岩片仁次編『加藤元重句文集―戦後編』から。
加藤元重(1918? - ?)は、戦後復刊した「群」に「加藤藻太」名義で、高柳恵幻子(重信)とともに同人。高柳重信の句集『前略十年』に「加藤元重に」等の前書きが入る句がある。
懐手空は溝にもうつるなり
軒つらら折らば阿呆にちなむ景
早春の突風孤獨日和かな
豪雨の夜轍に沿つた蟇(ひき)二匹
*
北風めに
身は透き明り
土はたまらぬ
*
沙漠
原生林伐採はこのどくろ ※「どくろ」に傍点
*
古墳の
ゆりかご ゆれず
さかさの
みどりご 満たず
*
日と砂と
時計と
涎かわく蟹
*
夜の 叢の
雲の乳房 ひとつ
ひとつ啼く
*
さはらの唄
まるい帆を
ほうむる
夜の
かげろう夫人
*
風の
流れに
沈む
かぼそい
青うさぎ
*
荒地に
門
ひとりでてゆく
*
ジャングル・ジム
きしむ すきまもる樂隊
*
しわがるる
そぷらの
しろい
橇
*
回転木馬
おかしの おばけ
おもちやの おばけ
ぱぱと
ままとの
泣きべそ おばけ
※本書は発行者より寄贈を受けました。記して感謝します。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。