10月は上旬、不調で1冊も読めず。
「ピエール・ボナール展」(国立新美術館)と、バンジュン特集上映(神保町シアター)のなかから中村登監督『顔役』というのと、ギリヤーク尼ヶ崎青空舞踏公演(50周年)を見た。SST(榮猿丸、関悦史、鴇田智哉)プラス有志計6名で「マルセル・デュシャンと日本美術」展を見て吟行した(東京国立博物館)。
長いこと入手出来ずにいた河野典生『黒い陽の下で』『アスファルトの上』が読めた。
詩集3点、タケイ・リエ『ルーネベリと雪』、浅見恵子『星座の骨』、今鹿仙『永遠にあかない缶詰として棚に並ぶ』は、いずれも著者または版元より寄贈を受けました。記して感謝します。
先月の台風で折れた庭木はまだ解体できずそのまま。
横尾忠則『未完への脱走』講談社文庫・1978年
《挿絵画家志望の少年が神戸新聞入社、デザイナーヘの道を歩み始める。目下、第一線で活躍する横尾忠則の出発である。自己の源泉をたどる「出発」。個性豊かな人たちとの交友をつづった「交遊録」。デザインの変革をめざした1960年代の軌跡「デサインとは?」――現在、宇宙感覚を追求する著者の、その変貌の源をしめす“一つの時代”を著した好個のエッセイ集。》
開高健『舞台のない台詞―気ままな断片401』新潮文庫・1987年
《現代文学の最も重要な担い手のひとりであり、釣・旅・食・酒の飽くなき猟人である開高健の決定版アフォリズム集。ガリ版刷り私家版「あかでみあめらんこりあ」から最新刊まで、36年間に書かれた著作のなかから、401の味わい深い断章を選び、「愉楽の章」「軽率の章」「迷妄の章」「憐憫の章」「自虐の章」「非力の章」の6章に構成。スーパー・スター開高健の豊饒な世界を凝縮した待望の一巻。
庄司浅水『世界の七不思議―古代から現代までの29話』現代教養文庫・1969年
《本書は、古代文明の謎、建造物や遺跡の驚異、さらに不可解な自然の現象など、これまで「世界の七不思議」の名で呼ばれ、親しまれてきた物語を収録するとともに、「新不思議」を紹介しながら未知の世界へ案内する。》
五木寛之・松永伍一『日本幻想紀行(上)』講談社文庫・1979年
《函館、札幌、博多、福岡、柳川、有明海……北の町から南の国へ、作家の五木寛之氏と詩人・民俗学者である松永伍一一氏が旅の中で縦横に語り合った連続対談。土地の風物と人情にふれながら、文化の風土性に照明をあて、風土が人の意識に与える影響力をさぐり、あらためてわれわれの内なる“ふるさと”の意味を問う。》
五木寛之・松永伍一『日本幻想紀行(下)』講談社文庫・1979年
《歴史の街に意外な野性の素顔を見、セックスも堂々としていた古代人のバイタリティ再評価を“日本精神”の原点で主張する。作家の五木寛之氏と詩人・民俗学者の松永伍一氏がまた旅を共にして、風土の個性を探り、北と南の文化を比較し、縄文的文化を論じて、日本への“逆回帰”について心ゆくまで語り合う連続対談。》
タケイ・リエ『ルーネベリと雪』七月堂・2018年
《七年ぶりになる第三詩集
手さぐりでたよりない闇のなかをすすんでいくと、
見慣れた風景がまあたらしくうまれかわっている。
なつかしい景色がまばゆい光につつまれて、
はだかの街路樹もかがやいている。》
小松和彦『新編・鬼の玉手箱―外部性の民俗学』福武文庫・1991年
《民俗社会の外部は、鬼や妖怪や異人の棲む闇の世界である。それらは歴史の中で、常に無視され、排除されながら、民俗文化を負の世界から支えてきた。いま日本文化の全体像を明らかにするために鬼たちの歴史を秘めた「鬼の玉手箱」が開かれ、深い闇の世界を見せてくれる。》
五木寛之『わが憎しみのイカロス』文藝春秋・1972年
《ある日、私の経営するガソリンスタンドに、BMW2000csが給油に入ってきた。従業員の譲治がそれに見惚れているのがわかった。譲治は住み込みで働いている、外国の血の入った美少年だ。イカロスと名付けられたその車の持ち主は作曲家の室生淳だった。彼は男色の気があり、BMWに強い興味を示す譲治に接近するようになる。私は、BMWを相手に自慰をする譲治の姿を目撃し、不安を覚える。彼の欲望を捻じ曲げたものとは!》
収録作品=わが憎しみのイカロス/夜の角笛/狼の瞳の奥に/ブルーディ・ブルース/グラスの舟/スタジオ番外地
竹本健治『かくも水深き不在』新潮文庫・2017年
《森に包まれた廃墟の洋館で次々と鬼に変化していく仲間たち。何故か見るだけで激しい恐怖に襲われるCM。想い人のストーカーを追及する男の狂気。大御所芸人の娘を狙った不可解な誘拐事件。浮かび現われては消える4つの物語は、異能の精神科医・天野の出現により誰も見たことのない局面へと変容していく。全ての謎を看破する超越的論理と幻想の融合で煌めく、めくるめく万華鏡を体感せよ! 》
阿刀田高『迷い道』講談社文庫・1988年
《子供の教育、ローンの重さ。妻とのいさかいの根が絶えない中年の夫が、ふと心に思うのは、何かいいことが起こらないものか。それは人生の迷い道の途上につきものの心理……。そして、あるとき、夢のような好状況が訪れる。だが辿ってみると道の先は? 短編の名手が、なにげない日常からとり出してみせる人生の恐怖譚10話収録。》
収録作品=肌女郎/蜜の花/猫を飼う女/母の裸像/陥し穴/優しい声/特別料理/ある夜の心理学/背中美人/迷い道
光瀬龍『暁に風はやむか』徳間書店・1979年
《コンピューターがすべてを統御し、老人が支配する二百年後の日本――四十歳の“青年”貝塚俊造を襲った影の組織の企図は何か!? SF界の巨星が贈る異色アクション・ノベル》
赤川次郎『フルコース夫人の冒険』カドカワノベルズ・1989年
《今日も、元気いっぱい、しなやかにカルチャーセンターを渡り歩くのは、“フルコース夫人”こと本名・中沢なつき。れっきとした15歳の娘さやかの母親。夫だって今は課長だが、やがて父の跡を継いで社長になる。
ところが平和な(?)三人暮らしの家庭に突如舞い込んだのが、中沢母娘への映画出演の話で、これには演劇部のさやかもびっくり。話は順調に進むのだが、夫が女優と浮気、殺人事件も発生して…。でも、なつきならなんとか切り抜けられる!? いつまでも若々しく、はつらつとした女の胸躍る青春ロマン。》
宮脇俊三『時刻表2万キロ』角川文庫・1984年(日本ノンフィクション賞)
《はじめからそんなつもりがあったわけではなかった。だが、ある時期からは、はっきりとそれを志した。そしてそのときから、滑稽な、あるいは快楽的な、悪戦苦闘がぱじまった――。国鉄全線2万余キロ完乗という〈偉業〉達成までを記した稀代の傑作、角川文庫版で新登場!
荻昌弘、山崎正和、根本順吉、小池滋、種村直樹、青地晨、中野孝次の7氏による書評(紹介文あるいは大賛辞)と、日本ノンフィクション賞受賞時の選評(会田雄次、小松左京、吉村昭の選考委員3氏による)を収め、さらに「国鉄全路線図」を付載。》
小塚佳哉『赤い砂塵の彼方』ショコラ文庫・2013年
《考古学を学ぶ和泉 潤は、留学する途中立ち寄った中東の国アルスーリアの都市遺跡で金髪の美青年アーリィと出会い、誘われるまま一夜を過ごしてしまう。「再会したら本当の恋人になろう」そう約束してアーリィと別れた潤は、王妃との謁見のため首都に向かうが、そこで国王夫妻がテロで亡くなったことを知る。呆然とする潤の元に「亡き王妃に代わって会いたい」と皇太子から伝言が入り、王宮を訪れるのだが…。書き下ろしSS収録。》
中村雄二郎・山口昌男『知の旅への誘い』岩波新書・1981年
《人はなぜ旅に出るのだろう。惰性化された日常生活を変え、いきいきした生を回復するためではないか。とすれば固定化した文化現象を根底的に乗り超える〈知〉の本来的なあり方は、まさに旅の過程そのものである。〈知の旅〉の達人である哲学者と文化人類学者が、世界を駆けめぐり時間をさかのぼって自らの旅のユニークな軌跡を語る。》
チェ・ゲバラ『新訳 ゲバラ日記』中公文庫・2007年
《キューバ革命後、ゲバラは南米全体の革命を目指し、ボリビアのジャングルでゲリラ活動を開始した。過酷な自然のなかで、内紛や情報不足、病気や飢餓に苛まれながらも、壮絶な最期を遂げるまで、誇り高く闘った一年間の記録。緊張感のなか、素顔の魅力が溢れる名作を、没後四〇年を記念し文庫訳し下ろし。 〈解説〉いとうせいこう》
小林秀雄『考えるヒント2』文春文庫・1975年
《《私の書くものは随筆で、文字通り筆に随うまでの事で、物を書く前に、計画的に考えてみるという事を、私は、殆どした事がない。筆を動かしてみないと、考えは浮ばぬし、進展もしない……》という著者が展開したふかい思索の過程が本書である。読者は随所に自分で考えるためのヒントを発見するだろう。 解説・江藤淳》
アーサー・C・クラーク『太陽系オデッセイ』新潮文庫・1986年
《1996年、月面探険に出かけた「わたし」は、奇妙な光り輝く建造物を発見する。それは悠久の過去に栄えた文明の遺跡か、それと帽亘星の彼方から来た何者かの訪問の証か……。映画「2001年宇宙の旅」の原型ともいわれる「前哨」のほか、のちに代表作『幼年期の終り』へと発展する「守護天使」など、英SF界の第……-人者クラークが自ら選び、序文と各編ごとの解説を加えた傑作短編集。》
収録作品=救援隊/守護天使/ひずみの限界/前哨/木星第五衛星/逃亡者/太陽から吹く風/メデューサとの遭遇/遙かなる地球の歌
筒井康隆『幻想の未来・アフリカの血』南北社・1968年
《SFの概念を越え、幻想文学の領域にまで達した、筒井康隆最高の傑作中篇「幻想の未来」と、アフリカ、インドの不思議な現地人が、現代の都会に疾駆する最新作を収録した異色小説集!》
筒井康隆『エロチック街道』新潮社・1981年
《見知らぬ夜の街。裸の美女に案内されて、奇妙な温泉の洞窟を滑り落ちる……エロチックな夢を映し出す表題作。江戸末期、アメリカより漂着した黒人たちと、城をあげてのオールナイト・ジャムセッションが始まる!底抜けに楽しい傑作「ジャズ大名」など、幻想小説、言語実験、ナンセンス、パロディ、純文学にいたるまで、著者独自の迷宮的世界を見事に展開する、変幻自在の18編。》
収録作品=中隊長/昔はよかったなあ/日本地球ことば教える学部/インタヴューイ/寝る方法/かくれんぼをした夜/遍在/早口ことば/冷水シャワーを浴びる方法/遠い座敷/また何かそして別の聴くもの/一について/歩くとき/傾斜/われらの地図/時代小説/ジャズ大名/エロチック街道
河野典生『アルタの鷹』大陸書房・1989年
《破壊的スーパー・エンターテインメント
世間的にはしがない新宿裏通りの大男探偵ターザンこと田沢汎太は、実は時たま超特大クラスの国際謀略事件と関わりを持つ。ある日、渡利アイ子と名乗る若い女から、家出した妹マイ子の同棲相手、テレビ局員太田武士を仕事場から連れ出してくれと、多額の手付金で依頼を受ける。ハメットの『マルタの鷹』に似て、発端はかなりクールだったが、変声剤や記憶喪失剤も飛び出して、事件は過激に、そしてマッドな様相に…。》
《著者のことば
『他人の城』のような正統ハードボイルドや『街の博物誌』のような幻想小説を書いているうち、突然ある日、それらが合体爆発して、笑いと暴力のスーパー・エンターテインメントが飛び出して来た。このうっとうしい現実を、ぶっ壊しながら笑い飛ばす。あまたのキザったらしいハードボイルド・ヒーローまで笑い飛ばす。こいつはなかなか男っぽい行為じゃないだろうか。『探偵はいま鉄板の上』から『怪人・毛酔翁の逆襲』までの怪腕探偵ターザン・シリーズはそうして生れた。この『アルタの鷹』は、いうならば、その最も新しい特別版だ。》
三浦浩『薔薇の眠り』角川文庫・1980年
《「ぼくは殺していない…」。週刊誌記者の大庭は、コロンボに赴任するという商社員の萩原の呟きを聞いてしまった――薔薇に囲まれ、萩原が深く愛した美しい姉妹の屋敷で彼の送別会が開かれた。そこで萩原は泥酔し、翌日、コートの内ポケットをさぐって驚愕した。そこには、血のついたハンカチーフと銀のナイフが残されていたのだ。薔薇園で、いったい何が起こったのか!
萩原に奇妙な友情を抱いた大庭は、調査を開始した……。
東京、神戸、サイゴン、コロンボを舞台に、姉妹をめぐる悲劇を描く、ハードボイルド・ミステリーの名作長編。》
和久峻三『死者への審判』角川文庫・1982年
《新婚間もない男の容疑は、妻の父親を口論のすえ、疎水に突き落とし死亡させたことだった。男は、素直に罪を認めた――弁護にあたったのは日下文雄。大阪にある鶴見法律事務所に籍を置くやとわれ弁護士、いわゆるイソ弁である。一見単純そうにみえる事件の裏には、複雑な人間関係と、根の深いかくされた動機が潜んでいるように日下には思われた。
表題作ほか、美しい女性の首を切りとるという猟奇的な殺人・死体遺棄事件、恋人を殺してしまった女性の重過失致死事件等、弁護を引受けた以上は、決して手を抜かない正義感あふれる青年弁護士・日下文雄が活躍する法廷推理集。》
収録作品=炎の宴/首のない女/女の絵心/妄執の女/嘘の壁/死者への審判
浅見恵子『星座の骨』思潮社・2018年
《すべて私の肉
ひとり転がった地面の
花という花から毛が生える
土という土から春が溢れている
わたしの許しなく
(「狂々」)
「朔太郎はその猥雑さ、猥褻さにまみれてみせたわけだが、この作者にはできない。なぜなら「わたしの許しなく」という感情のほうが圧倒的に強いからである。(…)作者は猥雑かつ猥褻な世界に身をゆだねるのではない。逆に蹴りつけて地団駄を踏みたいのだ」(三浦雅士)。生起する存在の肉を言葉で刻み、削ぎ、あらわになった詩の骨から世界は始まる。そこに胚胎する透明な祈り――注目の新鋭の第2詩集。装画=著者》
荒巻義雄『もはや宇宙は迷宮の鏡のように』彩流社・2017年
《書き下ろし、SF大長編最新作!
荒巻義雄本人が「遺書」として書いた超大作!
時空を超えた壮大なマニエリスム量子論を刮目せよ!
本作は、荒巻義雄メタSFの代表作
『白き日旅立てば不死』『聖シュテファン寺院の鐘の音は』
につづく白樹直哉三部作の最終巻である。
特別書き下ろし解説=学魔=高山宏(大妻女子大学教授)
帯文は、SF批評家=巽孝之(慶應義塾大学教授)
【作品冒頭部分】
ふと浮かんだ〈臨終〉という言葉を、女は打ち消す……
ひとつの魂の転移が迫っている……
『白き日旅立てば不死』、その14年後の世界を描いた
『聖シュテファン寺院の鐘の音は』、
時空を転移した白樹直哉の臨終の瞬間、彼の魂は、
何処へ転移しようというのか……
マニエリスムの第一人者、高山宏に
「混沌の只中にコンパスをもって自閉し、
生じつつある事態を却って怜悧に観察し、計量し、構築する
珍らかな知性タイプ、感性タイプをマニエリスム、
その族(やから)をマニエリストと呼ぶ」と言われた、
マニリスト=荒巻義雄の描いたマニエリスム量子論とは……!》
今鹿仙『永遠にあかない缶詰として棚に並ぶ』金雀枝社・2018年
《「バッハに身をまかせていると/説教されているようだ」
「コウカンするにはすてきな棒がいる/くにたちの森で売っているような/あれである」
今鹿仙の詩はひとの意表をつく
ひとの意表をあかるみのなかで洗ってくれる詩だと思う
つまりそういうあれである
廿楽順治
いなかの秘宝についてしゃべっている
学校からの帰り道では
ふじがよく見えた
りんごのような二人が下校する
赤黒い逃避行はいつも
こんな風だった
さちこはさちがおかのさちだよ と
はじめてのとき
教えてくれた
さちがおかの話はよそうよ
かえって秘宝が気になって仕方がない
「さっちゃん」より》
土屋隆夫『穴の牙』角川文庫・1976年
《平穏な生活が将来も続くと信じ、恐れげもなく人生を歩む無知な人間たち。彼らは、その前途に大きな口をあけ、ひっそりと獲物を待つおれの存在に気がつかない。穴――それがおれの正体だ。第一の獲物、立川俊明の場合は……。
ある日突然、立川のもとに“妹の死”という凶報が届いた。浅間山登山道付近で発見された彼女は、多量の睡眠薬を服用していた。地元警察では自殺と断定したが、死因に不審を抱く立川は孤独な捜査を開始した。そして、その結果つきとめた意外な真相とは?
土屋隆夫が新生面を切り開いた、意欲的連作推理小説。》
西村寿行『荒らぶる魂』徳間文庫・1986年
《赤石岳山麓。四年前、治宗は愛育していた仔猪ゴンタを冬の山脈に捨てた。小説家への夢破れ、妻の不倫の妄想に苛まれて家庭を瓦解させた治宗は上京、傷心を抱いて再び帰ってきた。付近に出没し、荒れ狂う手負いの巨猪が、かつてのゴンタだというのだ。山狩りからゴンタを救出することに自らの再生を賭ける治宗だったが……。
動物への愛と、人間の心の深奥に潜む哀しみを描く、巨匠の感動長篇。》
河野典生『黒い陽の下で』浪速書房・1961年
《新宿の「ジエリー・ロール」はモダン・ジヤズ専門の喫茶店だが、夜十一時半には閉店する。
常連にはデザイナーや画家、学生など若い知識人が多く、夕刻から、仕事はじめの深夜までの時間を、激しいジヤズのビートに打ちのめされるためにやつて来る。
だが彼らはお互いに話合うことはめつたにない。彼らは彼らの言葉では、仕事にとりかかるためのエネルギーを充電しにやつて来たのであり、発散したり、すりへらしたりするためにやつて来たのではないからだ。》(本文冒頭)
河野典生『アスファルトの上』光風社・1961年
《私は一人の娼婦を知っている。ある小さなバーで知り合ったのだが、一見上流の婦人に見える。年齢は三十代。一人の男と二度と寝たことがなく、大正期の文豪石川洋之介の全集を持っている。そして一枚の子供の写真を持っている。》(本文冒頭)
収録作品=八月は残酷な月/ヒッチハイク/殺人者/ある再会/橋の上の男たち/まぶしい季節/黒人リュウ/アスファルトの上
アイザック・アシモフ『ファウンデーション―銀河帝国興亡史1』ハヤカワ文庫・1984年
《第一銀河帝国は何世紀にもわたってすこしずつ、だが確実に頽廃と崩壊をつづけていた。しかし、その事実を完全に理解している人間は、帝国の生んだ最後の天才科学者――ハリ・セルダンただ一人であった! 彼は自ら完成させた心理歴史学を用いて、帝国の滅亡と、その後につづく三万年の暗黒時代を予言したのだ。だが人類にとって救いがないわけではなかった。滅亡へと向う巨大な慣性を、ほんのすこしでも偏向できれば――かくて暗黒時代をただの千年に短縮するため、セルダンはふたつの“ファウンデーション”を設立したのだが……。巨匠が壮大なスケールで描く宇宙叙事詩!》
城山三郎『価格破壊』角川文庫・1975年
《フィリピンの戦場をさまよい、〈ー度は死んだ体〉である矢口は、爆発した人生を送りたいと、旧財閥系の会社をやめた。安売りのクスリ屋から身をおこし、仕入れルートをメーカーの圧力によって断たれながらも、目玉商品を求めて全国をかけめぐる。消費者から喜ばれる安売りはメーカーの存続を危うくし、情熱的に価格を破壊する矢口にメーカーの黒い手がのびる……。
現在の流通機構、再販価格に執拗に挑戦し、流通革命を目ざす男の一生を見事に描いた最高傑作の長編経済小説!》
H・P・ラヴクラフト『ラヴクラフト全集3』創元推理文庫・1984年
《二十世紀最後の怪奇小説作家ラヴクラフト。その全貌を明らかにする待望の全集――本巻には、アーカムやアヴドゥル・アルハザードが初めて言及される初期の作品や、ロバート・ブロックに捧げた作者最後の作品をはじめ、時空を超えた存在〈大いなる種族〉を描く、ラヴクラフト宇宙観の総決算ともいうべき「時間からの影」など全八編を収録。》
収録作品=ダゴン/家の中の絵/無名都市/潜み棲む恐怖/アウトサイダー/戸口にあらわれたもの/闇をさまようもの/時間からの影
真崎ひかる『鳴かない小鳥にいじわるなキス』ダリア文庫・2017年
《大学入学を控えた春、鷹晴は母親の再婚相手に会うため訪れたホテルで、端正な容貌の“大人の男”彬親に声をかけられる。言葉を交わすうちに一気に彬親に惹かれていくが、半月後再会した彼はなんと義理の兄だった! 叶わない恋でも、せめてそばにいたいと、なりゆきで彬親のマンションに転がり込む鷹晴。しかし彬親の優しくていじわるな言動に、気持ちは募るばかりで……?》
鈴木あみ『妖精男子』シャレード文庫・2012年
《一流企業に勤め、将来性もルックスも抜群の白木千春の誰にも言えない秘密。それは齢二十五にしていまだ童貞だということ。モテまくった高校時代、しかし千春はライバル的存在だった須田恭一に彼女を次々と奪われ、脱童貞のチャンスをつぶされていた。今でも恨みを忘れられない恋敵、須田と同窓会で望まぬ再会を果たした千春は、弁護士になり昔と違って大人っぽく落ち着いた当の本人から「罪滅ぼしに女の子を紹介する」と言われる。だが彼女はデートをドタキャンし、かわりに現れたのは……。》
月村奎『teenage blue』ディアプラス文庫・2013年
《高校の入学式で凛太と継母のピンチをスマートに助けてくれた一学生上の梶。凛太は瞬間、彼に恋をした。それから一年、凛太は親しい後輩として梶のそばにいる。けれど梶は、誰のものにもならない人気者。彼の複雑な事情を教えられ、少し近づけた気がしたものの、やはり梶はつかみどころがない。家にも梶の心の中にも自分の居場所が見つけられず、凛太はついに隠し続けてきた感情を爆発させ……? アオハル・ラブ。》
久我有加『短いゆびきり』ディアプラス文庫・2006年
《短いゆびきりは、決して違えない約束のしるし。かつて一度だけ“短いゆびきり”を交わした八つ年下の幼馴染み昇と、敬祐は十二年ぶりに再会する。小学生だった昇は、強面の大学生に成長していた。父は亡くなり母は妹の嫁ぎ先に同行し、気づけば一人になっていた敬祐。昔のように懐いてくる昇と過ごす時間を何より心地よく感じ始めるが、それは寂しいだけが理由ではなくて……? 年下攻リトルエンゲージラブ!!》
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