先月、芝不器男俳句新人賞の公開選考会が終わってから、応募作14,000句を短期間に読んだ疲れが出たのか、十日以上寝てばかりとなった。この間、何を食って生きていたのかほとんど記憶も飛んでいる。稀に見る何も読めなかった月。
表紙として懐かしかったというものも、山田正紀(味戸ケイコ)と西村京太郎(野中昇)、森村誠一(日暮修一)くらい。
山田正紀『吉原蛍珠天神』集英社文庫・1984年
《故意に将軍ご寵愛の鷹を斬り捨て出奔した元お庭番哲太郎の許へ、井伊直弼暗殺の依頼が届いた。井伊公は幽界の家康がのりうつった玉の命で動く黒衣の衆に守られていた……。不思議な玉にあやつられた黒衣衆に立ちむかう、今は名を改め、殺し屋宇之の孤独な闘いを描く表題作。藩一、二の剣術使いが、朝鮮で覚えたキムチの味が忘れられず、妻も剣も捨て、漬物作りに熱中する「辛うござる」ほか、卓抜した着想が光る鬼才初の幻想時代小説集。 解説・志村有弘》
新井素子『緑幻想―グリーン・レクイエム2』講談社・1990年
《明日香は本当に死んだのか…。彼女の「愛」は滅んだのか…。緑の大地に今、何かが起ころうとしている。のぼる、旋律。おりる、旋律。リフレイン。そのあとひたすらのぼりつめて…。何だろう、この旋律、不思議になつかしい、不思議に昔のことを思わせる…。明日香の想いが作りあげた『グリーン・レクイエム』の物語は、より美しい愛の想いへと凝縮しながら、幕を下ろす。待望の書下ろし長編。》(「BOOK」データベースより)
桑原伶依『不敵な狼男』セシル文庫・2011年
《狼男の父子と暮らし始めてから「愛される喜び」を感じ、幸せな日々を送っている真箏。でも絶倫の狼男とのエッチ生活は時々身体が辛くなることもしばしばで、つい司狼とケンカしてウチからたたきだしてしまうことも……。感情表現が苦手な真箏にとって、全力でぶつかってくる父子との生活はとまどいもあるが、子狼のルカは可愛いので、なんとかママとしてがんばろうと奮闘しますが……!?》
姫野百合『クールビューティーは甘いのがお好き』セシル文庫・2011年
《白鳥弓弦は総合不動産開発会社の企画室に勤める敏腕サラリーマン。数々の企画を成功に導いたその手腕と、近寄り難いほどの美貌で、社内でも一目置かれる存在である。そんな彼は甘いもの嫌いとしてもよく知られていたが、ある日、上司から天才パティシエ・七天と仕事をするように命じられてしまう。実は甘いものを食べると人格崩壊するほどのスイーツ好きを隠していた白鳥は激しく抵抗するが!?》
梶尾真治『未踏惑星キー・ラーゴ』新潮文庫・1986年(熊日文学賞)
《鑑定のミスから一億二千万もの人を殺してしまった元惑星鑑定士のセイタロ。彼が放浪の末にたどりついたのは、少女がコンピューターやロボットたちと暮す楽園のような惑星だった。しかし、この緑の惑星にも鑑定士が現われた。もし居住可能と認定されれば乱開発は必至だ。楽園を守れ! 鑑定をごまかすための、惑星をかけたペテン作戦が始まった。本格書下ろし空想科学冒険小説。》
西村京太郎『血ぞめの試走車』集英社文庫・1981年
《新車のテスト走行中、東名高速で事故を起こしたテスト・ドライバーの結城は、新車の売れゆきが落ちることを懸念した社のトップの命令で、孤独な旅へ出た。悄然と愛車を西へ向けた彼のクルマをつける謎のスポーツカー。四国・九州さらに与論島へと、結城の孤独なドライブは続く……。 解説 中島河太郎》
田辺聖子『孤独な夜のココア』新潮文庫・1983年
《恋は人生の熱いエッセンス。この本は、暗い孤独な淋しい夜に、あなたの凍えた心を温める熱いココア――察しの悪い恋人にいつもイライラしている〈かおり〉、からかい半分の同僚の言葉を信じ男性に大きなバースデーケーキをプレゼントするケチな32歳の〈ちさ〉、年下の男性に恋をし、妊娠したことをエープリルフールに告げる〈和田サン〉。男と女の微妙な心のひだを捉えた12の恋物語。》
つかこうへい『二代目はクリスチャン』角川文庫・1985年
《舞台は神戸・六甲、港を一望できる聖サフラン教会。昭和35年、急速に街が活気づきはじめたころのことである。主人公は、シスター今日子。今日子にありったけの思いを寄せるのは、神竜組の二代目・晴彦。もう一人、生田署の警部補・神代。だが、5人の孤児たちを引きとり、神に身をささげる生活をつづける今日子が、禁断の恋におちた相手は、ふたりのいずれでもなかった。時は移り、今日子は神竜組の二代目を引きつぎ、運命は大きく回転していく……。
妻子ある男性のもとへはしった娘ヘの、母親の語りかけとしてつづられた、美しくも悲しい、宿命の恋の物語。
角川映画化決定! 今秋公開予定》
藤谷ある『外道王子の魔神隷従』HJ文庫・2013年
《強大な力を持つものの、美しい乙女しか扱えないとされる魔神隷従剣。それを使いこなす力が現れた男子高校生神前央真は、かつて72柱の魔神を従えたという、ソロモン王の再来と判断され、美少女しかいない剣士養成学院に転入することになった。王ってことは、何でも思いのまま! と央真は学院のハーレム化を宣言し、外道で最強な学院生活を開始した!!》
藍上ゆう『創世の大工衆』このライトノベルがすごい!文庫・2012年
《デミウルゴス――かつて武力ではなく圧倒的な建築技術で戦乱から民を救った伝説の大工。時は流れ、伝説に憧れながら、亜人の国で奴隷工として暮らす少年・カナトの前に、ひとりの少女・シアが現われる。高度な建築技術を持ちながら、性格に超難アリの彼女こそデミウルゴスの伝説を継ぐ者だった。そんな二人の元に、この国の女王からある建築の依頼が舞い込むのだが……。第2回『このラノ』大賞優秀賞作家が贈る新感覚・建築ファンタジー! 》
亀井一成『動物ないしょ話』集英社文庫・1984年
《極めこまやかな親子の愛もあれば隣人(?)愛も、暮らしの知恵もあれば、感情もゆたか。ベテラン飼育課員が、慈愛に満ちた眼で綴ったユカイな動物観察のあれこれ。カラー写真多数収録の動物愛好家必携の書。動物園のガイド・ブックとしても最適。》
成瀬かの『竜王は花嫁の虜』プリズム文庫・2012年
《どこか遠くへ行きたいな――。
オープンカフェでぼんやりしていると望みに応えるかのように風変わりな男が現れ、気が付くと蒼は物語の中でしか見た事のない異世界に来ていた。
空に浮かぶ島に、飛び交う竜たち。混乱する中闇色の獣に襲われた蒼は、この世のものとも思えない美貌の男に助けられる。その上、長身で美形ばかりの異世界の男たちに次々と愛を囁かれて……!?》
かんべむさし『ひとりおきの犯人』光文社文庫・1996年
《エリート税務署長の密かな願望とは。不思議な公園にさ迷い込んだ男の話。一万円札の長い旅。絶妙な舌技をもつ女の正体は。……おもしろさ、こわさ、奇妙さ、不可思議さ、色っぽさ……ユーモアとホラーを、ひとつおきに配列した、きわめつきの異色短編集。小説のおもしろさをたっぷり満喫できる一冊。
「かんべむさしはおもしろい」――夢枕獏氏の本書解説より》
収録作品=署長の名言/交通公園/犯人判明・被害者不明/黄色いトカゲ/諭吉の旅/無人駅の女/ぞろぞろ道中/女は一夜で/銀色列車/特別社友会議
本多勝一『きたぐにの動物たち』集英社文庫・1982年
《ほんの百余年前まで、北海道は野生動物の王国であった。この原始の自然界が、人間文明の洗礼を受けてどう変貌したのか――野生動物の生態を中心に、人間と動物のかかわり方、接点に重きを置いて現地取材した新しい「動物記」。ここに登場する人物は全て実在の人物であり、事実ばかりだ。 解説・犬飼哲夫》
草上仁『スーパーサラリーマン』ハヤカワ文庫・1992年
《接待マージャンのメンバー集めに四苦八苦している営業マンの、伝票合計がどうしても合わないOLの、パソコンから会議資料を取り出すことができない中間管理職の助けを呼ぶ声にこたえてやってくる、ドブネズミ色のスーツを着たさえない男――彼こそスーパーサラリーマン。高いビルもひとっ飛びで救いの手をさしのべるサラリーマンの味方を描く表題作ほか、短篇の名手がサラリーマンSFに挑戦する力作短篇11篇を収録。》
収録作品=辞めさせて頂きます/同居時代/妻の顔/毒/おばあちゃんの復讐/テルを待ってます/ホームテレホン/方向音痴/テレホンカード/SENDAIHAGI/スーパーサラリーマン
草上仁『江路村博士のスーパー・ダイエット』ハヤカワ文庫・1993年
《「人類をついに肥満から解放したぞ!」超天才科学者・江路村博士が発明した、いくら食べても太らないスーパー・ダイエット食品とは!? 江路村博士の珍妙な大発明の数かずを描き出す「江路村博士の大発明」、完全清潔都市から悪徳と退廃を求めて〈東京悪徳ランド〉へツアー旅行に出かけた中年男性グループの行状記「悪徳ランド」、邪魔になった夫を消そうと完全犯罪を目論む妻の物語「カワヘビ」などを収めるおもしろ短篇集。
収録作品=江路村博士の大発明/悪徳ランド/ホロ・ドレス/最後の納税者/カワヘビ/紙の盃/ここまでおいで/飛んで行きたい
江馬務『日本妖怪変化史』中公文庫・1976年
《幽冥界には妖しい力があって絶えず人間界に災厄を加えんと恐ろしい糸を操っている……そう信じて、鬼に食われ、狐狸に誑かされ、幽霊に悩まされた、こわくて、あわれで、おかしな昔話を豊富に採集して、枯尾花ならぬ化けものの正体を多面的に明らかにし、日本古来の風俗に人間の妄執の移り変りを見る。》
かいとーこ『不死者と踊れ―それは由緒正しきご職業』一迅社文庫アイリス・2013年
《呪われた物が好きな、自称・死霊術師の少年キルス。ある日、溺愛する妹が奇妙なモノを拾ってきてしまった。それは、聖光水晶を食べないと暴走する、不死者の青年・リザイア。キルスは彼を成仏させることができず、世話をすることに!? けれど、高価な食糧を買う資金はない。そこでキルスが目をつけたのは、吸血鬼が領主をしている街。その近くに、聖光水晶が眠る廃鉱山があるというのだが――。
腹グロ少年と贅沢な不死者のダークコメディ!》
辻田真佐憲『空気の検閲―大日本帝国の表現規制』光文社新書・2018年
《絶対悪の代名詞「検閲」。しかしその実態は?
ブラック労働的なその現場、エロ本評論家と化す検閲官、検閲官とマスコミの驚くべき一体ぶり、植民地における検閲の実情、検閲の対象となるメディアの広がり、官僚的セクショナリズムによる検閲の暴走、法外の手段を用いた非正規の検閲と、忖度による自主規制、世間との共振……。
1928年~1945年のエロ・グロ・ナンセンスから日中戦争・太平洋戦争時代まで、大日本帝国期の資料を丹念に追いながら、一言では言い尽くすことのできない、摩訶不思議な検閲の世界に迫っていく。》
南原兼『砂漠の薔薇と夜の王子―カマルヤーム夜話』ジュリエット文庫・2013年
《「嘘つきな唇にも罰が必要だな」隣国の王に輿入れする途中で砂嵐に遭い、夜が明けない不思議な国に迷い込んでしまった王女ファリザード。そこで出会った天使のように美しい王子リドワーンこそ、彼女が夜ごとの夢に見ていた運命の相手だった。次第に強く惹かれ合い、情熱的に結ばれる二人。元の世界に戻され、リドワーンと引き離されたファリザードは、夜の国に囚われた彼を救い出すために――!?》
水壬楓子『騎士は踊る―マグノリア・ナイツ―』一迅社文庫アイリス・2012年
《修道学院の入学試験のため、ノイングラース公国にやってきた14歳のランス。その目的は、立派な騎士になって初恋の女の子と再会すること! ところが、友達になった貴族のバートと学院に向かう途中、公子襲撃現場に遭遇してしまう。修道生憧れの総代・サイラス公子と知り合ったことがきっかけで、大事件に巻き込まれることになったランスだったけれど――!? 名門騎士育成学院の入学試験は危険がいっぱい?少年騎士育成ファンタジー★》
森村誠一『黒い墜落機』角川文庫・1978年
《埼玉県入間基地から、極秘訓練で飛び立った自衛隊のジェット戦闘機が墜落した。場所は南アルプス北部の山域で、付近には廃村同様の小さな村しかない。戸数は十戸、村民の数はわずか十三名で、全員が老人だった。墜落機には、絶対に世間に漏れてはならない重大な秘密が隠されていた。(村人は墜落事件を知ってしまったに違いない) 自衛隊首脳部は、ついにとてつもない決断を下した。墜落機の残骸撤収と全村虐殺である。「サルビヤ作戦」と命名されたこの恐るべき作戦は、ただちに開始された……。自衛隊のもう一つの顔を徹底的に追及した問題作!》
森村誠一『黒の十字架』角川文庫・1984年
《F県羽代市は地方ボス大場一成が君臨する一大王国であった。暴力団中戸組を私兵として市全体を私物化し、警察とも癒着していた。その羽代市郊外のモーテルで若い女性の殺人事件が発生した。被害者は芸者秋本和子で、中戸組に売春を強制されていたらしく、その背後には大きな売春組織の存在が感じられた。しかも、客には政府要人が数多くいるらしい。また内偵のため中戸組に潜入していた、秘密捜査官松原も消息を絶った。羽代市で得体の知れぬ策謀が蠢動を始めている! 特命捜査官土谷は、真相解明のため羽代市ヘ向かうが…。
記念碑的労作「野性の証明」の舞台、羽代市に再び渦巻く黒い人間模様。独裁者と非買収派との凄惨な闘い。壮大なスケールで展開されるスリルとサスペンス溢れる傑作長編推理。》
森村誠一『白の十字架』角川文庫・1980年
《視野を塞ぐ暗雲が切れ、光り輝やく山頂がその雄姿を現わした。ヒマラヤの高峰ネパルチュリは、いま白い十字架となって津雲をさし招く。「置いてかないでくれ!」必死に叫ぶ友を振り捨て、彼は頂上をめざした。だが突然、荒れ狂う白魔が津雲を襲った!
一方、杉並区の空地で、学生殺人事件が発生した。犯行時、被害者のそばにいた捜査中の謎の女性は、皮肉にも警視庁捜査一課所属一柳刑事の妻だった。彼女は被害者と情交中、突然襲ってきた犯人に暴行されていた。犯人が残した唯一の遺留品が今、妻の体内に息づいている。絶望の中で、一柳の刑事魂が甦った。
子供が生まれた。そして、まもなく捜査線上に、第一次ネパルチュリ遠征隊の一員津雲明広の名前が浮かび上がった……。
人生に債務を負って苦悩する男たちの生きざまを描く傑作長編推理小説。「十字架シリーズ」第一弾!》
吉村昭『光る壁画』新潮文庫・1984年
《胃潰瘍や早期癌の発見に絶大な威力を発揮する胃カメラは、戦後まもない日本で、世界に先駆けて発明された。わずか14ミリの咽喉を通過させる管、その中に入れるカメラとフィルム、ランプはどうするのか……。幾多の失敗をのりこえ、手さぐりの中で研究はすすむ。そして遂にはカラー写真の撮影による検診が可能となった。技術開発に賭けた男たちのロマンと情熱を追求した長編小説。》
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