装幀として懐かしいものは眉村卓と筒井康隆の再読を除くと今回はそんなになかった。
新城貞夫『前奏曲―魂には翼がある』、日原正彦『詩集 降雨三十六景』、八木幹夫『郵便局まで』はそれぞれ版元または著者から寄贈いただきました。記して感謝します。
赤江瀑『獣林寺妖変』講談社文庫・1982年
《関ケ原合戦のおり、千数百名の軍兵の血を吸って落城した伏見桃山城。その床板を使った洛北の禅寺・獣林寺の血天井を学術調査中、ルミノール鑑定にひときわ青く燃えたって発見された、新しい血の斑痕……歌舞伎の魔に挑み、燃え朽ちていった魂の咆哮を描く表題作のほか、「ニジンスキーの手」「禽獣の門」「殺し蜜狂い蜜」の阿片的魅力の代表作三篇も収めた、伝奇ロマン傑作小説集。》
収録作品=獣林寺妖変/ニジンスキーの手/禽獣の門/殺し蜜狂い蜜
花果唯『BLゲームの主人公の弟であることに気がつきました』ビーズログ文庫アリス・2017年
《男子高校生・天地央は気がついた。ここが前世の自分=腐女子が愛したBLゲームのクリア後の世界で、しかも主人公の弟に転生したことに! 兄の情事を覗けると喜ぶも、失恋した攻略キャラ達のその後も気になる! 彼らの新しい恋(ただしBLに限る)を見守ることこそが我が使命! と燃える央……だが気づけばクーデレな新キャラ相手にイベント発生?? 生BLを拝めるご褒美ポジが一転、メインキャラに昇格!!? 》
野村美月『ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師様な件』ファミ通文庫・2012年
《『グリンダ・ドイルを廃業する』そんな言葉を残して、“万能の天才”グリンダは、同盟国への派遣を目前に失踪した。このままでは国際問題に――というわけで身代わりとして白羽の矢が立ったのが、グリンダの双子の弟、つまりこの僕、シャールだった。いや無理! 僕男だし! 天才の姉と違ってニート予備軍の浪人生なのに! 抵抗も虚しく女装させられ、同盟国の王様一家の家庭教師をやることに……!? ファンタジー家庭教師コメディ待望の文庫化!》
野村美月『ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師様な件2』ファミ通文庫・2012年
《失踪した双子の姉、"万能の天才"グリンダ=ドイルの替え玉として、女装してエーレン王室の家庭教師をするはめになった僕、シャール(♂)。紆余曲折の末、王子や姫たちと仲良くはなれたけど、今度はなんと竜樹王子とイケメン騎士ギルマーから、同時に愛の告白をされてしまう! 突然のモテ期が――って男にモテても嬉しくない! 聖羅からは白い目で見られるし、アニスはお泊まりにやって来るし、一体どうすれば――!? ファンタジー家庭教師コメディ第2巻!》
野村美月『ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師様な件3』ファミ通文庫・2013年
《天才の姉・グリンダの替え玉として、女装して同盟国エーレン王室の家庭教師を務めている僕、シャール(♂)。濡れ衣を着せられたアニスのため、密室事件の謎を解くハメになったり(僕に名探偵役は無理!)、子供たちを引率してお祭りに行くことになったり(何故か僕を巡って竜樹王子と聖羅が張り合ってる!?)、今日もトラブルの種は盛りだくさん! けれどそのお祭りには、本物のグリンダが現れるという情報があって――。
ファンタジー家庭教師コメディ、第3巻!!》
野村美月『ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師様な件4』ファミ通文庫・2013年
《女装しての替え玉家庭教師生活にも慣れてきた僕、シャール。そんな僕を男と知らず慕ってくる竜樹王子に隣国から縁談が!? 是非これを機会に、真っ当に女の子と恋愛して欲しい。応援する気満々だったけど、やってきた姫が――うわぁ、アレ、何!? 竜樹王子は真っ青だし、双子達は僕を巻き込んで撃退作戦を練り始めるし、ど、どうしよう!?
聖羅との甘々短編「エーレン王室式・新婚さんゴッコ」等、番外編も盛り沢山のファンタジー家庭教師コメディ、第4巻!!》
宇田賢吉『電車の運転―運転士が語る鉄道のしくみ』中公新書・2008年
《時速一〇〇キロ以上の速さで数百トンの列車を率いて走行し、時刻通りにホームの定位置にピタリと停める......。このような職人技をもつ運転士は、何を考え、どのように電車を運転しているのだろう。また、それを支える鉄道の仕組みとはどのようなものだろう。JRの運転士として特急電車から貨物列車まで運転した著者が、電車を動かす複雑精緻なシステムと運転士という仕事をわかりやすく紹介する。》
新城貞夫『前奏曲―魂には翼がある』コールサック社・2019年
《一九六五年当時の沖縄は米軍占領下であり、沖縄戦の悲劇に加えて膨大な米軍基地に取り囲まれながら、新城氏はニーチェを手掛かりにして国家や社会や宗教などの支配から逃れようと、根源的な自由を「前奏曲」を響かせるように軽やかに書き記していたに違いない。(鈴木比佐雄「解説」より)》
日原正彦『詩集 降雨三十六景』ふたば工房・2019年
神香うらら『白薔薇王子~意地悪従者と淫らな呪い~』プリズム文庫・2011年
《ブランドル王国の第三王子・ニコルは、白薔薇を思わせる美貌の青年。最近の密かな悩みは、幼い頃から仕えてくれている側近のランスロットを無性に意識してしまうこと…。そんなある日、旅先の森で『乙女の乳首』という可憐な花を手折ったニコルは、魔女に呪いをかけられてしまう。それは、夜ごと乳首が疼き、男性のあるものをかけなければ鎮まらないという破廉恥極まりない呪いで…❤》
野村美月『ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師様な件5』ファミ通文庫・2014年
《女装&替え玉な家庭教師生活ももう半年ほど。生徒たちに懐かれたのは嬉しいけれど、聖羅が毎日メイド服を着て、お茶を淹れてくれるようになったのは絶対マズイ! それ以外にも、真面目で一途過ぎる竜樹王子に、ブラコン気味の更紗姫、その更紗姫にベッタリな織絵姫、お母さんっ子の真王子……特定の相手しか目に入らない問題児ばかり。彼らの世界を広げるため、“先生”として一計を案じた僕は――。ファンタジー家庭教師コメディ、好評第5巻!》
八木幹夫『郵便局まで』ミッドナイト・プレス・2019年
ライアル・ワトソン『アフリカの白い呪術師』河出文庫・1996年
《探検家の書き記した旧きアフリカに憧れ、十六歳で未開の奥地へと移り住んだイギリス人がいた。エイドリアン・ボーシャというその青年は、てんかん症とヘビ取りの才能が幸いして、白人ながら霊媒・占い師の修行を受け、アフリカの内なる伝統に迎え入れられた。
人類の三〇〇万年の進化を一人で再現することとなった男の驚異のドキュメント!》
辻真先『酔いどれ探偵李白―幻説楊貴妃』トクマ・ノベルズ・1994年
《唐は玄宗皇帝の治世。開元の治とうたわれた名君も政に倦み、楊貴妃にうつつをぬかす始末。悪宰相・李林甫の死因に毒殺説が流れ、警備にあたっていた方術士・葉法善に嫌疑がかかった。汚名をすすいでほしいともちかけられたのは詩仙・李白だ。宮廷を追われ、江南を旅していた詩人は再び長安の土を踏み、調査に乗りだす。厳重な護衛下にあった宰相を誰がどうやって殺害したのか? 折しも安禄山の乱が王朝を震撼させる。殺人事件の背後に、唐を滅亡へと導く大陰謀が隠されていようとは!! 酒豪詩人・李白の名推理!》
栗城偲『後輩が目を合わせてくれません』プラチナ文庫・2016年
《映研の後輩・主税と目が合わない。仲が良かった後輩の態度に落ち込む航流は、彼からの突然の告白に茫然とした。が、やっぱり目が合わない! 問い詰めると、好きすぎて緊張して顔が見られないと言う。呆れる航流だったが、抱きついて互いの顔が見えなければ平気と知り、慣れるまでくっついて過ごすことにした──けど、だからって電車の中でケツ揉むか!? このムッツリえっち!》
水上勉『爪』中公文庫・1975年
《縁日の夜、東京の下町から失踪した若い女性の死体が、北近江の余呉湖・で発見された。その爪を彩るピンクのマニキュアは何を物語るのか――終戦直後の混乱した社会状況を背景に、謎ときの興味をこえて深い人間の業を描く推理小説の傑作。》
西村寿行『汝は日輪に背く』徳間文庫・1987年
《一匹狼のヤクザ宮田雷四郎は、母の静代にせがまれシルクロードへと旅立ったが、数日後、静代はチベット山中で半狂乱のところを保護された。「雷四郎が殺された。警視庁の白川さんへ」とだけ言い残してだ。
かつてボルネオでの日本人誘拐事件で雷四郎とも知り合いだった白川と医師の剣持は仇を討つべくネパールへ飛んだ。だがそこは、密教と性交秘画の、妖しい禁断の地であった……。鮮烈のバイオレンス巨篇。》
水上勉『静原物語』中公文庫・1975年
《昭和十六年四月。桜の花のほころび初める洛北静原の里で、ひとりの男の死を追って、ひとりの女がみずからの若いいのちを断った――。蛇性の化身に渦巻く〈愛〉と〈業〉の修羅を描いて、水上文学に新しい境地をひらいた意欲作。》
かんべむさし『奮戦!リストラ三銃士』徳間文庫・2000年
《早期退職優遇制度で会社を辞めたが、再就職先の話が宙に浮いてしまった、大手電機メーカー課長の平田。上司にセクハラを受け、やむなく退職した春名さち子。高校中退、転職歴無数、ようやく落ち着いた印刷会社は社長が夜逃げ、バッグ一つで大阪から上京してきた長吉。そんな三人が出会って考えた。自分たちで会社を作り、いろいろなアイデアを売り込もう。しかし……。抱腹絶倒、長篇ユーモア小説。書下し。》
ウイルヘルム・ヴォリンガー 『ゴシック美術形式論』岩崎美術社・1968年
《ヨーロッパ中世に花開き、大聖堂で頂点を極めた「ゴシック美術」はどのように産み出されたのか? ドイツを代表する美術史家が、芸術を創造する人類の根本的衝動にまで遡り、ゴシックの内奥に潜む情念を鮮やかに描き出す。『抽象と感情移入』に続く主著。》(「BOOK」データベースより)
四方田犬彦『「かわいい」論』ちくま新書・2006年
《世界に冠たる「かわいい」大国ニッポン。キティちゃん、ポケモン、セーラームーンなどなど、日本製のキャラクター商品が世界中を席巻している。その市場規模は二兆円ともいわれ、消費社会の文化商品として大きな意味を担うようになった。では、なぜ、日本の「かわいい」は、これほどまでに眩しげな光を放つのか?本書は、「かわいい」を21世紀の美学として位置づけ、その構造を通時的かつ共時的に分析する、はじめての試みである。》
菅野昭正編『九鬼周造随筆集』岩波文庫・1991年
《『「いき」の構造』で知られる哲学者九鬼周造(1888‐1941)は、また情趣に満ちた味わい深い随筆の書き手でもあった。敬愛していた岡倉天心の思い出と母への慕情とが幼い日の回想のうちに美しく綴られた「根岸」「岡倉覚三氏の思い出」、偶然論を語りながら人生の無常に思いをはせる「青海波」など、24篇を精選した。》
水上勉『沙羅の門』中公文庫・1977年
《琵琶湖畔の古刹の一人娘千賀子が男友達とのゆがんだ愛に走ったのも、父と若い継母との同衾中をかいまみたからだったか――沙羅の木の花の香に殉じた奔放な女の底深い業を美しく哀しく描く長篇。》
カント『啓蒙とは何か』岩波文庫・1950年
《『プロレゴーメナ』を書き終えてから10年の間に発表した彼の歴史哲学に関する小論5編を収める。啓蒙とは何か、人類の進むべき道、人類の起源、世界の終わり、理論としては正しいが実際には役立たぬという批判などの興味あるテーマを、かれの哲学的原理を応用、一般の読者を対象に解りやすく論じたものである。》
古田博司『ヨーロッパ思想を読み解く―何が近代科学を生んだか』ちくま新書・2014年
《なぜヨーロッパにのみ、近代科学を生み出す思想が発達したのだろうか。それは「この世」の向こう側を探る哲学的思考が、ヨーロッパにのみ発展したからなのだ。人間の感覚器官で接することのできる事物の背後(=向こう側)に、西洋人は何を見出してきたのだろうか。バークリ、カント、フッサール、ハイデガー、ニーチェ、デリダらが繰り広げてきた知的格闘をめぐって、生徒との10の問答でその論点を明らかにし、解説を加える。独自の視点と思索による、思想史再構築の試み。》
磯崎新『造物主義論―デミウルゴモルフィスム』鹿島出版会・1996年
《デミウルゴスは「ティマイオス」においては造物主、グノーシス主義においては神の他者、フィチーノにおいては芸術家、フリーメーソンでは大宇宙の建築家、ニーチェにおいてはツァラトゥストラと姿を変えて語られてきた。そして今日ではテクノクラートのなかにエイリアンのように寄生しているようにみうけられる。自らが産出した『建築』を、その出自と振舞いを確認するために召換されたにもかかわらず、ときに、デミウルゴスは『建築』を扼殺しようと試みもする。》(「BOOK」データベースより)
松村秀一『ひらかれる建築―「民主化」の作法』ちくま新書・2016年
《ケンチクとタテモノ―─。近代的夢の象徴としてイメージされてきたケンチクと経済行為として営々と生産されてきたタテモノ。一九七〇年代半ばに「建築家」を志して以来、つねにそのあいだで葛藤してきたが…。二一世紀、局面は大きく変わった──。居住のための「箱」から暮らし生きるための「場」へ。私たちの周りに十分すぎるほど用意された「箱」は今、人と人をつなぎ、むすぶ共空間<コモン>を創造し、コミュニティとなる。これからあるべき「ひらかれる建築」の姿を、「民主化」をキーワードに、関わった「三つの世代」の特徴と変遷から描き出す。》
陣内秀信『東京―世界の都市の物語』文春文庫・1999年
《世界第二の経済大国、日本の首都・東京。ハイテクの先端をいくこの都市は、またアジア的な巨大な迷宮でもある。江戸、明治、大正、昭和、平成と400年に及ぼうとする首都としての歴史がいまも生き続けている。高層ビルの谷間で垣間見る江戸の風情、下町に息づく「水の都」の伝統……。歴史、文化を通して捉え直す東京再発見ガイド。》
浅倉久志編『世界ユーモアSF傑作選1』講談社文庫・1980年
《ほんのりとしたユーモアをちりばめて宇宙のかなたから送られてきた笑いのSFカクテル16種――「終わりの始め」「ベムがいっぱい」「美味球身」「魔王と賭博師」「おれと自分と私と」「かわいそうなトポロジスト」など、バラエティーに富んだ作品群から、きみ好みのすてきな“笑い”を発見しよう。》
収録作品=終わりの始め(チャード・オリヴァー&チャールズ・ボーモント)/ベムがいっぱい(エドモンド・ハミルトン)/美味球身(ラリー・アイゼンバーグ)/魔王と賭博師(ロバート・アーサー)/おれと自分と私と(ウィリアム・テン)/かわいそうなトポロジスト(シリル・M・コーンブルース)/呼吸のつづく狒々がいて(アーサー・エディントン)/ノーク博士の島(ロバート・ブロック)/コンピューターは問い返さない(ゴードン・R・ディクスン)/宇宙三重奏(ロバート・シェクリイ)/主観性(ノーマン・スピンラッド)/コフィン療法(アラン・E・ナース)/ガムドロップ・キング(ウィル・スタントン)/夢は神聖(ピーター・フィリップス)/進めや、進め!(フィリップ・ホセ・ファーマー)/女嫌い(ジェームズ・E・ガン)
笹沢左保『結婚関係』集英社文庫・1980年
《愛想の尽きた夫を殺した40代の妻、秘かにアパートを借りて孤独を楽しむ30代のエリート亭主、姑に苛立ち浮気をする20代の若妻。そんな3人に突然、脅迫の電話がかかってきた。しかも同一人物かららしい。何の関係もなかった3組の夫婦が、意外な糸で結ばれてゆく……。さまざまな結婚を通レ信頼し得る愛の型を問う異色サスペンスロマン。》
小此木啓吾『エロス的人間論―フロイトを超えるもの』講談社現代新書・1970年
《現代ほど「人類の進歩」が問われている時代はない。世代の断絶、家族の解体、歴史意識の喪失、自然の破壊など高度に発達した現代社会は、多年にわたる人間への信頼を無残にもうちくだいてしまったかのようにみえる。そんなとき、人間はいかにあるべきなのだろうか。本書はフロイト、ライヒ、フロム、マルクーゼなどの人間分析の歴史をたどり、いままでの社会を支えていた合理主義的自我人間ではなく、人類誕生以来ずっと存在していた自然人に注目する。その自然人という見方、すなわちエロス的人間観こそ、繁栄と進歩という幻想のなかで、生の不安におののく現代人に新しい方向を約束する。》
荒巻義雄『紺碧の艦隊13―印度洋地政学』トクマ・ノベルズ・1994年
《現在、印度戦線は、一気に錯綜しつつあった。虎狩作戦実施の電文を受けた紅玉艦隊から発進した新型奇襲機・鮫龍が、ロンメル控えるデリー司令部の空襲に大成功。見事に中枢を麻痺させたことにより、敵前線部隊は情報的に完全に孤立化した。今こそ、秘本兵法『三十六計』の第六計“声東撃西”の策の出番である。東に声んで西を撃つ――敵を攪乱し、錯覚させるために、後世日本陸軍が仕掛けた妙手とは……? ますます激化する日独攻防戦、ついに陸上戦に突入す。超人気の〈紺碧〉シリーズ第13弾!!》
荒巻義雄『紺碧の艦隊14―史上最強内閣』トクマ・ノベルズ・1994年
《照和二三年五月三日――後世日本では、再び総選挙が実施された。任期を残してのこの国政選挙は、大高首相の決断によるものである。長期安定化した政権にもかかわらず、あえて衆議院を解散したのは、日米講和成立により、後世世界大戦の戦局が第三段階に突入した、と判断したからである。根本的な世界構造の大変革の到来を皮膚で感じた大高は、来るべき新局面に備えるために、国家の再構築を行なおうというのである。数日後、国民の圧到的支持を得て選挙に大勝利し、発足した史上最強の新内閣の全貌とは……?》
荒巻義雄『紺碧の艦隊15―印度南方要塞』トクマ・ノベルズ・1994年
《照和二十三年七月――激務の疲れを癒やすために箱根の別荘に来ていた大高首相は、太正五年に発行された『日本征服』という独逸の翻訳書に見入っていた。四半世紀以上前に書かれた奇書の予言が、現在の後世世界に酷似していたのである。しかも独逸がいずれソ連と同盟する可能性があることすら示唆していた。さらに深まる戦局の難解さと世界平和への道のりの遠さを実感していた矢先、ロンメルが直接、指揮をとるため、デリーからバンガロールに到着したとの報らせが入り……。ついに南印度で日独大激突、勝敗はいかに?》
眉村卓『天才はつくられる』角川文庫・1980年
《恐るべき天才少年少女のグループがあらわれた! 彼らはテレパシーを修得し、念力で自由に物を動かしテストでも抜群の成績を修めている。が、彼らは、何か巨大な悪の企みを抱いているらしい……。
ある日、ひょんなことから、ちょっぴり超能力を身につけた史郎にも、グループに入るように誘いがきた。そして、断わった史郎に、彼らは命を取ると脅しをかけてきたのだ。史郎は、友人の敬子とともに、天才グループと断固闘う決意を固めたが……。
スリルあふれる、学園SFサスペンスの傑作。「ぼくは呼ばない」を併録。》
収録作品=天才はつくられる/ぼくは呼ばない
眉村卓『出たとこまかせON AIR』角川文庫・1979年
《さあさあ皆さん始まりだよ!
ぶっつけ本番、出たとこまかせ!
ワルのり、気まぐれ、苦しまぎれ!
突飛で変てこりんで愉快なお話!
――そばつゆ甘いかしょっぱいか?
――過去は何色? そして未来は?
――金言、格言をウラから見れば?
SF的発想と、ユニークな知識が満載されたこの一冊で、あなたは楽しみながらインテリジェンスを磨くことができる。さあこの「出たとこまかせON AIR」に、ピタリとチャンネルを合わせてみましょう。》
筒井康隆『串刺し教授』新潮文庫・1988年
《崖から転落して鉄柵の尖端に串刺しにされた大学教授を目撃したガソリン・スタンドのサーヴィスマンが最初にしたことは? 写真週刊誌時代の未来を予見した作品として「東海道戦争」などと並ぶ表題作。やくざが女学生の言葉で会話し、女学生が中年紳士の言葉で会話し、中年紳士が主婦の言葉で…会話する「言葉と〈ずれ〉」。人間がきつねをだます奇怪至極の「きつねのお浜」など全17編。》
収録作品=旦那さま留守/日本古代SF考/通過儀礼/句点と読点/東京幻視/言葉と〈ずれ〉/きつねのお浜/点景論/追い討ちされた日/シナリオ・時をかける少女/退場させられた男/春/妻四態/風/座右の駅/遙かなるサテライト群/串刺し教授
筒井康隆『48億の妄想』文春文庫・1976年
《この地球上に住む48億の人間のうち、いったい正気なのは誰か。少なくともその大部分が同じ幻想に捉われているとしたら、それを描く新しい「共同幻想論」を書くのが現代の文学者の務めであろう。テレビ絶対の時代、テレビに踊らされる人間、マスコミを痛烈に諷刺した筒井康隆の画期的な処女長篇小説。 解説・平岡篤頼》
荒巻義雄『紺碧の艦隊16―敗戦の予感』トクマ・ノベルズ・1995年
《照和二十四年六月――大高首相は日本の負ける夢を見た。このところ、頻繁に同じ夢を見ていた。正夢か、逆夢か。願わくは逆夢であってほしいが、先のことはわからない。国内・国外ともに問題が山積しており、解決への道は程遠い。いずれにせよ、近いうちに国民国家の時代は終わるというのが、大高の見通しであった。国民国家が歴史のある発展段階で終わらざるをえないのは、国民国家の宿命でそれが戦争の原因になるからである。時代は急速に暗雲たちこめり先行きがまったく見えない状況――大高の選択はいかに?》
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