『死ぬほど好きだから死なねーよ』は石井僚一(1989 - )の第1歌集。
作者は第57回短歌研究賞受賞者。
遺影にて初めて父と目があったような気がする ここで初めて
雨上がる竹藪のなかエロ本のごと汚れたる聖書ありけり
これから自殺をするけれど掌(て)に木洩れ日がきらきらしていてちょっとためらう
夜、歯磨き直後のチョコレートめっちゃうまいまた歯を磨いて寝る夜
アリス 穴に落ちて辿り着いたAmazonの倉庫で朝から働くアリス
フェイスブックにしずかにならぶ友だちとその奥さんがなんだか光だ
生まれ変わりのことを話して二人乗りの舟にはわたしとあなたが 明日も
待ち合わせもろくにできない 茄子がまずい 君に会いたい 茄子が食えない
きみが死ねばぼくは悲しいから雪の原野に海老の天ぷらを置く
火事のように愉楽は過ぎて酸性雨に阻まれた視界で今も貴女の耳鳴りが止まない
櫻花は天使の肉片という言い訳が水溜まり一面に ほら 兎、其処を動けない
眼球は飴玉 修辞は石鹼玉のような 喘ぐのは此処が貴女の縫い目だから
逃げ遅れてしまう白昼夢 無名の椅子に光のように白い花嫁が座って
死は蒲公英の絮毛に似ていると ねぇ、美しいものだけのシュレーディンガーの箱庭で
俺の唾液でわかめが増えてすごいので次の電車をご利用ください
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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