作者は松林尚志の小冊子「こだま」を主な発表先としているらしい。
目に見えぬ赤紙を手に菖蒲の日
金魚死にしよりの幾秋乾く甕
梅雨ながき病院食はうどんに匙
月明に飛行(ひぎゃう)の力尽きし紙
中空にとどまる蟲も光の春
明け易し目覚むるたびに居らぬひと
夕餉済みしやと問ふ蟇寄り来て
長き夜を辞書で爪とぐ猫と老ゆ
瑠璃光寺五重の塔に棲むむささび
せめて発光せよや被曝の春野菜
優し男(を)の身体髪膚多喜二の忌
釣堀暮れなづむ かはほりつばくらめ
退院す白曼珠沙華に飛びつかれ
遊就館の血なまぐささよ桜咲く
はな子の眼小さかりしよ萬緑に
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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