先月持ち直したかと思いきや、また背の重苦しい凝り、微熱がひどくなって、何も読めない日が多くなった。
それでなくても遠出の用件が多かったので、まんがらんどの閉店セールのBL本をちょっとずつ消化しているだけのような状態。
今回、装幀で懐かしいのは高校時代によく本屋で見た福武文庫の2点。他に半村良『幻視街』の講談社文庫版というのを見かけて買ってしまったが、これは小学生の頃、角川文庫の杉本一文の装画のを読んだのでそちらの印象の方が強烈。
半村良『幻視街』講談社文庫・1979年
《能登の海岸に泳ぎ着いた男は、自分の名前すら覚えていない。しかし、ふしぎな既視感覚に誘導された彼は、的確に目的地に行き、殺人を続けた。殺された人達は皆彼に好感を抱きながら死んでゆく。彼の足は東京に向かった。東京で彼に殺されるべき人物は誰か? 才筆半村良が独得の展開で描く現代の幻想・恐怖譚。》
収録作品=獣人街/巨根街/夢中犯/顔/無縁の人/失われた水曜日/他人の掟/幻視人/衝動買い/黙って坐れば/蒸発/黒の収集車/ボール箱/赤い斜線
稲垣足穂『男性における道徳』中央公論社・1974年
《女性と語りあう男性ほど、バカに見えるものはない、美女ならばなおさらだ―稲垣足穂が放つ痛快なエセイ集》
J・L・ボルヘス『続審問』岩波文庫・2009年
《ボルヘスのエッセイの極北。古今東西の作家や文学作品を思いも及ばぬ驚異的な連想力で結びつけ、作家をつうじて現れた文学表現の総体性もしくは伝統を論じる文学論の奇観。短篇小説と同じよろこびを感じながら読むことができる。底知れぬ奥行きをもつ評論集。》
J・G・バラード『J・G・バラード短編全集2』東京創元社・2017年
《『結晶世界』『ハイ・ライズ』などの傑作群で二十世紀SFに独自の境地を拓いた鬼才の全短編を五巻に集成。第二巻は本邦初訳の「ミスターFはミスターF」を含む十八編を収録。》
収録作品=重荷を負いすぎた男/ミスターFはミスターF/至福一兆/優しい暗殺者/正常ならざる人々/時間の庭/ステラヴィスタの千の夢/アルファ・ケンタウリへの十三人/永遠へのパスポート/砂の檻/監視塔/歌う彫刻/九十九階の男/無意識の人間/爬虫類園/地球帰還の問題/時間の墓標/いまめざめる海
鮎川哲也『風の証言』角川文庫・1975年
《植物公園のあずまや風の茶店で惨殺されていたバレエダンサーと男のサラリーマン。その死体は不自然なまでにねじ曲げられ、顔は異様にふくれ上がっていた。
〈動機は三角関係か‥…・?〉捜査の結果、殺された男は会社に潜む産業スパイを追及する矢先に消されたことが判明した。だが、産業スパイは堅牢なアリバイを盾に犯行を否認、別に、“赤いベレー帽をかぶった男”を真犯人と主張するのだった……。混乱する捜査陣の中で、丹那刑事、鬼貫警部の名コンビの推理が冴える。
著者会心の本格長編推理。》
古井由吉『鐘の渡り』新潮社・2014年
《女に死なれたばかりの人と山に入って、ひきこまれはしないかしら――。
呪いめいた言葉をつれて、女と暮らすつもりの男が、女を亡くした友と旅に出る。彼らの視るものは、紅葉が燃えて狂ったように輝く山と、女人の匂い立ちのぼる森。そして夜には、谷を流れるあの鐘の音が、昏い峠に鳴り渡って――。三十男二人の妖うい山路を描く表題作ほか全八篇。現代日本最高峰の作家による言語表現の最先端。》
収録作品=窓の内/地蔵丸/明日の空/方違え/鐘の渡り/水こほる聲/八ツ山/机の四隅
都甲幸治他『世界の8大文学賞―受賞作から読み解く現代小説の今』立東舎・2016年
《あなたの知らない文学賞の世界が、ここにある。どんな賞なのか、どんな作品が獲っているのか、どれくらい面白いのか―芥川賞、直木賞からノーベル文学賞まで。8つの賞から、文学の最先端が見えてくる!作家・翻訳家・書評家による、史上初の世界の文学賞ガイド。》(「BOOK」データベースより)
小島信夫『ラヴ・レター』夏葉社・2013年
《小島信夫の新しい短篇集が出来上がりました。すべて、単行本未収録作品です。著者の最晩年にあたる、90年代後半から2000年代に発表された短篇を、9篇収録しています(1編のみ80年代)。表題作「ラヴ・レター」は、妻から夫への、手紙。文学に興味をもつ、多くの人に読んでもらいたく思っています。》
収録作品=「厳島詣」/夢/すべて倒れんとする者/青ミドロ/ラヴ・レター/記憶/小さな講演のあと/浅き夢/ある話
ジャン=ポール・サルトル『サルトル全集 第8巻 創作集 恭しき娼婦』人文書院・1952年
松本清張『数の風景』朝日新聞社・1987年
《負債をかかえて逃避行をする谷原は、同宿の、設計技師と“計算狂”の美女との雑談から、大金儲けのヒントを得る。それは、石見銀山坑内発掘と高圧線下の細長い土地の利権にかかわるからくりであった。が、まんまと、電力会社から一億二千万の補償金を獲て、さらに勝負に出ようとした矢先、行方不明になってしまう。往年の殺人疑惑が谷原殺しを引き起こし、その接点には「数字のある風景」があった…。山陰とウィーンを飛び交う大胆な構想と緻密な計算が行き届いた、巨匠の傑作長編推理。》(「BOOK」データベースより)
石川英輔『天国製造株式会社』講談社・1982年
《このシリーズは、かつて伊藤典夫氏に教えられた願望充足小説というジャンルを自分なりに開拓してみるつもりで書き始めたので、せめて小説の中でぐらい長年の見果てぬ夢を叶えたいと思い、そのものずばりの願望充足装置の発明を成功させてみたのだ。筆者にとっては、小説を読むことではなく、書くことが一種の疑似体験になったわけだが、苦しみながらも結構良い気分だった。〈あとがき〉より》
伊郷ルウ『甘やかされるモフモフ』セシル文庫・2016年
《ラグドール猫のドールは、ペットショップの店長・倉斗がとっても大好き。なぜなら売れ残ってしまったドールを引き取ってくれたから。好きすぎて倉斗と話がしたくてたまらなくなったドールは、ある月夜の晩、不思議な水晶玉に願いをかける。話だけがしたかったのに、あせったドールはなんと「人間になりたい」と願ってしまった! 人間になったドールは倉斗がもっと好きになって……。》
おおじこうじ『ハイ☆スピード!』KAエスマ文庫・2013年
《七瀬遙は、幼なじみの橘真琴、一つ年下の葉月渚と共にスイミングクラブに通う小学6年生。
別のスイミングクラブに通っていた、同じく6年生の松岡凛が遙たちの小学校に転校してくる所から物語は始まる。
奔放で好戦的な凛と、勝ち負けにこだわらずに泳ぐことが好きな遙。 対照的な二人だったが、真琴、渚たちと共に同じ目標に向かって泳ぐことになって――。
第2回京都アニメーション大賞〈奨励賞〉受賞作
京都アニメーション/アニメーションDo制作TVアニメ「Free!」原案。》
かみそう都芭『保育士は不夜城で恋をする』セシル文庫・2012年
《恋人に騙され、借金の保証人にされてしまった塔真はヤクザに勤務先である保育園に怒鳴り込まれ、クビにされてしまった。貯金もなく、困っている塔真に紹介された仕事は意外にも父子家庭の子供の世話。4歳の夏輝は可愛く、父親を困らせまいと、けなげに頑張っている姿にほだされてしまい、親身に面倒をみるようになる。やがて、父親の架住の事も好きになっていることに気づき……。》
水島忍『秋霖高校第二寮リターンズ1』ディアプラス文庫・2008年
《聡が秋霖高校&第二寮に入って一年が経った。再び巡ってきた希望の春、新学期―。波多野との関係にさしたる変化もないが、それに問題はないはずだった。ところが、第二寮に新たな住人が入寮。彼女は小説家・波多野の大ファンで、そのうえ寮内のおさんどん等々も楽しげにこなしてしまう。使い走りに恋人(?)の座。聡のポジションは奪われてしまうのか……!?ワンダフル・スクールライフ、嬉し恥ずかし大復活!!》
水島忍『秋霖高校第二寮リターンズ2』ディアプラス文庫・2009年
《「聡のことが死ぬほど好きなんだ」と、波多野は安藤の告白を断った。でも日常は変わらず、うっかり立ち聞きした台詞は聡の空耳だったとしか思えない。だから波多野の卒業まで、日々がこんなふうに続くはず、と考えていたのだ。そこへ聡の両親が帰国するというニュースが!聡は今すぐ寮を出ることになってしまうのか、そして波多野との恋(?)の行方は……? ワンダフル・スクールライフ、嬉し恥ずかし初合体♡》
水島忍『秋霖高校第二寮リターンズ3』ディアプラス文庫・2010年
《聡と波多野がついに、あるいはようやく一線を越えた後。日常は特にかわりばえもなく、いつもにぎやかだ。ところが聡が第二寮で二度目の夏を迎えたある日、「みのりの家」から一人の少年が怒鳴り込んでくる。週刊誌に女優との熱愛疑惑を撮られた波多野を浮気者呼ばわりした彼は、聡たちの関係をも知っていた。波多野と別れるよう、少年に迫られる聡だったが……? ワンダフル・スクールライフ、名残惜しくも祝完結!!》
髙月まつり『恋するドラゴン❤ハート』プラチナ文庫・2008年
《志乃滝勇気と弟が住む古ぼけた洋館に、雷と共に落ちてきた美貌の不審者、ルカ。王子様のような気品と無邪気なほどの非常識。どうやら人智を超えた高貴で尊いいきもの…らしい…? 謎だらけのルカは、蜜の囁きと甘い毒にも似たくちづけや愛撫で勇気を喘がせる。だが勇気は享楽も真摯な愛情も否定する。彼は、ある哀しみを抱いて必死に何かを護っているのだ。その哀しみが更なる事件となり勇気を襲った時、ルカは奇跡の─!? ここ、から。信じられない恋が始まる!! 》
加納邑『蜜愛アラビアンナイト』ディアプラス文庫・2009年
《砂漠のオアシス都市国家、金の国。ミントは次期国王・リアの側近見習い。即位したら民のために国をより豊かにしたい——そうおっしゃるリア様のお手伝いがしたくて王宮に上がった。なのにそのリア様から所構わず熱烈に求愛される日々。戸惑いを隠せないでいたある日、二人きりで『万能薬の木』なる薬を探す旅に出ることになる。それはリアが真に望むものらしいのだけど……? 王子×従者のスイートラブinアラブ♡》
御木宏美『華麗な恋の標的』B‐PRINCE文庫・2011年
《名士の子息ばかりが集まる、超名門校・私立金弓学園。母を亡くし、資産家の父に引き取られ東京へやって来た紅士は、転入早々、個性豊かなクラスメイトに囲まれ戸惑ってしまう。想像を超えた学園生活で、周りになじめずトラブルを起こしていく紅士は、注目の存在になっていた。そんな矢先、学園内で生徒を狙ったテロ事件が発生! 監禁され危機に陥った紅士を救ったのは、かつて愛を誓いながら別れた 「運命の人」 だった!?》
松岡裕太『極道のヨメ』プリズム文庫・2012年
《的場組の跡目・藤城修羅は、この春めでたく高校を卒業し、名門大学への合格を決めた。
それは幼い頃から想いつづけていた家庭教師・弥幸との「合格したら、恋愛対象としてみてやる」
という約束があったからだ。合格祝いの席で、勢い余る修羅が弥幸にプロポーズをすると、
「修羅がドMになるなら受けてやってもいい」と言われて!?泣く子も黙るヤクザの組長なのに、
ドMに開発~~!!??? 新婚生活はピンクなSM味♡》
イーデン・フィルポッツ『溺死人』創元推理文庫・1984年
《ダレハムの海岸で男の溺死体が発見された。その六週間前、自殺すると言って姿を消した一人の旅芸人がいた。当然、人生に絶望したその青年の死体と思われたが、死因に疑問を抱いたメレディス医師が、友人の警察署長に頼んで、独自の捜査を申し出る。かくして、単なる自殺事件と思われていたものの裏に隠れた真相に、独力で迫っていく……。名作『赤毛のレドメイン家』や『闇からの声』でおなじみのイーデン・フィルポッツが、死刑論や社会論を随所に展開しながら綴る1931年の長編推理小説。待望の本邦初訳。》
干刈あがた『ワンルーム』福武文庫・1988年
《土から離れ、切り割りされた都会の空間で“生”を営む現代の姿を、ワンショットで捉えた断片を積み重ねるという斬新な手法で描いた表題作に、生の飢餓感を満たそうと彷徨う“性”の実相を見事に浮彫りにした中篇「裸」を収録。》
収録作品=ワンルーム/裸
山田智彦『水中庭園』福武文庫・1989年(毎日出版文化賞)
《高度経済成長を目前にした昭和30年頃、未だ東海道新幹線は開通しておらず、「赤線」が存在していた時代に、岐阜の高校を出て上京し、大学生活を送る青年の眼を通して、性への憧れと目醒め、友人たちとの出会いと愛への焦燥、未曾有の就職難などを正面から描き、時代の青春像を浮彫りにしたビルドゥングス・ロマンの傑作。》
若狭萠『アラビアン・ルビー―紅鳥は夜に舞う』プラチナ文庫・2008年
《情熱の紅髪の踊り子・アイリンを金にあかして買い上げ、初蕾を散らしたのは、王弟・ギルスだった。恩人の借金返済に必死の覚悟のアイリンだったが「踊ってはならぬ」という命令にだけは従えない。踊ることは生きることと同じと抗うと、ギルスに甘く巧みな手練で籠絡された。躰芯を熱い剛直に炙られて、最後の誇りまで熔け落ちる。でもどんな贅沢よりも、自分は踊りたい。訳を話せと詰め寄っても、王の息子捜しに忙しいギルスは、抱きしめるばかりで相手にしてくれなくて…。 》
田知花千夏『男子寮の王子様』キャラ文庫・2014年
《大人しくてか弱い圭(けい)を守るのがおれの役目だ――従兄弟同士で共に育った翔太(しょうた)と圭。ずっと一緒だと思っていたのに、ある日、圭が全寮制名門男子校に進学してしまう!! ところが、圭を追いかけて高等科に入学した翔太が再会したのは、才色兼備で微笑みを絶やさない、学院の王子様な圭。しかも二人きりの部屋では態度が一変! 冷たい眼差しで「やっと離れられたと思ったのに」と告げられて!?》
高峰あいす『放課後は❤ウエディング』ガッシュ文庫・2007年
《僕・咲月ひなたは婚約者の黒正鷹矢さんとラブラブ同棲中! 貿易会社の専務・鷹矢さんはカッコよくて僕の一番大好きな人だ。でも僕ってホントに黒正グループの御曹司である鷹矢さんのお嫁さんに相応しいのかなあ? ある日、いつもは優しい鷹矢さんが「君を閉じ込めてしまいたい」と怖いコトを言い、意地悪なエッチをしかけてきた! それ以来、僕はなんだか不安でたまらなくなるんだ。…もしかしてこれって、マリッジブルー!?》
高階秀爾『ニッポン・アートの躍動』講談社・2015年
《長年、日本の美術評論のトップランナーであり続けた著者が、日本の現代アートの最先端をいく作品と作者を紹介し、縦横に論じた一冊です。
「豊饒なる混沌のなかにある」と著者が評する、多様な日本の現代アートの迫力を、まず感じてください。そのうえで、流麗にして行き届いた著者の鑑賞を読むことで、二十一世紀の今、アートをする、あるいは感じることの醍醐味が伝わってきます。
本書では、36人の作品と作者を取り上げます。
さまざまな手法を駆使したそれぞれの作品世界に入りこみ、著者とともに、この混沌の現代に生きるわれわれの感性に、あらためて思いをいたす、そんな経験のできる仕上がりです。
もとになっているのは、講談社のPR誌『本』の表紙を飾った連載「現代アートの現場から」です。これは、文芸評論家の三浦雅士氏が、短詩形文学における大岡信さんの「折々のうた」に匹敵する偉業と絶讃された連載です。これまで、『日本の現代アートをみる』『ニッポン現代アート』と単行本化されてきましたが、これはその掉尾を飾る一冊です。
美術史家・高階秀爾の、ひとつの到達点といえます。》
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