『冬干潟』は武藤紀子(1949 - )の第4句集。跋:中田剛。
作者は宇佐美魚目に師事、長谷川櫂に兄事、「晨」「古志」同人を経て、「円座」創刊主宰。
寒ければ鯉のひらたくなりにけり
わが道をゆかん大南風吹きたれど
熊野(ゆや)権現愛宕権現田水沸く
地に伏してゐし露草の起き上がる
死を告げに来し綿虫の大きな目
蠟燭五箱線香五箱雪残る
白雲に溶けゆく定家かづらかな
水の匂ひして初盆のすぐに来る
滝の上の水静かなり憂国忌
はだかはだしの童顔の神将よ
密に描けば抽象となる蝸牛
父に投げられし少女期といふ夏
ずぶ濡れの蛙の声と思ひけり
大石に父の匂ひや冬に入る
子規の忌の近づくオクラ畑かな
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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