『雲なつかし』は岩田由美(1961 - )の第4句集。帯文:岸本尚毅。
作者は「藍生」「秀」所属。
海見えてゐる豆飯のにぎり飯
しぼみたる芙蓉つまむや出づる蟻
くひちがふあり枯蓮とその影と
宝物見せ合へば友夏休み
鳴く蝉を咥へし猫の振り返る
檸檬咥へし鮟鱇はベニスに死す
火の中に汁噴く枝や落葉焚く
蟷螂をころがしてゆく我が箒
冬の蜂木の実の如く骸かな
卒業の子等来て遊ぶ雛の間
滝涼し吹かれて風に曲がるとき
敷物のごとくに犬や秘書の宿
うたかたの影の過ぎゆく蜷の道
金魚玉庭のどこかが映りゐる
落葉掃くたびに現はれ蝉の穴
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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