『をどり字』は井口時男(1953 - )の第2句集。
著者は文芸批評家。
ピーカンの空に翳あり原爆忌
喫ひ付けて女はしやがむ路地の夏
初空や化鳥のやうな凧ばかり
海鞘(ほや)嗜(この)む壮漢(をとこ)となりぬ美少年
蝉として目覚め蝉として啼くばかり
をどり字のごとく連れ立ち俳の秋
失せ物はライターだけかビルの月
「夕暮れはいやだ」と書いて春失踪
青梅こぼれ少女は夏を待つばかり
野分して母よ「ああ、また稲が倒れてしまう」
先触れがことに悪声寒鴉
千の密室千の沈黙冬灯し
放屁して雪晴れの野の広きこと
二月二十一日朝、金子兜太氏逝去の報。
兜太あらず春寒を啼く大鴉
木曽福島
青高嶺鈴鳴らし行くランドセル
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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