今回、装幀で懐かしいのは眉村卓『ショート・ショート ふつうの家族』(角川文庫)、山田正紀『超・博物誌』(徳間文庫)、半村良『新宿馬鹿物語』(文春文庫)、西村京太郎『聖夜に死を』(徳間文庫)、横溝正史『髑髏検校』(角川文庫)など。横溝正史『髑髏検校』は、松山のブックオフで俳句甲子園の合間に買ったもの。
ジョルジュ・ペレック『眠る男』水声社・2016年
《〈眠る〉ことによって時代の空気に耐えた、ある男の物語ーー
パリを彷徨する一人の青年の日常を細部にいたるまで活写しながら、60年代のフランスにただよう〈空気〉と〈孤独〉を描いた傑作がついに復刊!》
吉増剛造『怪物君』みすず書房・2016年
《60年代から現在に至るまで、現代詩の最先端を疾走する詩人中の詩人、吉増剛造。
大震災からの五年、渾身の力を込めて書き続けられた一連の詩「怪物君」。本にするのは不可能といわれてきた詩の群れがついに詩集のかたちになる。
震災の後に見た光景、土地の記憶、人々の声、古今東西の言葉……。生者と死者が交わる場所に途方もないヴィジョンが立ち上がる。囁くように、叫ぶように、音楽のように、あらゆる声が響き渡る、世界に対する詩人の応答。》
四方田犬彦『ひと皿の記憶―食神、世界をめぐる』ちくま文庫・2013年
《「食べものとは失われた時間であり、もはや記憶のなかにおぼろげにしか蘇ってこない何ものかであったのだ」。日本の山椒、釜山のコムタン、ナポリの蛸、タンジェのミントティー――。数多くの国に滞在した経験をもつ著者が、記憶の果てにぼんやりと光るひと皿をたぐりよせ、追憶の味(あるいは、はたせなかった憧れの味)を語る。熟達した文章でつづる書き下ろしエッセイ。》
大西巨人『精神の氷点』みすず書房・2001年
《あの「幻の処女長篇」が遂に半世紀ぶりの姿を現わす!復員者・水村宏紀の彷徨する「魂と虚無」の相克を迫真の筆で描き切った、衝撃力溢れる待望の傑作。》(「BOOK」データベースより)
南田みどり編訳『二十一世紀ミャンマー作品集』大同生命国際文化基金・2015年
《ミャンマーは2011年に民政移管を果たし、2012年には約50年に及んだ出版物の事前検閲が廃止されました。本書に収録されている短編は、大半が「民政移管」以前の作品です。
ジャーナリズムが民衆の生活実態を報道することが困難だった軍事政権下では、検閲の間隙をついて、生活の細部の真実は本書に収められたような「人生描写」短編によって描き出されました。
本書では、ベテラン・若手の作家・詩人30名による短編小説14編、詩16編を、生・老・病・死の4つのカテゴリー別に紹介しています。
いずれの作品も現代ミャンマーの日常を生きるさまざまな階層の老若男女の感慨がみずみずしく表現されています。これらを通して今日のミャンマー社会への理解を深めていただければ幸いです。》
加納邑『だってキツネなんだもん❤』B-PRINCE文庫・2009年
《「どうしてだろう、正志さんとは一緒に寝たいし、キスしたい❤」
顔も良く、賢いのに頭の固い准教授・正志の家に、ある日仔ギツネが迷い込む。なんとその仔ギツネは紺といい、可愛い男の子に姿を変え、父親を探しにここへ来たらしい。そんな紺に戸惑うが、すっかりなつかれてしまう。ひたむきに自分を慕う姿に、次第に紺が可愛く見えて!?
問題も解決、2人はラブラブ❤次なる目標は『正志さんの花嫁』!? 続編も超スイート❤》
山田亮太『オバマ・グーグル』思潮社・2016年
《ここに書いておく
百年か二百年たってもう一度
何回目のまばたきをここにあるからだは生まれてからいままでに呼吸を積み重なる記憶を
はじめましてさようなら
私たちは分け合った時間を持って帰る
(「タイム」)
名づけられない労苦を経て送られた膨大な支援物資の記録。押し寄せる波のただなかに立ちつくす自動販売機のシルエット。<オバマ>という現象をめぐりインターネット上を駆け巡るニュース。事実と記述から取材され選択された無数の言葉は、詩という独自の生命体で不滅の文字となってよみがえる。装幀=小田原のどか》
chi-co『好き、好き、大好き!』B-PRINCE文庫・2012年
《好きで好きでたまらない吾妻君とお付き合いがスタートした永江君。「男同士のセックス」 について猛勉強した永江君は、自分が攻めか受けかで悩むことに。アレが小さいほうが挿入される側も負担がないだろうと思った永江君は、自分が吾妻君を抱こうと決意!! 吾妻君に気持ち良くなってもらうため、毎日自分の体であれこれ試していた永江君は、あちこち敏感になっちゃって❤
両想いのその先にあるエッチの結末とは!?》
うえだ真由『チープシック』ディアプラス文庫・2003年
《高校生活を物足りなく感じ、アルバイトに精を出していた帆高は、臨時のバイトを頼まれた先で社員の寿之と出会う。仕事の出来る寿之に憧れを抱き、他の人より少しだけ特別扱いされて嬉しいと思い始めたバイト最終日、家まで送ってもらった車の中で、当たり前のようにキスをされて——。キスはくれるのに言葉はくれない寿之に、帆高は……!? 書き下ろし甘々温泉旅行も収録。スウィート・ラブ・ミッション❤》
うえだ真由『モニタリング・ハート』ディアプラス文庫・2005年
《ごめんね、桐野君が好きなの――またこのセリフか。死ぬほど彼女が欲しいのに、なぜか女の子に縁のない寿。校内一のモテ男・桐野晴佳に抗議しに行くものの、自分がモテない理由を指摘されさらに落ち込むはめに。そんな寿に、晴佳がある提案をする。自分とつきあって、女にモテるコツをつかめばいいと――。こうして、二人の恋人ごっこが始まるが……? ちょっぴりおバカでほんのり切ない、恋愛観察日記決定版!!》
ジャン・ドゥーシュ『進化する遺伝子概念』みすず書房・2015年
《遺伝子という概念は、どのように形成されてきたのか。歴史と研究の最先端を、遺伝学と発生学の融合による進化学(エボデボ)を牽引するフランスの第一人者が描く。
受精・遺伝・発生を古代や中世の人々はどのように説明したのか。育種家の長い伝統と試行錯誤。自ら雑種をつくる実験を行いながらも遺伝や多様性にかんする理論をつくれず、偶然の変化も獲得形質も遺伝すると考えたダーウィン。物理学を学び統計的手法を使ったメンデルは、形質と因子を区別した点で画期的だったという。
20世紀前半、染色体上にならぶ遺伝子の地図がつくられたが、やがて点ではなく長さをもつ機能単位がとって代わる。
1953年にはDNAの二重らせん構造が確立、まもなく遺伝暗号も解読される。しかし転写されてもタンパク質に翻訳されない非コードRNAの存在、オペロンモデルに含まれる制御領域、一つの遺伝子から複数の異なる産物がつくられる選択的スプライシング、ヒストン修飾によるエピジェネティクスの解明などにより、分子レベルの遺伝子概念は矛盾をかかえつづける。
環境と相互作用をくりかえす動的な生命システムがもつ情報は、DNAのデジタル情報だけではないと著者は主張する。生物は開放系であり、コンピュータと違って偶然と選択との産物なのである。
植物ゲノム学・生命哲学を専門とする訳者の理解の行き届いた翻訳により、本書には生命の不思議の森を歩む愉しさがある。
エポックメーキングな研究者達の小伝付。》
収録作品=海底大陸/怪鳥艇/地球盗難
山本沙姫『いもうとサマーデイズ―お兄ちゃんといっしょ』二次元ドリーム文庫・2007年
《突然の父の再婚で、四人もの義妹ができてしまった浩介。共に暮らすうちに、彼は美少女姉妹から兄として、一人の男として慕われていく。薄着で、スク水で、ブルマーで!? 過激なスキンシップをはかってくる可愛い妹たちとの、忘れられない夏が始まる!!》
蒼井村正『執事えすかれーしょん―ご奉仕しますお嬢さま!』二次元ドリーム文庫・2007年
《執事として名家に仕えることになった翔太郎。だが、そこには一癖も二癖もある令嬢たちが! 大邸宅で学園で、ペットごとく弄ばれる少年執事。令嬢三姉妹を前にして、エッチ&恋に、心と身体でご奉仕し尽くす執事生活が始まった! 》
鹿島茂・福田和也・松原隆一郎『読んだ、飲んだ、論じた―鼎談書評二十三夜』飛鳥新社・2005年
《歴史・風俗、文学・政治、経済・社会をそれぞれ専門とする現代屈指の書評の達人たちが、問題作・話題作を俎上にのぼせ、熟読玩味、談論風発、美酒・美肴を心ゆくまで味わいつつ繰り広げる、愉しき語らいの夜。》
松岡裕太『誘惑のプリンスに首ったけ』ガッシュ文庫・2010年
《かっこいいのに中身はオタクな秀樹の前に現れたのは、美人なのに俺様で性格の悪い海児! 秀樹は二次元にしか興味が無いから知らないけど、彼は超人気の歌手。その海児を前にしても、萌えメイドアニメの抱き枕が欲しいと二次元に想いを馳せる秀樹に、海児は「その抱き枕買ってやるから、俺のメイドになれ」などと命じてきて…!? 童貞メイドにご奉仕されて感じちゃうスケベなご主人様にはお仕置きです❤ ハイテンション・エロティックラブ!》
マーティン・ファクラー『安倍政権にひれ伏す日本のメディア』双葉社・2016年
《「今、日本はアメリカが辿った“暗い未来”へと突き進んでいる」右傾化する政権、監視国家化、ネトウヨ…権力からの「圧力」に屈し、なすべき批判を放棄する大手メディア。日本取材歴20年のニューヨーク・タイムズ前東京支局長が決意の告白!世界から見たABE JAPANの危うい正体。》(「BOOK」データベースより)
堀内統義『戦争・詩・時代―平和が平和であるために』創風社出版・2016年
《正岡子規や大和田建樹が生きた明治。尼崎安四の強靱、清冽な詩精神。富澤赤黄男の戦場での真情。戦争や治安維持法のもとで青春を過ごさざるを得なかった詩人たち。近代日本社会の歩みのなかの詩人たちと戦争の関わりを振り返る。
「(戦後70年を経て安全保障関連法案成立、集団的自衛権行使を容認する法的整備が進められるに至った)こうした時期、わたしは近代日本社会の歩みのなかで、詩人たちが戦争と、どのように関わり合ったかを、あらためて見てみたいと思う。過去の歴史は、常に現在からの審判に向き合わねばならない。というまなざしよりも、確かめることによって新たな未来に向けて、しっかりと、いまを考えたいと思うからだ。」(はじめにより)》
財部鳥子『氷菓とカンタータ』書肆山田・2015年(高見順賞)
《美しい音楽にかさなって聞こえてくるもう一つ
の小さな響き───細ることなく消えることも
ない記憶を拳に握りしめ、世界で一番さびしい
少年が走る。大江の川波にむかって、「おーい」
と叫んでいる。遠い未来が少しかすんで揺れる。》
山田正紀『地球軍独立戦闘隊』集英社文庫・1982年
《未確認飛行物体――炎の戦闘機。オレンジ色または赤色の燐光を発し、編隊を組んで飛行する謎の球体。昭和十九年、日米決戦の南太平洋上にこつ然と出現したUFOに、名機零戦が挑む表題作。他に「恋のメッセンジャー」「眠れる美女」「西部戦線」「かまどの火」「霧の国」の傑作SF五篇を収録。解説・横田順彌》
収録作品=地球軍独立戦闘隊/恋のメッセンジャー/眠れる美女/西部戦線/かまどの火/霧の国
草上仁『スター・ハンドラー(上) 』ソノラマ文庫・2001年
《異生物訓練士養成校の卒業試験でオチャメなミスをおかしてしまったミリは、最低の成績での卒業を余儀なくされてしまう。絶望的な就職活動のさなか、息抜きのつもりで訪れた地元の共進会で、なぜかロデオのレディース選手権に参加することになったミリ。だが、そこでの彼女の活躍がゼネラル・ブリーディング社の仕入れ担当支配人の目にとまり、思いがけず内定をゲットして――!? ミリと溲瓶形宇宙船〈バセットハウンド〉の愉快な仲間たち(?)が繰り広げるスラップスティックSF。》
草上仁『スター・ハンドラー(下)』ソノラマ文庫・2001年
《軍の支援でもない限り、緊急の場合においても着陸を禁じられている、惑星リュアーナ。そんな危険度Aの惑星に不時着してしまったミリたちは、さっそく凶暴な飛行生物・オオドラゴンモドキと遭遇する。しかも白分たちの傍らには、群れの数に異常なこだわりを持つポチがいるので、個体数にも気をつけなければならない……。なのに、“狩りが始まると他のことを全て忘れる男”シャブルが、他のことを全て忘れてリニア・ライフルを持ち出して――!? 笑いと冒険が満載のスペオベ新喜劇、完結!》
SEALDs『日本×香港×台湾 若者はあきらめない』太田出版・2016年
《SEALDs(日本)、雨傘運動(香港)、ひまわり学生運動(台湾)
――国境を越えた「学生運動」の連帯は可能か?
東アジア学生対話集。》
堤未果『政府は必ず嘘をつく―アメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること』角川SSC新書・2012年
《3・11の大震災以降、原発事故・放射能対策からTPPまで、政府や東電、大手マスコミの情報は隠ぺいされ、偏った報道が蔓延るなど、国民には真実が知らされていない。アメリカでは9・11の同時多発テロ以降、大惨事につけ込んで実施される過激な市場原理主義「ショック・ドクトリン」によって、貧困格差が拡大し続けている。「情報が操作され、市場化の名の下に国民が虐げられているアメリカの惨状を見るにつれ、このままでは日本が二の舞になる」と警告。今こそ、自らが考え、行動し、真実を見抜く目を持つことの意義を問いかける。》(「BOOK」データベースより)
浅羽通明『「反戦・脱原発リベラル」はなぜ敗北するのか』ちくま新書・2016年
《安保関連法を成立させ、原発再稼働を進める自公政権。十万人以上を官邸前へ国会へ集めても勝てなかったデモ。若者を巻き込んだ楽しくかっこいい社会運動を礼賛し歓迎したメディアと知識人たちは、論点を巧みにすり替えていなかったか。丸山眞男、柄谷行人、小熊英二、高橋源一郎、SEALDsらの言説から、リベラル勢力を劣化させる病巣を徹底摘出。これは勝ちたいリベラルのための真にラディカルな論争書だ。》(「BOOK」データベースより)
田辺聖子『もと夫婦』講談社文庫・1975年
《何気ない日常生活にひそむ、おかしさ、愚かしさ、そして愛の喜びと悲しみを、関西弁の味を心憎いまでに駆使して描く田辺聖子独自のユーモア世界……別れた夫婦が喧嘩をくり返しながら、いつのまにか元のさやにもどった「もと夫婦」、他に「求婚」「あじさい娘」「あめりか・じゃがたら文」「金蒔絵の雲」等9編を収録。》
収録作品=もと夫婦/求婚/あじさい娘/あめりか・じゃがたら文/金蒔絵の雲/蒸発旅行/暗い花/首くくり上人/壇の浦
眉村卓『ショート・ショート ふつうの家族』角川文庫・1984年
《父、母、そして大学生の兄と、中学三年生で受験生の信夫――こんなごくありきたりの家族なのに、周囲で起きるのは変な出来事ばっかり……。
宇宙人からのお礼の話、成績が上がるか、さもなくば死ぬかという薬の話。窓の下が異次元だった話……いったいぜんたい世の中どうなってんの? 何か天変地異の前ぶれか、それとも夢でも見ているの? ひょっとしたら、もう明日という日はないのかも……。
眉村卓が、ふつうの家庭の周囲を舞台にショート・ショートで描く、ちょっぴり危険で魅力的な全67話。》
収録作品=雨の夜/教卓ジャック/すごい薬/電車を待てば/変な役所/酷使のあと/変な箱/おばけ/訓練/柔道/工事/お礼/警官/みぞれ/仕返し/車内/赤い車/母の姿/ぬいぐるみ/瞬間移動/かん詰め/テレビの調整/スケッチ/切符/居眠り/ポスター/空き地/釣りに行こう/見世物/鉛筆/洗濯物/転落/救出(1)/救出(2)/変なこと/日野青年/なめくじ/告白/おもての子供たち/祈り屋/続おもての子供たち/波/盆踊り/火事のあと/台風来/夢のけむり/椅子の山から/無礼な来訪者(1)/無礼な来訪者(2)/無礼な来訪者(3)/隔離(1)/隔離(2)/隔離(3)/隔離(4)/隔離(5)/隔離(6)/隔離(7)/隔離(8)/隔離(9)/隔離(10)/先行テレビ/錠/五里霧中(1)/五里霧中(2)/五里霧中(3)/五里霧中(4)/五里霧中(5)/雨の夜
山田正紀『超・博物誌』徳間文庫・1985年
《はるかな未来。人類はすでに遠く深宇宙にまで進出。冒険者たちの華々しい活躍、重要な科学的発見そして戦争、そんな歴史の流れの片隅で、わたしは、宇宙の小さな生き物たちの観察に生きがいを感じてきた。
体に生体核融合炉を持ち火の花に群がるプラズマイマイ。星々の追悼のメモリアルであるデザスター。超高速で宇宙へ飛び出そうとして燃えつきてしまうRUN。博物学者のわたしが綴る生物たちへの讃歌。》
収録作品=プラズマイマイ/ファントムーン/カタパルトリッパー/シエロス/メロディアスペース/タナトスカラベ
半村良『新宿馬鹿物語』文春文庫・1980年
《喧騒と混沌の町・新宿。だが、バー〈ルヰ〉の周辺には優しく暖かい新宿の心がなお息づいている……。一軒のバーを舞台に、マスター夫婦を始め、そこに集まってくるバーテン、ホステス、客たちが笑いとペーソスの中であやなすほのぼのとした人間模様。直木賞を受賞した傑作「雨やどり」に続く“人情馬鹿”シリーズの集大成。》
遠藤周作『現代の快人物―狐狸庵閑話』角川文庫・1972年
《おなじみ、グウタラ男の狐狸庵山人、ひねもす布団の中に虫のように丸まって暮すことを理想とするが、日本中のグウタラ生活愛好者を代表して、非グウタラ人間の生活と意見を聞くことを思いたった。
訪ねる相手は、青年キャバレー王、催眠術師、前衛画家、新興宗教教祖、等いずれ劣らぬ異色の人物。
いかなる話題が飛び出すやら……珍無類の人間探訪記。》
西村京太郎『聖夜に死を』徳間文庫・1982年
《クリスマス・イブの新宿でサンタ姿の若者を口論の果てに刺殺した岡崎元刑事弁護士――彼は何者かのガス弾による襲撃にまぎれて、忽然と公判廷から姿を消した。
一方、1人の若者が110番へ通報中に殺害され、そのダイイング・メッセージは“クリスマス・イブにサンタクロースが”であった。
岡崎の行方を追う山本検事と佐伯は、2つの事件の奇妙な謎の符合を追いかける。
精緻な構成で読者を圧倒する長篇推理。》
三浦哲郎『おふくろの夜回り』文春文庫・2013年
《稀代の名文家として名を馳せた著者が、「オール讀物」の巻末頁で書き継いだ随筆集。わずか千字の中に、故郷である東北の風土やそこで暮らす人々の肌合い、或いは亡き父母を慕う心根といったものが、すぐれたデッサン画をみるように確かな筆致で表現されている。短編の名手でもあった作家の本領が伺える一冊。解説・秋山駿》
横溝正史『髑髏検校』角川文庫・1975年
《総髪を風になびかせ、巨大な蝙蝠のように両袖をひるがえして石碑の上に立つ髑髏検校。やがて彼は妖しい呪文を唱え始めた。すると突然、墓の中からバラバラの骸骨が飛び出し、まるで生きているように踊り出した!
文化八年元旦、豊漁に賑う房州白浜で、一頭の鯨の腹からフラスコに入った長い書状が出てきた。これこそ、後日、江戸中を恐怖のどん底に陥れた、あの怪事件の前ぷれであった……。
怪異の極致を描く横溝正史の異色時代小説、他1編収録。》
収録作品=神変稲妻車/髑髏検校
黒岩重吾『深海パーティ』集英社文庫・1981年
《大阪はミナミの歓楽街。ヒモ願望のボーイ押川に、美貌の新入りホステス早苗が裸身を張って近づいてきた。そして数か月後――、押川は大手電機メーカーの女秘書と心中死体で発見された……。(第一話「雑学を笑うな」)華やかな夜の世界に生きるホステスとパトロン達の様々な生態と、背後に隠された欲望と巧妙な罠を、過去を捨てた男・海堂の醒めた眼が暴く。オムニバス型式の異色推理。
解説・武蔵野次郎》
収録作品=深海パーティ/結婚前奏幻想曲/あいつも隠した/東京の下宿/旅先きの女/スカウトした女
アレクサンダー・ゴットリープ・バウムガルテン『美学』講談社学術文庫・2016年
《人間にとって「美」とは何か?―この究極の問いを初めて徹底的に問うたのが、一七五〇年から五八年に公刊された本書である。厳密な定義に基づくバウムガルテンの考察があったからこそ、のちのカントやヘーゲルは「美学」という学問を確立することができた。西洋文化の厚みと深みを知る上で決して避けては通れない大古典作品の全訳、初の文庫版!》(「BOOK」データベースより)
横田順彌『ヨコジュンのビックリハウス』角川文庫・1983年
《無節操、ナンセンス、そして、“馬鹿馬鹿”しさをのりこえてしまった“馬鹿馬鹿”しさ……この八方破れ、無双無敵のハチャハチャSFの世界とは……?
「ダジャレ診断Q&A」「ハナモゲラ対談」をはじめ、アメリカでの奇行珍談……etc。この一冊でハチャハチャSFの始祖・横田順彌の原点を知ることができる。
さて何か飛びだすか、日本初公開のユニーク・ビックリ文庫。》
吉行淳之介『贋食物誌』新潮文庫・1978年
《鮨屋でトロをたくさん食べるのはなぜその店に気の毒であるのか、別府温泉の城下がれいがいかに美味であるか、落花生と南京豆とピーナッツは同じものか異なるものか、etc……たべものを話の枕にして、男女の問題、少年期の回想、交友、お酒、セックス、ギャンブルその他豊富な人生経験を自在に語る洒脱なエッセイ。本文と絶妙なコントラストをなす山藤章二のイラスト101点を併録する。》
宮沢章夫『東京大学「80年代地下文化論」講義 決定版』河出書房新社・2015年
《あの時代とは何だったのか? ピテカン、YMO、セゾン文化……地下から生成し、地上へと派生していった80年代の「裏文化史」。伝説の講義に増補、「現在」を読み解く上で必携の決定版。》
赤川次郎『幽霊から愛をこめて』集英社文庫・1980年
《雪の夜、山水学園の女生徒が殺された! 現場は学校近くの林の中で、被害者は鋭い刃物でメッタ突きにされていた。犯行直前まで被害者といっしょにいた加藤昌美は、木立の中で白い幽霊の姿を見たとロ走るばかりだ。山水学園に転校してきた大宅令子は、たちまち親譲りの探偵本能を刺激された。彼女の父親は東京警視庁のベテラン警部なのだ。数日後、新宿のNデパートで第二の殺人が起こった!》
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