眉村卓の新刊『夕焼けのかなた』、長年愛読してきた作家なので買ったが、最近の本に多い、こういうイラストの装幀、どうも好きにはなれない。
今月も何も読めない日が多かった。
大藪春彦『非情の女豹』角川文庫・1982年
《今ここに、美しくてセクシュアルな殺人機械が登場した。――小島恵美子、通称エミー。身長167センチ、体重50キロ。バスト98、ウエィスト58、ヒップ94.スペインとの混血で髪は漆黒。褐色の肌をもち、数々のビューティ・コンテストに優勝。さらにレズビアンでサディスト、性格は残虐、非情……。
恵美子は、ロンドンに本拠を置く国際秘密組織、スプロ日本支部のエースだ。仕事は法の手の届かぬ大物たちヘの復讐などを請け負うことだ。悪魔に魅入られた、しなやかな女豹の肢体が踊る!
エンターテインメントの巨星、大藪春彦が贈る、長編ホット・ノベル!》
生島次郎『地獄からの脱走』講談社文庫・1990年
《第二次大戦の終了まぎわ、日本軍によってマレーシアの奥地に秘匿された時価数百億円の財宝探しが計画された。チームのメンバーに、美貌の女・須賀涼子、ボディガード役に、元情報工作員で射撃の名手・原卓二。そして謎の現地組織。恋と欲望の修羅場の勝者は誰か? 著者渾身の長編冒険バードボイルド。》
西村京太郎『けものたちの祝宴』徳間文庫・1984年
《パトロンの製薬会社社長村上と謀ったグラマラスな悪女大道寺明子は、フィリピンの権力者ロドリゲスに近づく。
一方、身辺で頻々と起きる殺人事件に明子らの悪事の匂いを嗅いだ村上の秘書矢崎は事件を探るうちに彼らの罠にはめられてしまう。そんな折り、矢崎の愛人大橋富佐子の死体がマニラ湾に浮かんだ。復讐を誓う矢崎はマニラに飛ぶ。そこで目撃したのは妖しい悪の祭典だ。著者会心の長篇推理。》
山田絢『憧れの魔法少女の正体が男でした。』ビーズログ文庫アリス・2017年
《「笑顔は、私たちの力になるの!」
昔、魔法少女・ドリーミィ・スターに命を救われた加奈。憧れの彼女が無期限休業して絶望するも、ドリーミィ・スター主催「新人発掘オーディション」のニュースを見て狂喜乱舞! 見事合格した加奈だったが、「鳥海星司……魔法少女、ドリーミィ・スターだ」――目の前にはなぜか男性が!? 彼女(彼)の元で、加奈の修業はどうなるのか……!?》
野尻抱介『太陽の簒奪者』早川書房・2002年
《西暦2006年、突如として水星の地表から噴き上げられた鉱物資源は、やがて、太陽をとりまく直径8000万キロのリングを形成しはじめた。日照量の激減により破滅の危機に瀕する人類。いったい何者が、何の目的でリングを創造したのか?――異星文明への憧れと人類救済という使命の狭間で葛藤する科学者・白石亜紀は、宇宙艦ファランクスによる破壊ミッションへと旅立つが……。星雲賞・SFマガジン読者賞受賞の傑作短篇、待望の長篇化!》
飯田道子『ナチスと映画―ヒトラーとナチスはどう描かれてきたか』中公新書・2008年
《第二次世界大戦で数千万もの人々を死に追いやったヒトラーとナチス。彼らは新興メディアだった映画をプロパガンダの最大の武器として活用した。一方で戦後、世界の映画産業は、わかりやすい「悪」の象徴として、ヒトラーとナチスを描き続ける。だが、時代とともに彼らの「評価」は変わっていく。本書は、第Ⅰ部でナチ時代の映画を、第Ⅱ部で戦後映画での彼らのイメージの変遷を描き、「悪」の変容と、歴史と「記憶」の関係を探る。》
伊藤計劃・円城塔『屍者の帝国』河出文庫・2014年(日本SF大賞特別賞、星雲賞)
《屍者復活の技術が普及した十九世紀末、大英帝国の諜報員ジョン・ワトソンはアフガニスタンに潜入し、屍者の国の王アレクセイ・カラマーゾフと邂逅。王より渾身の依頼を受け、「ヴィクターの手記」と最初の屍者ザ・ワンを追い求めて世界を駆ける――意識とは何か? 魂とは何か? 話題のエンターテインメント超大作。》
橋川文三『昭和維新試論』ちくま学芸文庫・2007年
《著者は昭和初期のナショナリズムを軍国主義と一体とみる戦後の進歩思想の流れのなかで、かつて自分をとらえたナショナリズムの意味を考えつづけた。彼は昭和維新思想の起源を、明治の国家主義が帝国主義に転じたとき青年の心に広がった不安と疎外感のなかにみる。この不安を手掛かりに、日々市民に向かって桃太郎主義を訴えた赤児のように純真な渥美勝を始めとして、高山樗牛、石川啄木、北一輝ら、戦後進歩思想が切りすてた不能率かつ温かい心情をもった人々の系譜を掘り下げ、昭和維新思想を近代日本精神史の中に位置づける。》
松前侑里『真夜中のレモネード』ディアプラス文庫・2010年
《仕事が忙しくて恋をするヒマもない――そんな薫の勤める探偵事務所に中途で社員が入ってきた。何とその相手・涼は、薫が女装での調査の帰り、酔っぱらいに絡まれたところを助けてくれた青年。運命の出逢いかも……とトキメキつつ、助けたのは女性だと信じているに違いない涼の手前、あの時の女性が自分だとバレないように薫は必死だった。だが涼はとっくにお見通しで? 「コーンスープが落ちてきて」スピンオフ!!》
橋爪大三郎・植木雅俊『ほんとうの法華経』ちくま新書・2015年
《仏教最高の教典といわれる「法華経」。だが、その真意はあまり理解されていない。なぜなら鳩摩羅什による漢訳を、日本語に重訳したものが読まれてきたからだ。そこで登場したのが、植木雅俊による画期的なサンスクリット原典からの翻訳。その訳業で、仏教のほんとうの教えが明らかにされた。日本を代表する宗教社会学者・橋爪大三郎との対話の中で、ブッダ本来の教えとは何か、法華経の正しい読み方とはいかなるものかが次々と解き明かされる。全く新しい、最高の仏教入門書!》
収録作品=公社計画/きつね/たたり/モデル/秘密計画/超人の秘密/交通停滞/かえって来た男/幽霊屋敷/胎内めぐり/遺産/沼/倒産前日/施餓鬼/黒いカバン/鏡の中の世界/遠い国から/三本のスキー/蜘蛛の糸/牛の首/冷蔵庫の中/夏の終り/無実の罪/新型貯金箱/奥様トルコ/期待はずれの人間象/標準化石/賄賂法案/空中住宅/自信恢復/工事/白い部屋/見すてられた人々/野の仏/土人
小松左京『偉大なる存在』ハヤカワ文庫・1979年
《白衣、白髪の奇妙な老人が予言した同日同刻に……それも、全地球連邦が巨大な受信システムを作りあげた当日に、人類がはじめて宇宙からメッセージをうけとったのだ! 何百人かの人々は当然考えた。話がうますぎると。しかし、つぎつぎ発表されるデータによれば、信号発信源は意外にちかく2・5光年ほどの距離からだった……タイトル・ストーリイほか生物学的限界をのりこえて創造される新世代の頭脳“機械脳”の物語「袋小路」など、日本SF界の雄小松左京が、厖大な情報、鋭い洞察力、奔放な想像力を駆使して描きあげた傑作短篇九篇を収録!》
収録作品=袋小路/怪獣撃滅/高みに挑む/面従腹背/黄色いねずみ/危険な誘拐/四ツ矢怪談/偉大なる存在/廃墟の彼方
小松左京『時空道中膝栗毛』文春文庫・1981年
《文政三年、江戸は下谷のげじげじ長屋の床下にぽっかりあいた大きな穴。店子の牙次郎と与太八は持ち前の野次馬根性やみがたく、こっそりもぐりこんだが身の因果、心ならずも時空を超えて、古今東西八艘とび、地球の世紀を股にかけ歴史線上を駆けめぐる珍道中。構想雄大、奇妙奇天烈、爆笑驚倒SF戯作大長篇。解説・桂 米朝》
原田康子『日曜日の白い雲(上)』角川文庫・1987年
《父の反対を押し切って結婚したヴァイオリニスト百合は、いま離婚という重荷を背負い故郷北海道へ帰って来た。いまは、音感さえも失われ、ヴァイオリンを手にすることもない暗い日々。
ある日百合は千歳の街で出会った青年パイロットに心惹かれてゆく。青年との新たな愛の始まりは百合にとって新しい出発となるであろうか。緊迫した基地千歳を舞台に真実の愛の世界を描く感動のロマン。》
原田康子『日曜日の白い雲(下)』角川文庫・1987年
《今日も千歳の基地の上空にはジェット機が飛び交う。小中青年の直情で翳りのない愛情は安らぎをもたらすこともなく百合の心は沈む。離婚、年上、音楽家としての履歴、それらはいつも二人の間に横たわり、消えることはなかった。
愛とは互いに傷つけ合うだけのものであろうか……。
ひとりの女の過去と現在を通して、愛と性の哀しみを著者は清冽な筆致で描く。》
原田康子『挽歌』角川文庫・1960年(女流文学者賞)
《“私が桂木さんに魅かれたのは桂木夫人の不貞を知ったからである。彼女のものうげな微笑をたたえた眼差に私の心はいつしか捉えられ彼を愛すると共に夫人をも愛してしまう。それが死ヘ結びつくとは知らずに。”白鳥の羽根のそよぎにも似た若い女性の微妙な心の動きを追って北国の風景の中に展開する愛と死のロマン。》
収録作品=トライチ/ポドゲギャ/遙かに照らせ/ペジの泥沼/トグシノ/蒼穹の手
筒井康隆『筒井康隆全童話』角川文庫・1976年
《筒井康隆の作品の世界は、現代文明をドタバタ風にパロディ化したものの、鋭い“毒の針”を含んでいます。
この童話集も、ゴミに追い散らされる人間どもの悲喜劇(「かいじゅうゴミイの しゅうげき」)や、女の子上位のいじめっ子がはびこる子供の世界がついには住民戦争にエスカレート(「三丁目が戦争です」)するという、現代人の生活の底にかくされたナンセンスな状況を鋭く衝いています。
それが、読者の〈乾いた笑い〉をさそう作品の大きな魅力になっています。他に「地球はおおさわぎ」など、奇想天外な発想の“新しい型の童話”3編収録。》
収録作品=かいじゅうゴミイの しゅうげき/うちゅうを どんどん どこまでも/地球は おおさわぎ/赤ちゃんかいぶつ ベビラ!/三丁目が戦争です
筒井康隆『時をかける少女』角川文庫・1976年
《物置同然になった無人のはずの理科実験室に誰かいる! ガチャーンとガラスの割れる音が響いた。和子がうす暗い部屋の中を見回わすと、試験管が床に落ちて割れていた。中から液体がこぼれ白い湯気のような甘い匂いが漂い、急に和子の嗅覚を襲った。彼女はそのまま、軽い貧血を起こして気を失った。
だが、意識が回復すると、不思議な事件がたて続けに起こった。どうも、あの匂いをかいだことがきっかけで、彼女に特殊能力がそなわったらしい。
少女が不思議な空想の世界を体験する会心の表題作、ほか2篇収録。》
収録作品=時をかける少女/悪夢の真相/果てしなき多元宇宙
パット・マガー『七人のおば』創元推理文庫・1986年
《結婚して英国に渡ったサリーはニューヨークの友人からの手紙で、おばが夫を毒殺し、自殺したことを知った。だが彼女には七人のおばがいるのに、手紙には肝心の名前が記されていなかった。一体どのおばが……? 気懸かりで眠れないサリーに、夫のピーターは、おばたちについて語ってくれれば犯人と被害者の見当をつけてあげよう、と請け合う。サリーはおばたちと暮らした七年間を回想するのだが……。被害者捜し、探偵探しと新機軸のミステリを生み出した異色の閨秀作家マガーが描く、会心の犯人捜し!》
サマセット・モーム『秘密諜報部員』創元推理文庫・1959年
《英独仏各国のスパイの暗躍するヨーロッパ大陸を舞台に、たえず死の脅威におびやかされながら、作家アシェンデンの活動がひそかに執拗につづけられる。生命を賭し、しかも頼るもののないこの非情な任務の姿を、文豪サマセット・モームが、従来の神出鬼没型を破って、自らの経験にもとづいて書きあげた、生々しい迫力の横溢するスパイ小説の名作!》
眉村卓『夕焼けのかなた』双葉文庫・2017年
《外との接触を拒むかのように、町の入り口に位置する「峠」。就職し赴任したひなびた町で、閉塞感に包まれながら、若き日々を過ごした男は、久方ぶりに町を訪れた際に、「峠」で不思議な感覚にとらわれる――長年活躍し、齢八十を超えた現在も健筆を振るう著者の自伝的要素を含む「峠」ほか、人生の夕焼けを生きる者たちの存念や悲哀を物語に綴った、渾身の書き下ろし短編集。》
収録作品=喨々たるらっぱ/ハテナ産業・万般調査会社/空耳よ/過去のRさん/折り込み時間/大垣のこと/車内での日向ぼっこ/売られる未来史/花野とガラケー/弁当/にやにや/目がよくなる本/生まれ変わる/逃亡老人/通過駅/あやまれ/街の踏切/標的/車窓の向こう/中塚来訪/想像投射装置/栄光の幻覚/触媒さんのご襲来/夢の老人/回転音/峠
眉村卓『ねらわれた学園』角川文庫・1976年
《もし、人や物を自由に動かすことができたら――誰しもが夢みる超能力。しかしそれが普通の人間に与えられていないことがどんなに幸福なことかは意外に知られていない……。
ある日、おとなしかったはずの少女が突然、生徒会の会長選挙に立候補、鮮やかに当選してしまった。だが会長になった彼女は、魅惑の微笑と恐怖の超能力で学校を支配しはじめた。美しい顔に隠された彼女の真の正体は? 彼女の持つ謎の超能力とは?
平和な学園に訪れた戦慄の日々を描くスリラーの世界! 他に複製人間の恐怖を描いた「0からきた敵」を併録。》
収録作品=ねらわれた学園/0からきた敵
横溝正史『死仮面』角川文庫・1984年
《昭和23年秋、「八つ墓村」事件を解決した金田一耕助は、岡山県警へ挨拶に立ち寄った。ところがそこで、耕助は磯川警部から、無気味な死仮面にまつわる話を聞かされる。
東京で人を殺し、岡山に潜伏中の女が席爛死体で発見され、現場に石膏のデスマスクが残されていたのだ。デスマスクはいったい何の意味なのか?
帰京した耕助は、死んだ女の姉の訪問をうけ、さらに意外な事実を聞いて、この事件に強い興味をそそられた。
30年ぶりに発掘された巨匠幻の本格推理に、絶筆「上海氏の蒐集品」を併録する。》
収録作品=死仮面/上海氏の蒐集品
アイザック・アシモフ『象牙の塔の殺人』創元推理文庫・1988年
《大学の構内で、化学の実験をしていた学生が毒ガスを吸って死亡した。大学当局は事故死として処理したい意向だったが、指導教官のブレイドは死因に疑問を抱き、捜査に乗り出す。だが、意外なことに彼自身が第一の容疑者として浮かび上がってくる。しかも、昇進問題もからんで、象牙の塔の内外で、彼は四面楚歌の情況に追い込まれていった……!》
三浦哲郎『愛しい女』新潮文庫・1982年
《婦人雑誌記者の清里は妻子を連れて温泉地で休暇を過す。旅先の吊橋で立ち往生して動きのとれぬ女性二人を救う。その一人は同じ会社の交換嬢妙子で、もう一人はその友人のスタイリスト留美であった。留美の異様な眼差しが清里の心を射抜く。留美は清里に強く惹かれ、彼との結婚を強く望むようになるが、道ならぬ恋を諦めてヨーロッパへ旅立つ。濃密な愛の日々を描く長編恋愛小説。》
横溝正史『女王蜂』角川文庫・1973年
《類まれな絶世の美女、大道寺智子が亡き母の遺言により、月琴島から東京にいる父のもとにひきとられた18歳の誕生日以来、智子を目あてに現われる男達が次々と殺される! 開かずの間に秘められた20年前の恋と嫉妬は悲惨な結末をみた。読みごたえ充分、抜群に面白い横溝正史の傑作長篇!》
内藤正敏『魔都江戸の都市計画―徳川将軍家の知られざる野望』洋泉社・1996年
《江戸は“将軍の屍体”とさまざまな宗教施設に守護された呪術都市だった。異能の写真家・民俗学者が10年の歳月をついやして解明した「徳川王権」の恐るべき秘密都市計画の全貌。》(「BOOK」データベースより)
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