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「鬣」(代表:林桂、編集:水野真由美)第63号(2017年5月)から。
外山一機俳句時評「パロディという身の処し方」は関悦史『花咲く機械状独身者たちの活造り』について。
金星の象が大きな貌しおり 林 桂
四次元に寝返り三角波の上
春の野で横浜線を考へをり 外山一機
木(き)の下(した)で会(あ)ふ約束(やくそく)を
五月(ごがつ)かな 中里夏彦
葦原将軍じっと野薔薇のなかに居る 後藤貴子
マフラーに顔埋め暗殺記事読める 萩澤克子
「連衆」(編集:谷口慎也)No.77(2017年5月)から。
龍が水飲むごと老樹銀河へと 夏木 久
青嵐スプーンに映る子と夫 しいば るみ
海胆割ればアリストテレスのランタンが 小柳かつじ
少女みな蛇紋を秘めて踊りけり 高橋修宏(新参加者紹介)
軍艦かもしれぬ枯野に灯がともり 谷口慎也(特別作品)
2015年7月彩流社
SF作家・荒巻義雄の『骸骨半島/花嫁 他―定本荒巻義雄メタSF全集 別巻』に収録された、「虚数界――メタ俳句自選百句」旭太郎名義から。
平方根植える亡者の蓮の池
無限記号世界崩壊年暮れる
双曲線に恋をしている紋白蝶
朝顔にブラックホールが懸想する
光速船では石榴(ざくろ)が失語症になる
西陽射すバスタブの中金魚融解
蝶の翅天地折り込む蝶番(ちょうつがい)
深海の夢ごと鰻喰らう我
コブラ昇天して超空間煙突掃除
クラインの壺より絞り乳啜る
戦艦を精神分析すれば独活(うど)
フズリナが大理石の壁泳ぐ夏
白桃やマヤの暦の了るとき
しんしんとしんしんしんと白い鬱
年の瀬に空蝉(うつせみ)が鳴く二十五時
2017年3月私家版
『酔芙蓉』は世古諏訪(1928 - )の第4句集。
作者は「駒草」所属。
弥陀の視野にて切り返す夏燕
肩書のなき夏空の広さかな
塾の灯のはや灯りをり野分あと
二人ゐておのおの一人冬帽子
遅れてもいいほぐれるな花筏
空蝉のすがりつきをり絵馬の裏
桜蘂降るガキ大将戦死した
春一番月光が筋なして飛ぶ
賑やかな人出てゆきし障子かな
初採りの胡瓜白磁に盛られけり
あめつちをひとつにスカイツリーの雪
夏燕筑波全容照り昃(かげ)り
燈籠の笠掃いて終ふ松手入
新宿は灯の浮島よ春の雷
黒揚羽過りしあとの水陽炎
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
2017年5月ふらんす堂
『音符』は金子敦(1959 - )の第5句集。栞:杉山久子。
作者は「出航」所属。
色白の子が日焼子に言ひ返す
状差しの最上段に猫じやらし
立春や図鑑の上の虫眼鏡
恋猫が古き手紙の束を嗅ぐ
膨らんでより風船の揺れはじむ
ドレッシングの分離してゐる日永かな
緑蔭に憩ふピエロの無表情
甲板へ七夕竹の運ばるる
ジャグリングのごと筒放る卒業生
狐火に音叉の響き吸ひ込まる
水底に金魚の餌の辿り着く
手花火の煙を浴びて少し老ゆ
吊し柿三列目まで日の当たる
いちまいの枯葉をかざす無言劇
鉄条網ひとつひとつの棘に雪
「オルガン」(編集:宮本佳世乃、発行:鴇田智哉)9号(2017年5月)から。
今号から宮﨑莉々香が参加。
斉藤斎藤をゲストに迎えた座談会を収録。
桜から夕暮れの手にわたる土地 福田若之
いくつかの蜂のかがやいてた木椅子 宮﨑莉々香
もくれんは安い廊下に睦みあふ 宮本佳世乃
幹つめたしこの満開の中にあれど 生駒大祐
ひとなつこい春のむかしを暮らす象 田島健一
オルガンの奥は相撲をするせかい 鴇田智哉
「豆の木」(編集発行:こしのゆみこ)No.21(2017年5月)から。
素数から冬の書店に辿りつく 宮本佳世乃
蛤となり上澄みを照らすかな 上野葉月
風の身体持ち試着室を覗く夏 小野裕三
酉の市きらきら離ればなれかな 齋藤朝比古
化粧品とジャム論かつてない紅葉 田島健一
「小熊座」(発行:高野ムツオ)2017年5月号から。
初鶏や国生むごとく糞をして 高野ムツオ
神童がまず転びたり雪合戦
三月の海が薄目を開けるとき 渡辺誠一郎
飯館の斑雪野にふと手を合はす 日下節子
コンビニの空っぽの棚三月来 大久保和子
仮設六年仮の世に春の雪 松岡百恵
「鷹」(発行:小川軽舟)2017年5月号から。
特集は「『俳句と暮らす』を読む」。
ワイシャツでめし食ひに出て春寒し 小川軽舟
散策が徘徊となる日の長さ 星野石雀
やどかりの脚あふれ出て動きけり 奥坂まや
春の山モデルは動かなくて好い 細谷ふみを
「紫」(発行:山﨑十生)2017年5月号から。
糸偏はおほかた怖し冴返る 山﨑十生
外へとはどこまでのこと鬼やらひ 鈴木紀子
入学祝は兄漕ぐボート隅田川 鈴木登代子
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