『祝日たちのために』は中嶋憲武(1960 - )の句集。著者による銅版画13点と散文も収録。
著者は「炎環」「豆の木」所属。
叱られぬ娘さくらへ流さるる
青嵐表象さるるあらゆる不在
蝉の眼の溶暗平和な世界が無い
あをく泳いで具象画のやうな疲れ
断崖立秋その突端にいつまでゐる
ひとの手の葉月ものいふ鳥を載せ
八月が終る砂粒軋む敷居
秋はひとり寒冷紗手のなかに丸め
夜の自習は亀甲のかたちして霙る
品川の底冷粗品知る暮らし
寄居虫のあるいて風の白い上着
はじめしづかな法案いそぎんちやくひらく
晩春へ落とす不可視のむかしの箸
晩夏晩年水のまはりの水死の木
葛湯吹いて馬の体躯の夜がある
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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