『断片以前』は山本敏幸(1946 - )の第3句集。阿部完市による選句の有無、つまり阿部完市死去の前と後で、句集は二部に別れる。
作者は「豈」同人。
空蝉の円周率は燃えているか
遠火事を背筋にするボレロかな
狐火の素顔は自転車である
温度のごとくあじさいおいしい
あんこうが十字架であるうすぐもり
白梅は完全犯罪である
すぐ隣が一番遠い秋の暮
蜥蜴鳴く十一枚のれんとげん
紐一本を曼荼羅と呼ぶ暑さかな
客人(まろうど)の消えたる席にある野菊
胡桃割る午前と午後の生まれけり
深夜放送に腰かけ蝶の標本
近松忌水の無限を組み上げる
風花の音階ギリシャ神話かな
一瞬にやっと近づく枯蓮
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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