『鳥船』は鈴木多江子(1947 - )の第1句集。帯文:鈴木太郎。
作者は森澄雄、川崎展宏に師事。鈴木太郎主宰「雲取」創刊時以来編集長、「貂」同人。
てのひらの中に海あり蝶の昼
柿啜る人間に口ひとつづつ
枯野ゆくごと体内を内視鏡
春眠のところどころに水溜り
照り降りの唐招提寺水草生ふ
牡丹の陰で誰かが着替へゐる
踏青にふいの奈落のありにけり
凍雲や乳首を祀る河童堂
流木は海のぬけがら冬の蝶
朝日さす柱に熊の爪の痕
春潮や原発沸騰しつつある
雁渡し孔子咽びしことあらむ
樹の陰に飢饉の夏のほとけたち ※前書「川越 三句」より
戦没者追悼式 小石川
百近き父につき添ふ終戦日
瓢の実の昏さ銀河系の冥さ
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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