『喜望峰』は小泉瀬衣子(1963 - )の第1句集。序文:仲寒蝉。
著者は「港」会員。父は大牧広。
白酒の残りを捨てるときに風
とりあへず座らせておく新社員
立ちくらみして急に夏渋谷駅
飛込に散弾銃のやうな海
誰も切らぬから誰も食べられぬ西瓜
不意に跳ぶ蛙心臓かと思ふ
白鳥型ボートの所為でさみしい湖
さはやかに手術室へとゆきし父
飛べさうな気がしてならぬ夏岬
サーファーの言つたとほりの雨が降る
インターネットの奥へ奥へとゆく狼
警官の俄かに増えし更衣
枇杷熟れてゐし刺すやうな政
裏口より誰か出てゆく冷し中華
手袋のまた落ちてゐて東京
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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