネットワークを描いて、語り口巧みな悪漢小説の逸品です。 解説・清水義範》
五木寛之『スペインの墓標』実業之日本社・1976年
《青春の挫折そして孤独と虚無感に襲われる男たちの満たされぬ日々――ある者は見果てぬ青春の夢を追う。またある者は暗い翳を宿して彷徨する。日常生活に埋没する人々の心のなかの亀裂と不安を、鋭く描く五木寛之傑作小説集!!》
収録作品=スペインの墓標/優しい狼たち/フィクサーの視界/遙かなるカミニト/グラスの舟/夜のシンバル
松本清張『鬼火の町』文春文庫・1987年
《朝霧にかすむ大川に無人の釣舟が浮んでいた。やがて二人の男の水死体が流れ着く。現場の川底にあった豪華な女物煙管は謎を解く鍵か? 反骨の岡っ引藤兵衛にのしかかる圧力の正体は? 藤兵衛を助ける颯爽の旗本釜木進一郎、足をひっぱる悪同心、無気味な寺僧や大奥の女たちを配して江戸を舞台にくりひろげる長篇時代推理!》
柴田元幸・沼野充義・藤井省三・四方田犬彦編『世界は村上春樹をどう読むか』文春文庫・2009年
《村上春樹氏の作品は、初めて海外に紹介されてから20年以上経ち、今や30カ国を超える言語に翻訳されている。2006年には日本で村上作品をめぐる国際シンポジウムが開かれ、17カ国の翻訳家、作家、出版者が各国での「ハルキ事情」を縦横に語り合った。本書は、村上作品の魅力が多面的に語られたこのシンポジウムの全記録である。》
西村京太郎『無明剣、走る』角川文庫・1984年
《徳川綱吉の時代、幕閣の主導権をめぐる柳沢吉保と酒井但馬守との争いに巻きこまれた阿波二十五万石。藩をわがものにせんとする奸賊、江戸家老の野望。幼い藩主を助ける、浪人隼人、闇の棟梁仏の源十郎、豪商鳴門屋重兵衛。阿州剣山に眠る巨額の埋蔵金は、誰の手に? 鬼才が初めて挑む長編時代小説。》
半村良『産霊山秘録』角川文庫・1975年(泉鏡花文学賞)
《本能寺・関ケ原・幕末そして戦後…日本歴史に記録されているいくつもの動乱期。そこでは必ず謎の一族〈ヒ〉が暗躍したと伝えられる。
念力移動・遠隔精神感応……三種の神器を用い、人智を超えたその特殊能力を駆使して動き回る〈ヒ〉。そして今、時は戦国、一族の長、随風は信長に天下を取らせるべく活動を開始、白銀の矢となって全国の忍びのところへ飛んだ。
数百年にわたる〈ヒ〉一族の運命を描き、日本歴史に新角度から壮大な構想で切りこむ著者会心の長編伝奇SF。第一回泉鏡花文学賞受賞作品。》
西村京太郎『十津川警部 トリアージ 生死を分けた石見銀山』講談社文庫・2011年
《「十津川警部に告ぐ。十億円を支払え。さもなければ、石見銀山は爆破され、世界遺産の一つが消える」。犯人からの声明に当惑する十津川。しかし、かつて事件現場で十津川が下した治療順位判断(トリアージ)が原因で、足を切断した被害者が、石見銀山の傍に住んでいることが判明。因縁を感じる十津川。名警部の捜査が始まる!》
エドワード・W・サイード『人文学と批評の使命―デモクラシーのために』岩波現代文庫・2013年
《人文学の危機が現代にもつ意味とはなにか。人文学的価値観はいかにデモクラシーに寄与しうるか。生涯を通して人文主義者を体現したエドワード・サイード。他者の歴史と思想に反映する自己批判からこそ、正確な自己認識が生まれると説き、人文学の真の目的をここに論じる。人文学再生にむけた、サイード最後のメッセージ。(解説=富山太佳夫)》
波多野精一『時と永遠』岩波文庫・2012年
《波多野精一(1877-1950)は、近代日本における宗教哲学を体系的に確立した最初の思想家である。『時と永遠』は、波多野の透徹した哲学的思索の到達点を示す代表作。無常なる現世の時間性を克服する真の永遠性とは何であるのか。永遠への道は、不死性でも無終極性でもなく、「他者」との生の共同、愛の人格的交わりにおいて開かれる。(注解・解説=芦名定道)》
水野和夫『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』集英社新書・2017年
《資本主義の終焉によって、世界経済の「常識」が逆転した。経済成長を追求すると、企業は巨大な損失を被り、国家は秩序を失う時代になったのだ。生き残るのは、「閉じた経済圏」を確立した「帝国」だけである。
「長い21世紀」という五百年ぶりの大転換期に始まる、新しい「帝国」システム。そのもとで、米英・欧州・中露の経済はどう変わるのか? 日本を救い出す方策とは何か?
ベストセラー『資本主義の終焉と歴史の危機』で高い評価を受けたエコノミストが描く、瞠目の近未来図!》
飯島裕子・ビッグイシュー基金『ルポ 若者ホームレス』ちくま新書・2011年
《かつてホームレスといえば、50歳以上の男性が多数を占めてきた。しかし近年、貧困が若者を襲い、20~30代のホームレスが激増している。彼ら「若者ホームレス」は、なぜ路上暮らしを余儀なくされたのか。どのような家庭で生まれ育ち、どんな人生を歩んできたのか。若者ホームレス50人へのインタビューをもとに、若者が置かれている困難な状況を明らかにする。貧困が再生産される社会構造をあぶりだすルポルタージュ。》
岡田温司『マグダラのマリア―エロスとアガペーの聖女』中公新書・2005年
《聖母マリアやエヴァと並んで、マグダラのマリアは、西洋世界で最もポピュラーな女性である。娼婦であった彼女は、悔悛して、キリストの磔刑、埋葬、復活に立ち会い、「使徒のなかの使徒」と呼ばれた。両極端ともいえる体験をもつため、その後の芸術表現において、多様な解釈や表象を与えられてきた。貞節にして淫ら、美しくてしかも神聖な、〈娼婦=聖女〉が辿った数奇な運命を芸術作品から読み解く。図像資料多数収載。》
小池昌代・四元康祐『対詩 詩と生活』思潮社・2005年
《響きあう孤心
ボーニフッテモ カマワナイ
詩意識と生活意識の豊かな拮抗のうちに言葉を紡ぎ出す名手が、その亀裂と融和そのものを手探りする。交錯する2つのいま・ここ。現代詩のフロントラインに立つ注目の詩人が、矛盾と逆説をもって「私」をひらく鮮烈な試み。》
ジャック・デリダ『精神分析のとまどい―至高の残酷さの彼方の不可能なもの』岩波書店・2016年
《著者は、精神分析がその理論(欲動の経済論)に自閉せず自らを制約する彼方(残酷さの彼方)を思考することにより、主権とそれが横暴をあらわにする戦争や死刑とに対抗する言説を紡ぎだすよう促す。精神分析の衰退を背景として開かれた会議(2000年)における真摯で率直な提言であり、彼の倫理的思考の基本枠組みを示す好著。》
横溝正史『真珠塔・獣人魔島』ソノラマ文庫・1976年
《宝石王柚木老人が、全財産を投げうって作った秘宝・真珠塔。そのありかを示す暗号8・4・1は、いったい何を意味するのだろうか――名コンビ三津木俊助と御子柴進少年が、秘宝・真珠塔をねらう怪人金コウモリや、瀬戸内海の小島で世にも奇怪な獣人と対決する、横溝正史の傑作二作品を収録。》
神野紗希『もう泣かない電気毛布は裏切らない』日本経済新聞出版社・2019年
《俳句甲子園世代の旗手、待望の初エッセイ集
恋の代わりに一句を得たあのとき、私は俳句という蔦にからめとられた。
幼い息子の声、母乳の色、コンビニのおでん、蜜柑、家族、故郷……日常の会話や風景が、かけがえのない顔をして光り出す。
人は変わらないけど、季節は変わる。言われてみればそうかもしれない、と頷く。
定点としての私たちが、移ろいゆく季節に触れて、その接点に小さな感動が生まれる。過ぎ去る刻をなつかしみ、眼前の光景に驚き、訪れる未来を心待ちにする。
その心の揺れが、たとえば俳句のかたちをとって言葉になるとき、世界は素晴らしいと抱きしめたくなる。生きて、新しい何かが見たいと思う。(「あとがき」より)》
蓮實重彦『映画時評 2009-2011』講談社・2012年
《「身震いするほどの甘美な錯覚」
「目頭を熱くしての祝福」
「傑作とよぶことをためらうほどの途方もなさ」
3年間に見続けた、映画という名の奇蹟の数々
『チェチェンへ アレクサンドラの旅』/『我が至上の愛~アストレとセラドン~』/『チェンジリング』/『オーストラリア』/『グラン・トリノ』/『四川のうた』/『それでも恋するバルセロナ』/『私は猫ストーカー』/『セントアンナの奇跡』/『サブウェイ123 激突』/『アンナと過ごした4日間』/『イングロリアス・バスターズ』/『パブリック・エネミーズ』/『ユキとニナ』/『インビクタス/負けざる者たち』/『アバター』/『ノン、あるいは支配の空しい栄光』/『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』/『アウトレイジ』/『シルビアのいる街で』/『何も変えてはならない』/『ブロンド少女は過激に美しく』/『ナイト&デイ』/『クリスマス・ストーリー』/『ゴダール・ソシアリスム』/『アンストッパブル』/『ヒア アフター』/『ファンタスティック Mr.FOX』/『引き裂かれた女』/『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』/『奇跡』/『SUPER8/スーパーエイト』/『エッセンシャル・キリング』/『ツリー・オブ・ライフ』/『ザ・ウォード/監禁病棟』/『ミカエル』》
和田誠・三谷幸喜『それはまた別の話』文春文庫・2001年
《ビリー・ワイルダーについての対談相手に「三谷幸喜さんは?」といわれ「大賛成!」と答えた和田氏。中学のときに『お楽しみはこれからだ』を読んで以来、和田フリークを自任する三谷氏。出会うべくして出会った二人が「裏窓」から「トイ・ストーリー」、「ダイ・ハード」まで、映画マニアかつ実作者という立場から、ウラのウラまで語り尽くした対談集。》
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