『うさぎの話』は栗林浩(1938 - )の第1句集。序にかえて:高野ムツオ、栞文:今井聖、澤好摩、塩野谷仁。
著者は「円錐」「遊牧」「街」「小熊座」同人。
イギリスのうさぎの話灯を消して
ブータンの野の夢ばかり凍蝶は
ベルリンにて
蝉の穴東独逸に出てしまふ
冷気立つずらり尾鰭のなき鮪
錆鮎やキリスト像の目が淋し
鯨啼く夜間飛行の瞬きに
中ほどがさびしい花のトンネルは
ホームより長い電車来修司の忌
宇宙から帰還せしごと西瓜抱く
目の玉の沈んでゐたる冬の水
お年寄が見つかりました秋の風
いなびかり二階静かになりにけり
ボスポラス海峡からの隙間風
切れ味の鋭そうなる水着かな
晩秋の水あるところ火を焚きぬ
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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