『アネモネ・雨滴』は森島章人の第2歌集。栞文:村木道彦、吉田文憲、今野裕一。
作者に関する情報は無し。
こころのかたち雨の葡萄にまされるか否、降りそそぐ 降りそそげ雨
月光を動力とする機械ありしに転生のたましひ挽(ひ)かる
少年が玉虫色の翅(はね)たたみ十日渇きて眠る地の夏
小さなる心臓ひとつありやかのアンドロメダに住める魚(うを)にも
きみがきみでわたしがわたしである不思議 鏡の中から海があふれる
蛇女(へびをんな)に近寄る男児よかつたらその脱け殻をくださいと言ふ
脱げば不吉な正午、少年に影なし 菖蒲湯のむらさきに触れむとす
ひとりでに鳴る弦楽にさへぎられ坂の一軒測量済まず
かすかなる崩落聴きて耳立てし白猫抱きつなにもせざりき
逆立ちの少女の脚は凛として夜景の街を左右に分つ
声もらすのにふさはしき口 千年をもてあそばるる少年、弥勒よ
縮小を重ねて猫と白桃の種の中なら亡命したし
こんな光の今日ならばぎりぎりの姿で少女縛られてゐる
闇に立つ怪人・童子 きやきやと汽車くれなゐを運び届ける
片道切符われら賜はり国境に巨大な夜の向日葵が待つ
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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