『にれかめる』は鈴木牛後(1956 - )の第3句集。序句:黒田杏子。
著者は「藍生」「雪華」会員。
羊水ごと仔牛どるんと生れて春
牧牛の口へ口へと夏の草
芋虫の透けし腸ごと伸びて縮む
飼ひ猫と言へぬでもなく芒原
農機具の錆びゆくことも秋の色
風邪心地わが外側に誰かゐる
餌を食ふ音わんわんと雪の牛舎
家畜車に三十の眼のかぎろへる
蟻の道蛇の昏さを越えゆける
べつたらと牛が寝てゐる去年今年
雪掘つてみれば淫らに土の膚
干草の深さを猫の眠りけり
牛の乳みな揺れてゐる芒かな
ちやりぢやりとタイヤチェーンの鳴る初荷
牛死せり片眼は蒲公英に触れて
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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