また一ヶ月経った。
今月の書影でことに懐かしいのは『バルコニーの男』『謀殺のチェス・ゲーム』『ラヴクラフト全集2』『ちぐはぐな部品』など。『関ヶ原』も現行版とは違っている。馴染んだ装幀を変えられると身銭を切る気は失せる。
マイ・シューヴァル、ペール・ヴァールー『バルコニーの男』角川文庫・1971年
《淡い陰惨な曙光が立ち並ぶアパートの上をはいずり始める頃、バルコニーの上からストックホルムの街路を見下ろしている男がいた…市内に発生した連続少女誘拐事件の目撃者が別の事件の犯人だったという皮肉な展開は、むき出しの人間性をぶつけ合う警視庁の殺人課スタッフの魅力とともに、この作品を第一級の警察小説としている。》
山田正紀『謀殺のチェス・ゲーム』角川文庫・1982年
《日本最大の暴力団組長が撃たれたことから、全国の暴力団同士の激しい抗争が相次いだ。同じ頃、もうひとつのとてつもなく巨大な戦いが進行した。――電子工学の粋を集め、他国に10年はぬきんでいるといわれる夢の軍用機、対潜哨戒機PS-8が、突然レーダーから消失した。大走査網が敷かれ、徹底的に調査されたが、行方はわからなかった。
自衛隊の若きエリート、新戦略専門家・宗像は、この事件の背後に、ゲーム理論の天才ではあるが、アル中で脱落した元同僚・藤野の影をみる。国家的な機密をもつPS-8を奪った目的は何なのか!
北海道から沖縄まで、日本列島を血に染めて展開する、雄大なプロフェッショナル・アクションの力作長編。》
H・P・ラヴクラフト『ラヴクラフト全集2』創元推理文庫・1976年
《二十世紀最後の怪奇小説作家H・P・ラヴクラフト。その全貌を明らかにする待望の全集――本巻には、宇宙的恐怖にみちた暗黒世界への鍵ともいうべき『クトゥルフの呼び声』をはじめ、冥界の旋律にとらえられた老音楽家の怪異を描いた『エーリッヒ・ツァンの音楽』そして作者三大長編のひとつ『チャールズ・ウォードの奇怪な事件』の全三編を収録。》
収録作品=クトゥルフの呼び声/エーリッヒ・ツァンの音楽/チャールズ・ウォードの奇怪な事件
大江健三郎『日常生活の冒険』新潮文庫・1971年
《たぐい稀なモラリストにして性の修験者斎木犀吉――彼は十八歳でナセル義勇軍に志願したのを手始めに、このおよそ冒険の可能性なき現代をあくまで冒険的に生き、最後は火星の共和国かと思われるほど遠い見知らぬ場所で、不意の自殺を遂げた。二十世紀後半を生きる青年にとって冒険的であるとは、どういうことなのであろうか? 友人の若い小説家が物語る、パセティックな青春小説。》
仁木悦子『夏の終る日』角川文庫・1983年
《たまの休暇、仕事も忘れたはずなのに、なんと私の前には、ホテルのテラスから転落した女性の死体が……。
私立探偵などという因果な商売をするせいなのか。しかも帰京した私の囲りで、どうも殺人の臭いのする事件が続発したのだ。狙われたのは、うら若い美女。
「アッシには、関わりのない」と思いながら、いつしか事件の渦中に巻き込まれていた。
そして、謎の真相に近づいていった時、意外な事実が……。
私立探偵・三影潤シリーズ傑作集。》
収録作品=色彩の夏/どこかの一隅で/白い時間/しめっぽい季節/夏の終る日
柳田国男『遠野物語』角川文庫・1965年
《遠野郷は現在の岩手県遠野市付近をさす。今でこそ花巻から釜石にいたる鉄道の路線上にあるが,以前はまったく山にかこまれた山間隔絶の小天地であった。本書はその遠野の山里に古くより伝えられ、なおよく昔ぶりを保つ数数の物語を、学界の最高権威が、愛惜の心をこめてノートした貴重な記録である。》
司馬遼太郎『関ヶ原(上)』新潮文庫・1974年
《東西両軍の兵力じつに10数万、日本国内における古今最大の戦闘となったこの天下分け目の決戦の起因から終結までを克明に描きながら、己れとその一族の生き方を求めて苦闘した著名な戦国諸雄の人間像を浮彫りにする壮大な歴史絵巻。秀吉の死によって傾きはじめた豊臣政権を簒奪するために家康はいかなる謀略をめぐらレ豊家安泰を守ろうとする石田三成はいかに戦ったのか?》
司馬遼太郎『関ヶ原(中)』新潮文庫・1974年
《秀吉の死後、天下は騒然となった。太閤の最信任を獲得した能吏三成は主君の遺命をひたすら堅守したが、加藤清正、福島正則ら戦場一途の武将たちは三成を憎んで追放せんとする。周到な謀略によって豊家乗っ取りにかかった家康は、次々と反三成派を龍絡しつつ、上杉景勝討伐の途上、野州小山の軍議において、秀頼の命を奉ずる諸将を、一挙に徳川家の私兵へと転換させてしまう。》
司馬遼太郎『関ヶ原(下)』新潮文庫・1974年
《天下取りの見果てぬ夢を追い求めて関ヶ原盆地に群れ集った10数万の戦国将兵たち……。老獪、緻密な家康の策謀は、三成の率いる西軍の陣営をどのように崩壊させたか? 両雄の権謀の渦の中で、戦国将兵たちはいかにして明日の天下に命運をつなぎ、また亡び去ったのか? 戦闘俯瞰図とも言うべき雄大な描写の中に、決戦に臨む武将たちの人間像とその盛衰を描く、波瀾の完結編。》
クリフォード・D・シマック『大宇宙の守護者』ハヤカワ文庫・1975年
《冥王星へ向かう〈イヴニング・ポスト〉誌の二人の記者ゲイリーとハーブが、漂流宇宙船を発見した。老朽しきっているばかりか、推進装置さえ見当たらぬその不思議な宇宙船には、しかし生存者がいた。ただし、一千年の孤独な思弁の後に、驚異的な知力を獲得したという恐るべき少女が! 一方冥王星では、大宇宙の深淵より発せられた人知を超絶する謎の怪信号に、キングズリ博士が取り組んでいた。そして、このふたつがひとつに結びあわされた時、終焉するべく定められた大宇宙の運命と、それを阻止する人々との壮大なドラマの幕が切って落とされたのだった!》
マルグリット・デュラス『ジブラルタルの水夫』ハヤカワ文庫・1972年
《デュラスの人物たちは常に何ものかを待っている。しかし一度しかない白熱的瞬間を生きた人間にとって、それを再び望むのは不可能な願望ではないか。デュラスにとって、人間とは不可能で矛盾した欲望を内に秘めた悲劇的な存在らしいのだ。彼女が作品の題材や伏線として、ありふれた三面記事的情痴犯罪を選ぶのも故なきことではないだろう。》(訳者あとがき)
大岡昇平『愛について』新潮文庫・1973年
《ふとした偶然から知りあって結婚した最愛の妻冴子の不可解な事故死。彼女の面影をさがしもとめてめぐりあった少女エリもまた去って行く。冴子の死の真因をたずね、エリのゆくえを追う織部春夫の激情と行動の軌跡を、ゴーゴー喫茶、ハイウェイ、マンションなど、もっとも現代的な風景のなかに描いて、現代における神話的な愛の美と情熱の可能性をさぐる純粋な恋愛小説である。》
アンリ・ボーショー『オイディプスの旅』書肆山田・1994年
《種々の権威と思考が退位しつつあるこの世紀に対する自ら盲いた孤独な廃王の問い――何ものにも拠らず、内奥のまなざしのみを杖として歩み続けること/本邦初訳》
日影丈吉『応家の人々』徳間文庫・1982年
《常春の台湾が日本の属領だった時代、名門応家の奔放の美女・珊希をとりまく男たちは次から次へと不可思議の死をとげ、珊希もまた忽然と姿を消してしまった。
台南の田舎町で起ったこの怪事件を調査することになった久我中尉は、白昼の幻影のように消えた埋希の魅力にとり憑かれ、その行方を必死に追う。
茫漠たる砂糖黍畑、懶いような風物を背景に冴える推理の妙。異色長篇ミステリー。》
スタニスワフ・レム『星からの帰還』ハヤカワ文庫・1977年
《いくたの危難を乗り越え、10年にわたる調査探索の旅を無事終了した宇宙探査船プロメテウス号は、ついに母なる地球に帰還した。だが、その10年の間にすべてが変っていた! 宇宙船時間で10年、しかし地球時間ではなんと127年が経過していたのだ。超高度な発展をとげた機械文明、複雑化した社会機構、そして科学技術の粋を結集した異形の都市……。だがなによりも隊員たちを驚かしたのは、理解不能なまでに変貌した人々の心だった! 該博な科学的知識と豊かな想像力を用いて構築した未来社会を背景に、文明の発達と人間性の軋轢の問題を鋭くえぐりだした巨匠レムの問題作!》
中村敦夫『チェンマイの首』講談社ノベルス・1986年
《東京・赤坂の路上で焼殺事件に遭遇した“ドッギー”と呼ばれるデューク機関日本拠点員・堂田将司は、首なし死体の謎を追って、タイへ飛んだ。堂田を迎えたのは、十二年前のキリスト復活祭の日、密林に消えたタイ・シルク王ジム・ターナー発見の報らせだった。謎の混血美女ノイに導かれ、タイ奥地に踏みこんだ堂田が見たものは…。》
《著者のことば
私たちの周囲にあふれているのは、ゴミ箱に捨ててもかまわぬような情報ばかりだ。新聞も雑誌もテレビでも、決して真実を伝えようとはしない。最も緊急で重要な情報は、人々の耳目に届かぬ仕組みになっている。日本人がアジアについて、いつまでたっても何も知らされないなんて、余りにも不自然であり危険ではないか。私の小説は、こうした陰謀に対する挑戦である。》
S・L・エングダール『異星から来た妖精』ハヤカワ文庫・1981年
《魔の森と呼ばれる禁域に、突如現われた一匹の竜。この恐るべき怪獣の想像を絶する破壊力に、さすがの豪を旨とする騎士たちさえ、なんらさしたる功を奏することもなく、ただいたずらに屍の山を築くだけだった。そんなある日、貧しいきこりの息子ジョーリンとその兄弟は、竜の息の根止めて王の祝福を得んと、勇躍魔の森へと旅立った。が、意外にもかれらの行手に待ち受けていたのは、華麗なる妖精の乙女だった。しかもこの妖精、どうやら竜退治の手立を掌握しているらしいのだ……! SFとフェアリイ・テールが見事に融合されたファンクジイ!》
赤江瀑『巨門星―小説菅原道真青春譜』文春文庫・1990年
《「題名は、夜の王宮楼門高くに仰ぐ巨星を意味するが、表向きの歴史には登場しない平安京・夜の王朝支配者をも、描き配したいと思っている」(あとがきより)
時の最高官僚の位にのぼり、権争策謀のうず華やかな宮廷政界にあって、失脚、流亡の生涯を終え、果ては悪霊神と化す伝説を持つ官人菅原道真の青春を描く異色長篇。》
筒井康隆編『'73日本SFベスト集成』徳間文庫・1981年
《1973年は日本SFの浸透と拡散が始まった年であるといえよう。さまざまな話題がSF界内部にも外部にもぶっ続けに起こったという感のある、ひと口で語り尽くせない複雑な年であった。小松左京の9年がかりの大作『日本沈没』が爆発的なブームとなり、日本SF界としては空前のベストセラーになった。……「終末」ということばがマスコミにあらわれ、SF作家もずいぶんひっぱりだされた。――解説より》
収録作品=北杜夫「キングコング」/星新一「交代制」/河野典生「ニッポンカサドリ」/眉村卓「通りすぎた奴」/増村博「霧にむせぶ夜」/半村良「村人」/大伴昌司「立体映画」/野田昌宏「コレクター無惨!」/筒井康隆「熊の木本線」/矢野徹「さまよえる騎士団の伝説」/諸星大二郎「不安の立像」/小松左京「タイム・ジャック」/田中光二「最後の狩猟」/荒巻義雄「時の葦舟」
辺見じゅん『収容所から来た遺書』文春文庫・1992年(講談社ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞)
《敗戦から12年目に遺族が手にした6通の遺書。ソ達軍に捕われ、極寒と飢餓と重労働のシベリア抑留中に死んだ男のその遺書は、彼を欽慕する仲間達の驚くべき方法により厳しいソ連監視網をかい潜ったものだった。悪名高き強制収容所に屈しなかった男達のしたたかな知性と人間性を発掘した大宅賞受賞の感動の傑作。 解説・吉岡忍》
伊藤慎吾編『妖怪・憑依・擬人化の文化史』笠間書院・2016年
《古代から現代、『日本書紀』から『妖怪ウォッチ』まで、文学・絵画・民俗資料や小説・マンガ等の中で、異類はどのように表現され、背後にどのような文化的要素があったのか。異類の文化を解き明かす初の入門書!参考文献ガイド、異類文化史年表付!》(「BOOK」データベースより)
ハーラン・エリスン『世界の中心で愛を叫んだけもの』ハヤカワ文庫・1979年(ヒューゴー賞、ネビュラ賞)
《人間の思考を超えた心的跳躍のかなた、究極の中心クロスホエン。この世界の中心より暴力の網は広がり、全世界をおおっていく……暴力の神話、現代のパンドラの箱を描いてヒューゴー賞を受賞した表題作はじめ、核戦後、瓦礫の山と化したシティを舞台に力で生きぬくちんぴら少年たちと言葉を話す犬との友情を描く「少年と犬」など短篇15篇を収録。米SF界きっての鬼才ハーラン・エリスンのウルトラ・ヴァイオレンスの世界》
収録作品=世界の中心で愛を叫んだけもの/101号線の決闘/不死鳥/眠れ、安らかに/サンタ・クロース対スパイダー/鈍いナイフで/ピトル・ポーウェブ課/名前のない土地/雪よりも白く/星ぼしへの脱出/聞いていますか?/満員御礼/殺戮すべき多くの世界/ガラスの小鬼が砕けるように/少年と犬
西村寿行『呑舟の魚』角川文庫・1984年
《舟をも呑み込んでしまう怪魚が棲むという呑舟川。反乱を企てる“子供”が生まれた年には、かならず呑舟の魚が川に姿をあらわすという――この奇怪な言い伝えを残す北陸の名家に、ある日、ひとりの男がやってきた。実は彼こそが、この名家で言い伝えの年に産まれ、二十年前に失踪していた男だった。
弟の無事の帰還を、複雑な心境で迎える兄。このときから恐るべき骨肉の争いが始まってゆく……。
かきたてられる憎悪と狂気……。極限の中に漂う人間たちを描く、西村文学の秀作。》
清水一行『副社長』角川文庫・1987年
《経営不振に陥っていた日本空調の副社長・宮武宏次が深夜の津軽海峡で投身自殺した! ここのところ、驚異的な急成長を遂げ、前年東証一部に上場されたばかりの会社が、なぜ、にわかに経営が悪化したのか? 実兄の社長・片田正一は口八丁手八丁の辣腕家で、社内ではオールマイティな存在だったのに、死人に口なし、経営不振の責任を副社長になすりつけ、急場を凌ごうとしていた。だが、大型倒産の際には必ず顔を出し、腐肉をあさる悪徳金融業者の影が見え隠れしはじめた……。社長の責任回避と背任疑惑、知能犯罪集団の巧妙な手口――企業小説の傑作。》
フィリップ・ソレルス『例外の理論』せりか書房・1991年
《あらゆる既存のモラルをすりぬけて飽くなき探求を続ける巨大な知性の運動体ソレルス。モンテーニュ、サド、ジョイス、フォークナーからワットー、ピカソ、バッハ、聖書、フロイトを縦横に読み解く》
笹沢左保『血文字を記すは影』徳間文庫・1981年
《裾長いオーバーにゴム長、顔の半分を隠すトンボ眼鏡にベレー帽、大きなマスク――全身を覆った“影”のような奇妙な人物がコルト22を手に入れた。
「磯エリ子を殺し、その裸体に“白ブタよ死ね”と書いてやるのだ」
映画女優・歌手として売れっ子のエリ子は、その情熱的な美貌で人気があった。その彼女に殺意を抱う“影”の正体は誰?
虚飾の世界を舞台に描くサスペンス長篇。》
豊田有恒『倭王の末裔―小説・騎馬民族征服説』角川文庫・1977年
《「騎馬の民に国などいらぬ。行く先ざきで獲物を求め、山に寝、野に伏す毎日でよいのだ。妨げる者があれば、容赦なく殺せ!」。族長の息子・若卑狗は言いはなった。
しかし、時代は変りつつあった。それまで侵略に無抵抗であった農耕民族が自衛の力をつけ、騎馬民族の中にも安定した食糧生産を求めて農耕に走る部族が増えるにつれ、若卑狗たちの生活は次第に圧迫されていくのだった…。群雄割拠の南朝鮮から九州に渡った騎馬民族が、日本の礎を築いたという〈騎馬民族説〉を根底に、壮大なスケールで描く傑作古代ロマン。》
大江健三郎『われらの時代』新潮文庫・1963年
《快楽と不能の無限の繰返しから抜け出て、幼年時代の黄金の象徴であっ天皇の現在の姿に手榴弾を投げつけて爆破しようとする少年。遍在する自殺の機会に見張られながら、自殺する勇気もなく生きてゆかざるをえない“われらの時代”。いまだ誰も捉ええなかった戦後世代の欲望をさらけ出し、性を媒介に現代青年の行きづまりを解剖して、著者の新たな文学的冒険の出発となった長編小説。》
ニコライ・カレートニコフ『モスクワの前衛音楽家―芸術と権力をめぐる52の断章』新評論・1996年
《異質なものを混交させ独自の音楽空間を創造してきたロシア。苦難の創作活動を生き抜いた一作曲家の、ユーモアとイロニーに満ちた私的回想録。》
ウラジーミル・ナボコフ『見てごらん道化師を!』作品社・2016年
《自らの伝記的事実と作品をパロディー化し、物語のそこここに多様なモチーフ(サーカス、コンメディア・デッラルテ、気象、右と左…)を潜ませる―。ナボコフが仕組んだ「間違いさがし」を解き明かす訳注付き。》(「BOOK」データベースより)
青島幸男『ノミの反乱』新潮文庫・1982年
《銀行の横暴によって勤めていた会社を倒産させられマイホームも奪われた富塚は、復讐を心に誓うのだが、巨大な銀行に対しノミのような己れの無力さを嘆くばかりだった。ところが、日照権問題にからんで銀行の被害者たちと知り合った富塚は、仲間たちと共に、オンライン・システムの盲点をついて途方もない反逆に立ちあがる。現代日本の“金”の流れを巧みに捉えたドキュメント小説。》
高井有一『夜明けの土地』集英社文庫・1977年
《神代は五年ぶりに波津子に会った。学生時代、暗い翳をひいた波津子に魅かれながら気まずく別れてしまった彼女に……。過去が雨にうたれた青草のように鮮やかに現われた。“遅すぎるかも知れない。しかし或いは何かが起るかも知れない”予感にふるえる心に明りが見える。よりどころのない愛の姿を執拗に追求しながら、生への絶望からの新生のよろこびをうたう長篇。 解説・松原新一》
井上光晴『死者の時』集英社文庫・1977年
《昭和20年5月。佐世保で父親は〈戦死者霊媒会〉を開き、厭戦思想宣伝の疑いで特高に調べられている。天草では特攻隊員の彼の長男が、祖国と日本人について問い続けながら出撃の時を侍つ。天皇、差別、国家など権力構造を明らかにし、戦争末期の“死者の時”を生きる人々を鮮烈に現出する。 解説・松原新一》
笠井叡『カラダと生命―超時代ダンス論』書肆山田・2016年
《身体とともに時代の中に在るということ
考え尽す 笠井叡
時空を超えて、今あろうとする命、ということ
混迷と変容の真只中に在る21世紀の人間──植物生命動物生命を摂取することで鉱物を体内に獲得する人間生命は、今や、悠久の鉱物生命の一環としてのみ在り得るのではないか。》
大沢健夫『寄り道の多い数学』岩波科学ライブラリー・2010年
《日本数学コンクール(1990年発足)で出題された中高生向けの問題を、出題者の一人である数学者が、問題の背景である先端科学の話題に触れながら解説した本。フラーレン、トポロジー、力学系、情報理論、動く座標などのテーマについて、歴史上の大数学者たちの逸話を交えながら、具体的な問題に即して数学のアイディアを平易に説明。》
西村京太郎『日本海殺人ルート』講談社ノベルス・1987年
《青森、大阪間を走る特急「白鳥」の車内でファッションメーカーの女社長・小野木ユミが刺殺され、続いて副社長・矢野豊も殺人者の手にかかった。ユミの莫大な遺産は、前夫・山本巧、姪・土橋かおり、秋田の女子大生・福沢みどりが、相続することになった。2人の死は誰に利益をもたらすのか? 十津川の調査は続く。》
高将にぐん『キミログ』白泉社花丸文庫・2007年
《どこにでもいそうな中学二年生の高垣睦は、寝る前にインターネットに繋ぐことが日課になっていた。ある日、睦は同じクラスで近寄りがたい優等生の曽原淳が開設しているブログを偶然発見する。が、そこに書かれている文体は、普段の曽原とは全然ちがう弾けた文体で、秘かに好きな人がいるなんてことも告白していた。が、その「好きな人」の符号がなんだか睦と合致するような気がして!?
第58回花丸新人賞受賞作に書下ろしを追加した、純愛電波恋物語。》
森山侑紀『ゆるゆる男子の花婿選び』講談社X文庫・2009年
《「嫁になるとして、誰の嫁になるんだ?」世界に名だたる花園グループの御曹司、花園伊毬はお坊ちゃま学校に通う十七歳の男子高校生だ。とんでもなくおバカだけど、美少女よりも可愛いと評判だ。そんな伊毬のとなりには、幼なじみで花園家に代々つかえる的場家の息子、的場大地の姿があった。花園家の秘密をかかえた伊毬を守るため、日々奮闘する大地だが、伊毬にプロポーズする男が現れて!?》
上杉聰『日本会議とは何か―「憲法改正」に突き進むカルト集団』合同出版・2016年
《変容する右派勢力、日本会議がめざす世界。本書は、安倍政権の頼りとする日本会議を実態に即して紹介する。「憲法改正」を切り口に、彼らがめざす社会とはいったいどんな社会なのか、その論理・手法・政権との関係はいったいどうなっているのか、彼らの計画を可視化する。》(「BOOK」データベースより)
五木寛之・鎌田東二『霊の発見』学研M文庫・2013年
《なぜ私たちは、心霊や霊能者に惹かれるのか? 霊の存在を身近に感じるのは、万物に神や仏を見出す日本的な心情に由来する――二人の対話者は、そう喝破する。超能力や死後の世界など、ともすれば胡散臭く見られるテーマを、作家と神道家は真摯に掘り下げてゆく。そして縄文時代から連なる「霊を畏れ敬う感性」をキーワードとして、日本人の心奥があぶり出される。五木寛之「発見シリーズ」ますます好調、第四弾!》
森本あき『再婚相手をぶっとばせ!!』白泉社花丸文庫・2008年
《『はっきり言って、大っきらいなタイプ』母親の再婚相手は、まず外見が水仙の敵だった。容姿端麗、爽やかな笑顔。そのうえ年齢が水仙とほとんど変わらず、定職にもついていない。そんな相手・佐藤白虎とふたりきりでお試し同居という青天の霹靂に、水仙は拒否感120%!
けれど、その料理の腕前や人生観を知るにつれ、次第に好意しか抱けなくなってしまい……。
―――白虎さんと仲よくするのは、誰のため?
未来の家族との、超ドキドキ・親睦生活❤》
サガン『愛は遠い明日』新潮文庫・1987年
《フランス北部にあるサンソン鉱業の会計課に勤めるゲレは、貧しくおとなしい若者だった。冬の日の夕方、下宿に帰る途中、ぼた山付近で巨額の宝石を拾ったゲレの運命が狂いはじめた! 欲望と夢と虚栄心から強奪犯人になりすましたゲレ。強かな野心で彼を誘惑する下宿の女主人マリア。過去をもつ年上の女に翻弄されながら、アフリカでの愛の生活を信じる若者の悲劇を描く長編小説。》
あさぎり夕『先生は振りむかない』B-PRINCE文庫・2008年
《高校生の歩夢は、誰もが目を奪われる美貌の教師・鳴海の幼妻❤(もちろん、学校にはナイショ☆)歩夢の無垢な心とカラダは鳴海に喜悦でトロかされ、翻弄されて、ラブラブな毎日を送っていた。しかし、そんな二人の元に届いたのは、黄色い薔薇―花言葉は嫉妬―の花束と、二人の仲を引き裂こうとする脅迫状…? 歩夢達の新婚生活の行方は!? 強引な先生×ウブな生徒の愛とHが特盛り❤❤ 大幅加筆修正&書き下ろしショート付で復刊!!》
森山侑紀『アイドルになんか恋をするな!』講談社X文庫・2011年
《どうしてこんなことになったんだ――!?
勝ち気な高校生・井上左近の人生は人気少女マンガ家の母親と、甘ったれの双子の弟・右近のせいでおかしなことに。普通の生活がしたいだけなのに、気がつけばネット界の人気ナンバーワン美少女になっていた!! 誰にも知られたくない秘密だったのに……。そんなある日、左近の前にストーカーが現れて!? パワフル&ハートフルな青春の行方は❤》
あすか『陰陽師の花嫁』プリズム文庫・2008年
《大学生の淳平は、幼ない頃両親が狐と交わした契約のため、19歳になったら妖狐(オス)の花嫁にされてしまう。なんとかしなくては、とやって来たのが、美しい陰陽師・晴龍のいる神社。ところが晴龍まで「君は私の花嫁だ」と言い出し、淳平を裸にして指を這わせてきた! これってただのセックスでは!? でもあまりの快感に淳平は我を忘れて…❤ 妖狐と陰陽師に奪い合われ、淳平は無事19歳を迎えられるのか!?》
星新一『ちぐはぐな部品』角川文庫・1972年
《宇宙パトロール隊が偶然発見したジフ惑星はすばらしい星に見えた。人口過剰の地球にとって、この上ない植民地であり、別荘地である。かくして、基地の建設が始められたが、次々とその目的は、不思議な幻の出現によって攪乱される……。
限りなき人間の慾望を抉る「いじわる星」の他、29篇を収める傑作ショート・ショート集。》
収録作品=いじわるな星/万能スパイ用品/陰謀/歓迎ぜめ/接着剤/なぞの贈り物/飲みますか/廃屋/宝島/名判決/魔神/凍った時間/みやげの品/シャーロック・ホームズの内幕/夜の音/変な侵入者/恋がいっぱい/足あとのなぞ/抑制心/みごとな効果/神/最高の悪事/ネチラタ事件/ヘビとロケット/鬼/取立て/救世主/出入りする客/災害/壁の穴
岩川隆『忍魁・佐藤栄作研究』徳間文庫・1984年
《「沖縄の祖国復帰が実現しない限り、わが国にとって戦後は終っていない」と名台詞を残した沖縄返還、それと韓国との国交正常化が佐藤栄作の二大業績といわれる。
忍耐の政治家、吉田学校の優等生といわれ、保守本流を守って八年の長期政権が可能だったのはなぜか。佐藤栄作の陰にあった造船疑獄、鳩山一郎との確執。そして見え隠れする兄岸信介の姿。佐藤政権をみごとに浮き彫りにした政治ドキュメント。》
瀬山士郎『数学記号を読む辞典』技術評論社・2013年
《これで数学記号の意味・読み・使い方がわかる!小学生レベルの数字「1、2、3…」からはじめて、最終的には大学レベルの数学記号に到達する、読み通せる辞典風数学エッセイ。》(「BOOK」データベースより)
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