2016年10月
邑書林
『虚(空)無』は米岡隆文(1951 - )の第1句集(ただしそれ以前に歌句集『観葉』、句歌集『隆』あり)。
作者は「藍」「里」「杭」同人。
片腕を忘れし卓に柘榴の実
月光を垂らし両腕断崖(きりぎし)へ
想念の泉の底に眠る猫
黒楽の内側深き春銀河
屈葬のかたちに眠るいつも春
初雪は天上で食べ残した分
手袋を脱ぐ人生をおりるごと
手を入れて壺中の銀河摑み出す
サングラスこの世の歪みただしたり
ゆっくりと妻が螢に成っている
めらめらと瞬時に蛇へ戻る縄
心太突けば無数の人柱
正常の範囲を超えて占地かな
病院へ死にに行く妻秋の暮
泣きながら妻の手袋探してる
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