『今井杏太郎全句集』は今井杏太郎(1928 - 2012)の5冊の句集と補遺をまとめたもの。栞文:大石悦子・片山由美子・井上弘美・鴇田智哉・高柳克弘。
以下『麥稈帽子』
老人が被つて麥稈帽子かな
明け方の蚊帳のまはりに畳かな
提灯の消えてゐたりし祭かな
以下『通草葛』
あたたかや貝殻虫もふくらんで
蛤を焼けばけむりのあがりけり
またひとり春の山より下りて来し
まつくらな山のやうなる兜虫
いちじくの木にゐて寒き雀たち
以下『海鳴り星』
野に山に雨降る白き日曜日
雨粒を噛みしめてゐる蟇
野の花のをりをり草の中にあり
以下『海の岬』
南より春の祭の夜が来る
ねむたさのはじめあたたかかりしかな
よその子のふはりと揺れて祭かな
こほろぎに透明といふ冥さあり
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