『幻花結界』は田吉明(1933 - )のおそらく第5句集。複数句を組み合わせて配列した「組曲」形式。
作者は句誌「楕円率」を所有。国語国文学先行の文学博士、京大名誉教授、本名・川端善明。
鶴は凍てその靭きもの夜となる
こがらしの音する独楽を澄ますなり
わが異郷 一寒燈を木につるす
深くて暗い砂の足跡が去つてゆく
風が出て椿の藪に夜があふれ
あはれ春の あはれ地霊である少女
あなたを探すのは花蔭の遠い奈落
夏野から電話がかかつてくる日暮
あなたは白い夏蝶として生まれたか
火のかたちして夏去りぬ 夏すべて
鏡を走る滴のやうに鳥渡る
方陣にかなしみを配してゐる暮秋
霧のながれのなかの小さな小さな佛
水に浮んで花になりたる時間たち
黒き尼僧が一列になつて空をゆく
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